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独占禁止法

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<独占禁止法



1 紹介判例を読む前に知っておきたい独占禁止法の仕組み
一 独禁法の目的、対象になる者と対象になる行為、独禁法運用の傾向
1,独禁法とは
 独禁法とは、自由で公正な競争社会を実現し、消費者の保護等のため、「不当な取引制限(カルテル)」、「私的独占」「不公正な取引方法」の3本柱を禁止し、これに違反する事業者や事業者団体に対し、刑罰、行政処分(排除措置・課徴金)を課し、被害者からの差し止め請求や損害賠償の請求を認める法律です。

2,規制の対象となる事業者とは、対価を得る事業を継続してしているもので、営利を目的としないものも含みます。中小企業も対象になります。

3,独禁法は平成18年1月から施行されている改正法で、違反者に厳しくなり、公取委の権限が強化されました。
  例えば、
(1) 課徴金率が引上げられました。
(2) 一種の司法取引ともいうべき、リニエンシー制度を導入しました。
 リニアンシー制度というのは、自発的にカルテルから抜け出て公取委に一切を申告した事業者は、
 課徴金の全部または一部が免除される制度です。
(3) 犯則調査手続が導入されました。これは刑事告発を目的として行われる行政調手続のことです。裁
 判官の令状をもって捜索・差押えが可能になったのです。
(4) 独禁法違反行為に対しては、勧告制度が廃止され、排除措置命令が出しやすくなりました。
 要は、独禁法違反企業にはたいへん厳しい時代になったということです。

二 独禁法違反行為
1,不当な取引制限
 カルテルのことです。価格カルテルや談合のことです。
 カルテルとは、2つ以上の競争事業者間で「競争しないことを約束すること」で、約束の当事者全員を拘束します。この外形に「一定の取引分野で競争を実質的に制限する」という市場支配力要件があれば、カルテルは成立します。
 市場支配力とは、寡占市場では10%、非寡占市場では25%以上のシェアを持っている事業者をいいます。

2,私的独占
 例えば、大手航空会社が、新規参入の航空会社が市場に参入しようとした場合に、新規参入者が参入しようとしている路線や時間帯だけ、新規参入事業者よりも安い運賃で運行する等をし、新規参入事業者を市場から排除する行為をいいます。この場合もカルテルと同様、この外形に「一定の取引分野で競争を実質的に制限する」という市場支配力要件が必要です。
 要は、私的独占とは、市場支配力のある事業者が単独で、市場を支配することを言います。
 市場というのはかなり相対的な概念で、胃腸薬の家庭配置薬を製造販売している会社が、新規参入会社の参入を妨害した事案で、妨害した会社の家庭配置薬市場におけるシェアは30%だが、薬局で買える一般胃腸薬の市場まで含めた市場では、わずかのシェアだから市場支配力要件を欠いているとして、独禁法違反にはならないとした判決があります。

3,不公正な取引方法
 公取委が一般指定として以下の16項目を指定しています。
 「行為の外形」と「公正競争阻害性」の2つの要件を満たすときに、不公正な取引方法が成立します。
 ただし、8のように外形だけで即違法になるものもあります。
  • 1  共同の取引拒絶
  • 2  その他の取引拒絶
  • 3  差別対価
  • 4  取引条件等の差別取扱い
  • 5  事業者団体における差別取扱い等
  • 6  不当廉売
  • 7  不当高価購入
  • 8  ぎまん的顧客誘引
  • 9  不当な利益による顧客誘引
  • 10 抱き合わせ販売等
  • 11 排他条件付取引
  • 12 再販売価格の拘束
  • 13 拘束条件付取引
  • 14 優越的地位の濫用
  • 15 競争者に対する取引妨害
  • 16 競争会社に対する内部干渉
4,独禁法に違反した企業に対する制裁には
(1) 行政処分ー排除措置と課徴金(課徴金はカルテルと私的独占の一部のみ)
(2) 刑事処分(不公正な取引方法には刑事処分はありません。)
(3) 被害者からの違反行為の差止めと損害賠償の請求
があります。

5,独禁法を知る方法
 公取委のガイドラインhttp://www.jftc.go.jp/dk/lawindex.htmlが便利です。
 それに、順次、判例を紹介しますので、ご参照下さい。

