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10 補助金に関する4つの最高裁判所判決から何が見えるか?

ホーム行政実務レポート 目次<10 補助金に関する4つの最高裁判所判決から何が見えるか?

名古屋デザイン博事件(平成16.7.13判決)
陣屋の村事件(平成17.10.28判決)
関釜フェリー事件(平成17.11.10判決)
支援金事件(平成22.2.23判決)

最初の3つの最高裁判所判決
  最高裁判所は、
 1 名古屋デザイン博事件(平成16.7.13判決)で、
 「市と1審被告協会との関係の実質等を確定せずに本件各契約の締結について裁量権の逸脱、濫用があったものと判断した原判決の判断には法令違反がある」として、原審(二審)の判決を破棄し、一部につき差し戻し、一部につき請求を棄却し(第1小法廷裁判官全員一致)、
 2 陣屋の村事件(平成17.10.28判決)で、
 「当該団体は町から委託を受けて管理運営に当っているのであるから、その運営によって生じた赤字を補填するために補助金を交付することは公益上の必要があるとした町の判断は一般的には不合理なものではなく、本件雇用によって赤字が増加したからといって、補助金の交付が特に不合理な措置ということはできない」として、補助金に係る支出を違法とした原判決を破棄し、請求を棄却し(第2小法廷の裁判官のうち1名滝井繁男判事が反対意見)、
 3 関釜フェリー事件(平成17.11.10判決)で、
 「市議会において特にその支出の当否が審議された上で可決されたこと、・・右補助金を支出したことにつき公益上の必要があると判断したことは、その裁量権を逸脱し、又は濫用したものと断ずべき程度に不合理なものということはできない」として、原判決を破棄差し、請求を棄却しました(第3小法廷の裁判官のうち1名才口千晴判事が反対意見)。

  これらから窺える最高裁判所の見解については、滝井繁男元最高裁判所判事(平成14年から平成18年まで最高裁判事であった)が、著書「最高裁判所は変わったか」(岩波書店平成21年年7月29日初版)114ページで、「補助金の交付が、一般規範や議会の議決に反したり、その動機に不正や歪みがあったり、比例原則・平等原則に明らかに反した過剰と言えるものでない限り、公益性がないとまで言うことはないというのが現時点の多数の見解のようである。」と書かれています。

  以上3つの判決とは少しニュアンスの違う次の判決
 4 支援金事件の最高裁判所平成22.2.23判決を紹介します。
 ア 事案
    A市には市営のと畜場がありましたが、これを廃止することになりました。このとき、A市はと畜場を
  利用していた畜産業者等に対し、「支援金」を支給しました。
    A市が、このような金銭の支給をするには、法的には「補償金」か「補助金」になるのですが、A市が
  支給した支援金は、一般会計補正予算に関する説明書では「補償、補填及ぶ賠償金」の節に計上さ
  れ、議会で議決されたものでした。
    そして、市長は、畜産業者等との間に支援金の支払いに関する契約を結んで、支援金を支払いまし
  た。この支援金が補助金として支払われる場合は、「A市費補助等取扱要綱」の手続に従わなければ
  ならなかったのですが、A市長は、その手続には従いませんでした。
    これに対し、A市の住民が、A市長が畜産業者等に対して支援金を支払ったことは違法な公金の支
  出であるとして、市に代位して、A市長に対し損害賠償の請求訴訟(地方自治法243条による住民訴
  訟)を起こしたのです。

 イ 判決
    一審は、住民の主張を認め、A市長に対し、約3億1000万円の支払いを命じました。
    二審は、本件支援金の支払いには合理性があり、公益上の必要性も認められるので、A市長の支
  援金の支給は違法ではないとして、一審判決を取消し、住民の請求を棄却しました。
    最高裁判所は、本件と畜場は、やむなく廃止されたのであり、そのことによる不利益は住民が等しく
  受忍すべきものであるから、畜産業者等が本件と畜場を利用し得なくなったという不利益は、損失補
  償を要する特別の犠牲には当たらない、と判示し、本件支援金が、「補償金」の意味なら違法だが、
  「補助金」の意味なら、その要件を満たしているかどうかについて十分な審理がなされていないので、
  原判決(二審の判決)を破棄し、二審に差し戻す、との判決を出しました。

