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痴呆性老人と遺言の効力

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<高齢者問題と成年後見制度 【一般取引における高齢者を保護する法理論】



痴呆性老人と遺言の効力

1 痴呆の老人が作った遺言の効力が問題になるケースとはどのようなケースが考えられますか。 2 痴呆性の老人が書いた遺言でも有効ですか。 3 痴呆性老人に遺言を書いてもらう場合は、公正証書にすると有効と認められますか。 4 公正証書遺言が無効になったケースを教えてください。 5 痴呆性老人に遺言を書いてもらう場合、弁護士に依頼し、公正証書にすれば大丈夫ですか。 6 遺言者が存命中でも遺言無効の訴訟が起こせますか。
1 痴呆の老人が作った遺言の効力が問題になるケースとはどのようなケースが考えられますか。

  例1
 長男と同居していた80才近い母親が痴呆になったとき、突然長女が、母を引取り、母を公証人役場へ連れて行き、遺言を作らせましたが、長男は、母が長女に連れ去られるようにして家を出たこと、その際、母の住民登録も長女の住所に移転されたいたことから、長女が母を連れ去り、長女に有利な公正証書遺言を作らせたことが理解できましたので、母を奪い返し、住民登録をもとの長男の自宅に戻し、母を別の公証人役場に連れて行き、長男に全財産を相続させるという内容の公正証書遺言を作らせました。
 長女も、そのことを知り、再び母を奪い取り、再び、母に財産はすべて長女に相続させるという内容の遺言を作らせました。
 すると、長男は、またしても母を奪い返し、母に遺言を作らせました。これに対抗して、長女は、またしても、母を奪い取り、公証人役場へ連れて行きましたが、公証人役場では、短期間の内に、二度も同じ内容の公正証書遺言を作っているのに、長女が母を連れてきてさらに同じ内容の遺言を作ろうとしていること、母が痴呆になっていて前のことを覚えていないことを知り、三度目は公正証書遺言の作成を拒否しました。
 このように母の身柄の奪い合いをして、奪い取った方が、痴呆にかかっている母に、自分に全財産を相続させるという内容の遺言を作成させた事例があります。
 例2
 実子のいない80代の女性が、痴呆になる前に、最も信頼できる姪に全財産を相続させるという内容の遺言書を作っていましたが、痴呆にかかり始めた頃以降、物忘れがひどくなっていったのを理解できず、置いたはずの場所に物がないという状態が続くのを、姪が盗んだためであると疑うようになり、遺言を書き直し、財産は、疎遠にしている別の相続人に相続させるという内容の遺言に書き替え、姪へは何も与えないことにした事例があります。
  例3
 80歳代の痴呆性の、かつ放浪癖のある老人が、家族に大事にされていないと思っていたところへ、世話をしてやるので、結婚し籍を入れてくれ、と要求してきた女性と婚姻届をし、また、全財産は妻に相続させるという内容の遺言を作らされた事例があります。




2 痴呆性の老人が書いた遺言でも有効ですか。

 遺言能力があれば有効ですが、それが認められないと無効とされます。
 ただ、成年被後見人については、民法第973条で、事理を弁識する能力を一時回復した時において、医師二人以上の立会いの上、医師が、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかつた旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない有効にはなりません。



3 痴呆性老人に遺言を書いてもらう場合は、公正証書にすると有効と認められますか。

 公正証書遺言だから有効になるものではありません。
 裁判では、自筆の遺言書の有効、無効が争われるケースより、公正証書遺言の有効、無効が争われるケースの方が多い状態です。



4 公正証書遺言が無効になったケースを教えてください。

 平成4年6月19日東京地裁判決や平成5年5月25日東京地裁判決は、遺言者が遺言公正証書作成当時、アルツハイマー型老年痴呆により記憶障害及び理解力、判断力が著しく低下した状態にあったり、遺言当時老人特有の痴呆状態にあり、遺言行為の重大な結果を弁識するに足る精神能力を有しておらず、意思能力を欠いていたとの理由で、公正証書による遺言を無効とした事例です。
 その他、平成5年6月29日名古屋高裁判決、平成6年2月28日東京地裁判決等もあります。
 平成9年10月24日東京地裁判決は、遺言をした当時94歳であった高齢者の事案ですが、遺言作成までに、CT検査により脳血管障害の他覚的所見が認められていたこと、周囲の者の言動に迎合しその意見に従って自分の財産の管理に関する意思表示を次々と変更していたこと、主治医の診断で明らかな痴呆が認められていたこと、遺言当時自分の置かれている状況の判断がつかずなかったこと(ただ、日常会話や文字を書くことは可能であった模様)等を理由に、その高齢者は、遺言作成の時点において、周囲の者の指示に従って文字を書く能力は有していたが、自らの行為の意味と結果を認識し、自らの意思によっていかなる行為をすべきであるのかの判断をする能力を失っていたものと認められるとして、遺言は無効であるとされたケースです。
5 痴呆性老人に遺言を書いてもらう場合、弁護士に依頼し、公正証書にすれば大丈夫ですか。

 かならずしも大丈夫とは言えません。
 平成9年10月24日東京地裁判決の事案は、公証人が弁護士から依頼を受けて、入院中の遺言者の遺言を作って事案ですが、公証人は、弁護士と面談し、あらかじめ遺言文案を作成した上で、弁護士とともに病院に赴き、遺言者に会い公正証書遺言を作成したのですが、それより前に遺言者に面会してその意思を確認したことはなかったこと、遺言を作る際も、公証人が遺言者の病室に入室してから退室するまでの時間は15分程度であったことなどから、公証人は、遺言者の意思能力の有無について十分に意を用いて確認した上で本件遺言書を作成したものとは認め難いとされ、公証人が弁護士とともに遺言者に会い、公正証書遺言を作ったからと言って有効になるものではないとしております。
6 遺言者が存命中でも遺言無効の訴訟が起こせますか。
 私の父は85才で痴呆になっておりますが、弟が父の住民票を自分の自宅に変えて父を連れ出し、公正証書遺言を作らせてしまいました。
 私はあわてて父にこの公正証書遺言を取り消す遺言を書かそうと考え、公証人役場へ連れて行きましたが、そこの公証人は、父の痴呆がひどく遺言能力がないので遺言は出来ないと言って断られました。
 そこで、父が弟によって作らされた公正証書遺言が無効であることの確認を求める訴訟を起こしたいのですが、できますか。


 平成7年3月17日の大阪高裁判決は、遺言の無効確認を求める訴えは遺言者の生存中は原則として不適法だが、遺言者がアルツハイマー型老人性痴呆に罹っており回復の見込みがないなど、遺言者が遺言を取消し、変更する可能性がないことが明白な場合には、その生存中であっても例外的に遺言の無効確認を求めることができる、としておりますので、可能です。



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