2 エレベーター保守会社のした「抱合わせ販売」と「競争者に対する取引妨害」

大阪高等裁判所平成5年7月30日判決


  • a事件
    エレベータメーカー系の保守業者が、ユーザーに対して、取替調整工事を併せて発注しなければ補修部品だけを単体で売ることはしないとした取引方法は「抱合わせ販売等」に該当し、独禁法に違反する。
  • b事件
    エレベータメーカー系の保守業者が、ユーザーが自社と保守契約をしていないことを理由に、部品の注文に対し3ヶ月先の納期を指定した行為は、「競争者に対する取引妨害」に該当し、独禁法に違反する。
                     
事案概要
  • a事件
    T社製のエレベーターを設置したビル保有会社であるX社は、独立系保守業者A社と保守点検契約を結んだ。その後エレベーターが部品の交換を必要とする故障を起こしたが、部品はT社の全額出資子会社であるY社が事実上一手に独占販売していた。そこで、X社がY社に対し部品の注文をした。しかし、Y社は、部品の販売のみはせず、部品の取替え、修理、調整工事を併せて発注しなければ注文には応じないと回答した。
  • b事件
      a事件と同じY社が被告の事件である。この事件は自社と保守点検契約を結んでいないユーザーに対し、部品の納期を3ヶ月先と定めて部品の注文に応ずると回答したため、ユーザーは、別ルートでY社に部品を注文しY社からすぐに部品を供給してもらった。この結果を見たユーザーは、Y社と契約を結ばなければ今後エレベーターの故障の際迅速な補修はできないと考え、すでに保守点検契約を結んでいた独立系の保守業者との契約を解除してY社と保守契約を結んだという事案である。
解説
 独占禁止法19条は、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」と定める。これを受けて公正取引委員会は、昭和57年に告示として、「不公正な取引方法」を例示した。この告示は、告示でありながら法源になっている。
 a事件は、「不公正な取引方法の一般指定10項「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。」すなわち「抱合わせ販売」に該当するとされたものである。
 「不当に」とは、最判によれば、公正な取引を阻害する性格(公正競争阻害性)を有することである。
 公正競争阻害性とは、@自由な競争の確保、A競争手段の公正さの確保、B自由競争基盤の確保のいずれかを侵害することである、とされている。
 a事件では、T社製のエレベーターの交換部品が問題になっている。T社製のエレベーターの部品はY社が事実上一手に独占販売していたのであるから、ユーザーは、部品をY社から買わざるを得ない。Y社の地位は独占的な地位にある。
 抱合わせ販売が成立するのに、供給者の独占的地位は要件になっていないが、公正競争阻害性判断の重要なファクターになる。
 a事件は、部品の販売という取引の注文に対し、それとは独立した取引が可能な、部品取替調整工事とを「抱合わせ」で販売するというものであり、これが許されると、@抱合わされる商品・取引に関し他の供給者・取引業者が排除される、A需要者による商品・取引選択の自由が歪められる点で、公正競争阻害性があるとされたのである。

 b事件は、一般指定15項「自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。」すなわち「競争者に対する取引妨害」に該当するとされた事案である。
 なお、この事件は取替調整工事を発注しなければ交換部品の供給を拒絶するという取引方法に関する事案であるが、交換部品の供給拒絶だけでなく、取替調整工事を発注した者にだけ大幅な値下げをして部品を販売したり、部品を無料で供給する等の取引などもまた独禁法違反になる可能性がある。

3 追随的値上げも「他の事業者と共同して」に該当し、「不当な取引制限」になるとされた事例

大阪高等裁判所平成5年7月30日判決


(1) 事案
 合成樹脂製品の価格競争が激しい時期、合成樹脂メーカー8社が、業界団体の会合で、下落防止や引上げの必要性について協議を重ねていたが、臨時部会を開いて、その席上まず大手の3社(3社でシェア70%)が15%の値上げを決めると同時に同業5社に対し追随的値上げの要請をした。同部会では同業の5社はこれに賛成も反対もしなかったが、その直後から、8社すべて(8社合計でシェア100%)が値上げを表明した。
 公取委はこれが「不当な取引制限」に該当し独禁法に違反するとして、排除措置を命ずる旨の審決を下した。
 これに対しA社が不服だとして東京高裁に審決取消の行政訴訟を提起した事案で、東京高等裁判所平成7年9月25日判決は、A社の行為は「不当な取引制限」に該当するとして、請求を棄却した。

