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18 時の裁量

ホーム行政実務レポート 目次<18 時の裁量

1 マンション建築反対運動の発生
マンション建築現場には大型車両の搬入が伴うことから、付近住民とマンション業者との間に紛争が生じ、これが昂じて、付近住民がマンション建築現場に大型車両が出入りすることを妨害する気勢を示すに至ることもあります。

2 道路法47条4項に基づく規制
ところで、マンション建築現場に入る車両には、道路法47条4項によって、「道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、」制限が課されていますが、その「制限に関する基準は、政令で定める」ことになっています。

3 車両制限令12条(特殊車両通行認定に関する規定)
それを受けて、車両制限令12条では、一定の要件を満たした車両は、道路法47条4項に基づく基準に適合しているものとみなすが、そうでない車両は、道路法47条4項の基準に適合しない、つまり、一定の要件を満たさない車両は、マンション建築現場への出入りを認めない旨の規定を置いているのです。この認定を「特殊車両通行認定」といいます。この認定には、裁量が入る余地は全くありません。

4 車両制限令12条に定められた「条件」
ところで、車両制限令12条で定めた特殊車両通行認定規定には、「ただし、道路管理者が運転経路又は運転時間の指定等道路の構造の保全又は交通の安全を図るため必要な条件を附したときは、当該条件に従つて通行する場合に限る。」という、ただし書きが置かれています。

5 最高裁昭和57.4.23判決事案
マンション建設業者は、車両制限令12条に基づき、特殊車両通行認定を申請しました。その車両は、特殊車両通行認定基準に適合する車両だったので、区長は、その認定を拒否できないものでした。しかし、区長は、「付近住民との話し合いが続くまで認定を留保する」旨の通知をし、特殊車両通行認定を留保しました。特殊車両通行認定がなされない間は、マンション業者は、その車両をマンション建築現場に入ることは出来ません。そこで、マンション建築業者は2度にわたって異議の申立をしましたが、区長は、認定留保を続け、結局、5ヶ月以上経って、特殊車両通行認定をしたのです。

6 この認定保留が、違法かどうかが問題になりました。
それは、区長のする特殊車両通行認定は、基準に適合するかどうかの認定であって、そこには区長の裁量が入る余地がないのに、実際の認定では、区長が裁量を働かせて、認定を遅らせたのですから、そのようなことがが許されるかどうかが問題になったのです。もし、区長の裁量(特殊車両通行認定を遅らせたこと)が、車両制限令に違反するのなら、区は、マンション建築業者に対し損害賠償をしなければならなくなります。

7 最高裁判決
最高裁判所は、区長には、特殊車両通行認定に条件をつけることができること、この件では、早期に特殊車両通行認定をすると、マンション建築に反対する附近住民と業者の間で実力による衝突が起こる危険があり、これを回避する必要があったと区長が判断したこと、留保期間は約5か月間に及んではいるが、結局、区長は当初予想された実力による衝突の危険は回避されたと判断して本件認定に及んだというのであるから、認定留保は、行政裁量の行使として許容される範囲内にとどまり、違法ではない、と判示しました。“時の裁量”を認めたのです。





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