 ウ 補償金と補助金の違いについて
(1) 補償金とは、憲法29条3項の「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることが
   できる。」という場合の補償金です。補償金の代表格が、土地収用法で土地を強制的に収用された者
   に支払われる補償金ですが、国有財産法19条、24条2項では、行政財産の借受人が、その行政財
   産を公共用等に供される関係で、その借受契約が解除されたときも、損失補償を請求できる、と定め
   ています。
    しかし、本件と畜場と畜産業者との間には契約関係はありません。と畜場は、誰でも、使用料さえ
   支払えば利用できる行政財産だったにすぎません。
    そこで、最高裁判所は、支援金が、補償金としての支払いなら違法だとしたのです。
(2)  補助金
    補助金とは、地方自治法232条の2で「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合におい
   ては、・・補助をすることができる。」と規定している補助金です。補助金を支給するには「公益上必
   要」であることと「合理的」であることが要件になっています。

 エ 一、二審も、支援金を補助金と考えていたようです。
    一審判決は、「公益性」なしとして住民を勝たせ、二審判決は「公益性」ありとして住民を敗訴させま
   した。もし支援金が「補償金」なら公益性は要件になりませんので、一、二審とも、支援金が補助金と
   して支給された面もあることに触れたのだと思われます。そこで、最高裁判決は、支援金は補償金と
   いうのなら違法だが、補助金だというのなら、その要件を満たしているかどうか、審理をやり直せ、と
   判示したのです。
     ところで、この最高裁判所の判決は、支援金が、補助金だとする場合、それが補助金として議会
   の予算の承認決議を得ていない点を、問題点として指摘しております。
     おそらく、市議会も、補償金として予算が建てられると、公益性を考えることなく承認し、補助金と
    して予算が建てられると、公益性や合理性を考え、予算審議がより慎重になると思われるからで
    す。(少し細かい話になりますが、地方自治法216条には「歳出にあっては、その目的に従ってこれ
    を款項に区分しなければならない。」と定め、220条2項では「歳出予算の経費の金額は、各款の間
    又は各項の間において相互にこれを流用することができない。」と規定していますが、その下の目
    節での流用について規定はありません。しかし、本件事案では、本件支援金が補償金の節に置か
    れたことによって、実質的には補助金としては議会の審議がなされていないと考えられますので、
    最高裁判所は、その点を特に注意したのだと思われます。)

 オ この事件が前記3事件と異なるところ
    それは、前記3事件の最高裁判所判決が、すべて、原審が、違法だとした補助金の支給を、違法と
  は言えないとして破棄したのに対し、この事件では、原審が違法ではないとしたものを、十分な審理を
  していないとして破棄している点です。
    これは、明らかに前記3事件とは違っており、これまでの(前記3事件に見られる)行政の「補助金支
  給」に甘い見解が、修正される兆しのように思えます。
  根拠
  @前記3事件には強い批判があったこと。特に、関釜フェリー事件は、補助金を受け取った第三セクタ
  ーの代表者が自治体の首長(市長)であること等から、市長が赤字を作ったものを市民の税金で穴埋
  めしているとの批判が強いこと。
    この最高裁判所判決で、少数意見(反対意見)を書いた才口千晴判事は、市長は、この件の「多額
  不毛の補助金」については納税者たる市民の負担増加に思いを致し、政治判断を優先させることな
  く、これを無益な補助金であるとして議会に提出せず、また予算執行を避けるための決断をすべきであ
  った、と指摘いるのです。
  A前記滝井元最高裁判所判事の著書の出版もありました。
    そのような批判の多い中の、平成22.2.23判決です。
    これらの批判も相当影響を受けたのではないかと思います。


  補助金はよくない。経営者が経営努力をしなくなるから。
  これは、岡山県の企業人が、全国各地の赤字経営の公共的な事業を、補助金を使わず見事立て直してきた実績を背景に、テレビ番組の中で語っていた言葉です。
  行財政改革の必要に迫られている自治体の首長に、補助金を支給するとき、特に、第三セクターの赤字の穴埋めに補助金を支給するとき、玩味していただきたい言葉です。

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