(2) 「不当な取引制限」
 独禁法2条6項は、「この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」
と定めている。要は、「不当な取引制限」とは、談合やカルテルのことを意味する。
 法は、不当な取引制限を「他の事業者と共同して」行う行為を独禁法違反行為としたのである。

(3) 「他の事業者と共同して」の解釈
 この判例は、「他の事業者と共同して」の解釈として、複数事業者が対価を引き上げるに当たって、相互の間に「意思の連絡」があったと認められることが必 要であるが、ここにいう「意思の連絡」とは、相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足り、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でないと一般論を述べ、本件については、特定の事業者が、他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出た場合には、右行動が他の事業者の行動と無関係に、独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これらの事業者の間に、共同行為を成立させる「意思の連絡」があるものと推認される、として、A社の追随的値上げ行為を独禁法違反としたのである。

(4) この事件の特徴
 この件は、追随的値上げが「不当な取引制限」になるとされたが、追随的値上げが常に「不当な取引制限」になるわけではない。この件では、8社合計でほぼ100%の市場シェアを有していること、一つの部会の中で大手3社が値上げを決めた際A社を含む5社にも追随的値上げの要請があったこと、その直後A社も大手3社と同じ15%の値上げを決めたことがあったので、8社すべてに共同行為を成立させる「意思の連絡」があるものと推認されたものである。

(5) 同じ轍を踏まないための企業法務
  • @ 団体会合で、価格や数量が話題になったとき、直ちに退席する。
  • A 値上げ等に反対を表明する。
  • B 価格の値上げや生産調整をする場合は、自社独自の判断でしたことを示す資料を整備しておくこと。

4 FC(フランチャイズ)契約における競業禁止契約と独禁法
(1) 事案
 個人Aは、コンビニエンスストアのフランチャイザーであるB社との間で、FC契約を結び、@Aは競業他社の経営に関与したり業務提携をしない。AもしAが競業他社と業務提携などをした場合は、B社はAに対し1営業店のロイヤリティの120ヶ月分に相当する損害賠償の請求をすることができる旨の約束をし、2店舗のコンビニを経営していたが、その後、A個人ではなく、Aが取締役をし、その中心的な立場として経営に関与している同族会社A社が、同業他社とFC契約を結んで5店舗を経営するようになった。そこで、B社社はAとのFC契約を解除し、1店舗平均のロイヤリティの120ヶ月分に相当する6720万円の損害賠償の請求訴訟を提起した。
 これに対し、Aは、B社とのFC契約の競業禁止規定はAの事業活動を過剰に制限し、「不公正な取引方法」の一般指定11項の「排他条件付取引」に該当し、公序良俗に反するので無効であると主張して争った。

(2) 判決
 東京高等裁判所平成8年3月28日判決は、コンビニエンスストアのフランチャイズ契約におけるフランチャイザー(本部)が、フランチャイジー(加盟店)に対し、フランチャイザーの事業と競業する他社の経営に関与・業務提携・フランチャイズ関係を結ぶことを禁止した約定は、@フランチャイザーがフランチャイジーに提供する経営にかかわる情報の秘密を保護する必要性が重大であること、Aフランチャイジーが他のフランチャイザーと取引する必要性が乏しいことを理由に、「不公正な取引方法」に当たらないと判示した。
 しかしながら、B社がしていた損害賠償の請求については、約定による損害賠償の予定額が社会的に相当と認められる額を超えて著しく高額となって、損害賠償額の予定の趣旨を逸脱し、著しく不公正であるような場合には、社会的に相当と認められる額を超える部分は公序良俗に反するものとして無効というべきであるとの一般論を述べ、本件については、30か月分のロイヤリティ相当額を超える部分を無効とした。

(3) フランチャイズ契約
 フランチャイズ契約とは、一方が自己の商号・商標などの使用権、営業上のノウハウ、自己の開発した商品やサービス(これらを総称してフランチャイズパッケージと呼ぶ。)を提供して相手方に自己と同一のイメージ(ブランド)で営業を行わせ、相手方が対価(ロイヤルティー)を支払うことを約束する契約をいう。通常、権利や商標、ノウハウなどを提供する側をフランチャイザー(本部)と呼び、その提供を受ける側をフランチャイジー(加盟者・加盟店)と呼んでいる。コンビニエンスストアなどの小売業や、ラーメンやファストフードなどの外食産業に多く見られる。

(4) 競業禁止契約と「排他条件付取引」
 公取委の一般指定11項は
「不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。」
を「不公正な取引方法」と定めているが、フランチャイズ契約における競業禁止契約はこれに該当しないとされたのである。

(5) 企業法務を考えるにあたって
 フランチャイズ契約では、一般には、競業禁止契約は有効とされているが、フランチャイザーが事業展開をしていない地域においてもフランチャイジーが同業他社のフランチャイザーとフランチャイズ契約を結んだ場合など問題が生ずる可能性がある。
 フランチャイザーが、そのような地域でも競業禁止を約束させたい場合は、近い将来その地域へも事業展開の予定がある等の合理的理由が求められるであろう。また、フランチャイズ契約終了後まで競業を禁止する契約の場合は、「不公正な取引方法」とされる可能性が大きいと思われる。

5 事業者団体による間接共同取引拒絶による不法行為責任と損害額・謝罪広告

東京地方裁判所平成9年4月9日判決


(1) 事案
 エアーソフトガンの製造販売業者A社が、同業者多数が加入しているB協同組合に加入しせず、また、問屋を通さないで、エアガンとBB弾を直接小売店に販売していたところ、B組合は問屋団体にA社からエアガンとBB弾を買わないように、また、取引先の小売店にも仕入・販売を中止することを指導するよう、要請した。
 この結果A社は取引先小売店との取引が停止され損害を蒙った。
 そこでA社は、公正取引委員会に対し、B組合の行為は独禁法8条1項1号(一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。)および5号(事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること)に該当するとして、独禁法45条1項(何人も、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる。)の措置請求をした。
 その後B組合は、A社製品の取扱中止要請を撤回したが、その間にA社は損害を蒙った。そこで、A社はB組合やその役員、問屋団体の役員に対し損害賠償の請求をした。

(2) 判決(東京地方裁判所平成9年4月9日判決)
@ B組合の独禁法違反認定
B組合が非組合員A社の製造する製品を取り扱わないように全国の問屋及び小売店に要請した行為は、独占禁止法8条1項1号及び5号に該当し、他の事業者が自由に市場に参入することを著しく困難としたから、事業者団体の禁止行為である不当な競争制限となる、と認定
A B組合の不法行為を認定
B組合の独禁法違反行為が特定の事業者の自由な競争市場で製品を販売しうる利益を侵害するものである場合には、特段の事情がない限り、私法上も違法なものというべきである、としてB組合の不法行為責任を認定
B B組合の代表理事の不法行為も認定
B組合の代表理事が全国の問屋等に対し非組合員A社の製造する製品の取扱いを中止するよう要請した行為は、不当な競争制限行為であり、これがA社の自由な競争市場において製品を販売することのできる利益を侵害するものであることは明らかであるから代表理事も不法行為が成立する、と認定
C 問屋団体の代表者の不法行為は否定
B組合がA社の製品の仕入れ及び販売を中止し、これを小売商に指導するよう問屋団体に要求する文書を発し、その要請を受けた問屋団体の代表者が、取引先にA社との取引中止要請文書を配布したことについては、共同不法行為責任を負うことはない、と認定
D 損害額
A社の売上減少額に粗利益50%を乗じた金額を損害と認定
E 謝罪広告の掲載は否定
B組合が、この会社の製品の仕入れ及び販売を中止し、これを小売店に指導するよう問屋団体に要請する文書を発するなどしてA社の社会的評価を低下させたが、B組合は既に撤回文書を配布などしているので謝罪広告の掲載が認めない、と判示
(3) 企業法務から
 この判決は、独禁法違反行為が不法行為になり、それによって損害を受けた者に対し損害賠償をしなけらばならないことを明らかにしたが、その損害の認定について詳細な分析がなされている。損害を考える場合の参考になる判例である。

6 化粧品のカウンセリング(対面)販売の義務づけは独禁法違反にならない、とされた事例

最高裁判所第平成10年12月18日判決


(1) 事案
 花王化粧品販売という化粧品卸売業者が、小売業者A社との間に特約店契約を結んで、A社に対し、@カウンセリング販売(顧客との対面販売)と、A同卸売業者の代理店でない小売業者への卸売販売(横流し)を禁止すること、を義務づけていたが、A社がこれに違反したので、特約店契約を解除した。これに対しA社は、@Aの条項は「拘束条件付取引」(一般指定13項)ないし「再販売価格の拘束」(一般指定12項)に当たり、独禁法19条に違反し、公序良俗に反し無効であるから、その違反を理由とする解除は無効であるとして、契約上の地位確認と化粧品の引渡を求めて訴訟を提起した。

(2) 判決
 判決は、卸売業者には、販売政策や販売方法について選択の自由がある。選択した販売政策や方法が@合理的な理由に基づくものであり、A他の取引先小売業者にも同等の条件が課せられている場合は、独禁法上の問題は生じない。本件では、花王化粧品販売は、@化粧品に対する顧客の信頼(ブランドイメージ)を保持するためにカウンセリング販売を採用したのであるから、A社にカウンセリング販売を義務づけたこと、および、A社がカウンセリング販売の義務を負わない小売業者への卸売販売(横流し)をすることを禁止したことには合理的な理由がある。そしてA他の取引先小売業者にも同等の条件が課せられているので、独禁法に違反しない、と判示した。

(3) 独禁法の問題点
 「拘束条件付取引」一般指定13項「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」
 「再販売価格の拘束」一般指定12項「自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件をつけて、当該商品を供給すること。一 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。二 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。」

(4) 企業法務
 この判決は、対面販売を義務づけることを上記@Aの条件の下で独禁法に違反しないと判示したものであるが、基準は明確である。
 同じような商取引は、化粧品以外にも、種々の商品でも見られると思われる。応用範囲の広い判決である。

7 カルテルにより消費者が損害を蒙った場合の損害の算定方法と立証責任

最高裁判所平成1年12月8日鶴岡灯油訴訟事件


(1) 事案
 石油製品の元売業者が灯油の値上げ協定(カルテル)を結んで実施したので、公正取引委員会から独禁法に違反するとして勧告審決がなされた。そこで、灯油の消費者多数が、石油元売業者らが行なった価格協定により損害を被ったとして、価格協定後に購入した灯油の金額と、価格協定直前の灯油の価格の差額を損害として、民法709条による損害賠償を求めた事案である。

(2) 判決
 消費者は、独禁法違反の行為により損害を被った場合は、当該行為が民法上の不法行為に該当する限り、損害賠償の請求をすることができるが、その損害とは、価格協定によって購入せざるを得なかった金額と、価格協定がなかったとすれば購入できた金額の差額である(差額説)としたが、それを認定するには、@価格協定の実施と購入価格上昇の間の因果関係の存在、及びA当該価格協定の実施がなければ、現実購入価格よりも安い想定購入価格が形成されていたといえることの立証が必要であり、その主張・立証責任は消費者にあるが、価格協定の実施当時から消費者の購入時点までに灯油の小売価格の形成の前提となる経済条件、市場構造等に変動があったと認められる本件では、直前価格をもって想定購入価格とすることはできず、Aの要件は立証されていないなどとして、消費者の損害賠償請求を認めなかった。

(3) 損害の発生は認定できるが、損害額の認定が出来ない場合の措置
  −民事訴訟法第248条の存在
 損害は、価格協定により高く買わされた金額と、価格協定がなければ購入できた想定価格の差額であるというのは、分かりやすい考えであるが、価格協定後の価格は現実に消費者が購入した価格であるから明白であるものの、価格協定がなければいくらで購入できたかは、必ずしも明白とは言い難い。原告である消費者は、価格協定の直前価格ををもって想定価格と主張したが、石油価格が高騰している時期であったことにより、価格協定がなかったとした場合に直前価格で購入できたとは言えないことから、この主張は採用されなかった。その結果、消費者は損害額の立証が出来ていないとして請求が棄却さらたのであるが、カルテルによる消費者の損害は認定したが、損害額について証拠がないことを理由に、消費者の損害賠償請求を認めなかったが、民事訴訟法第248条は「損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。」と定めているので、本件では、裁判所が、民事訴訟法第248条により積極的に損害額を認定することはできたのではないか、との批判がある。

(4) 談合事件では、民事訴訟法第248条により損害額の認定がなされている。
 名古屋地方裁判所平成13年9月7日判決は、 談合行為によって発生する損害とは,談合行為がなければ指名業者間の公正な競争を経て入札された場合に形 成されたであろう契約金額(又は想定落札価格)と現実の契約金額(又は落札価格)との差額相当額であると解するのが相当である。・・・市に損害が発生していること自体は認められるところ,指名競争入札における落札価格を形成する要因は多種多様であって,影響力についても公式化することができないことにかんがみると,入札談合の事例における損害は,その性質上,金額算定が極めて困難というべきであるから,本件では,民事訴訟法248条を適用して市が被った損害額を認定するのが相当である。・・・本件の談合行為により市の被った損害額は,A工事については契約金額の5パーセント(4568万0500円),そのような事情のないB工事については契約金額の8パーセント(1124万7600円)であると認めるのが相当である、と判示した。また、広島高等裁判所松江支部平成13年10月12日判決は、請負代金額の5%に相当する754万4750円を損害と認定した。

8 医師会が開業医に事業上の制限をする行為は独禁法に違反する、との判例

東京高裁平成13年2月16日判決


 判決は、医師会が、開業医に対し、医療機関の開設、診療科目の追加、病床の増設や増改築、老人保健施設の開設を希望する場合は、県知事に対する許可申請または届出をする前に、あらかじめ医師会に希望を申し出させ、医師会の同意の決定を受けなければ、許可申請または届出をしてはならない、と定めていることは、独禁法に違反すると判示しました。

  コメント
  医師会は強制団体ではありません。つまり、開業医が入会を義務づけられているわけではありません。しかし、開業医が開業しようとすれば、医師会に入会しないと開業することが事実上困難だという状況があります。そのような中で、医師会が、会員医師の利益を守るため、上記のルールを作り、開業医に対し、利害調整や合理性のない制約をすることは競争制限行為に該当するとの理由で、公取委がした排除措置命令の審決の取消訴訟事件での判決です。
  独禁法は、事業者および事業団体を適用対象としており、本件は、医師会という事業者団体が、開業医という事業者に対し、独禁法8条の「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。」「一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。」等に該当するとされたのです。
  独禁法2条1項は「事業者とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。」と規定していますが、開業医は「その他の事業を行う者」とされたのです。事業者性のメルクマールは、「役務の質と価格をめぐる競争がある」ことです。裁判の用語は難解ですが、最判H1.12.14によれば「なんらかの経済的利益の供給に対応し反対給付を反復継続して受ける経済活動」であれば良い、というもので、営利性は要求されていません。
開業医以外に、弁護士や建築士なども事業者です。
  公取委は、建築士の団体による報酬基準などの設定に対して、独禁法8条1項4号「事業者団体による、その事業者団体の構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること」を適用した審決をしています。弁護士の強制加入団体である弁護士会は、報酬基準の設定を廃止しています。

9 談合は、「一定の取引分野」における競争を実質的に制限する「不当な取引制限」との判例

東京高等裁判所平成5年12月14日判決


 事案
  社会保険庁発注が支払通知書等貼付用シールの売買契約を結ぶため指名競争入札を実施したところ、入札参加業者4社が談合してその中の1社が落札受注しましたが、この判決は、本件入札談合は「不当な取引制限」に該当する、と判示したのです。理由は、「不当な取引制限」(カルテル)とは、独禁法2条6項で、事業者が、・・・他の事業者と共同して対価を決定、・・する等・・・により、・・・一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう、と規定されているが、ここでいう、「一定の取引分野」は、・・・違反者のした共同行為が・・・競争が実質的に制限される範囲で・・決定すべきであり、社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの入札談合については、その間の受注・販売に関する取引を「一定の取引分野」として把握すべきであるとして、社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの受注・販売に関する4社の談合行為を独禁法違反とし、談合に参加した業者4社にそれぞれ罰金400万円の刑に処しました。

  コメント
  不当な取引制限とは、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいうのですが、公共団体が発注した仕事に関しては、その取引が「一定の取引分野」ということですから、要は、談合は常に独禁法違反になるということです。

10 LPガスの小売販売価格が、「差別対価」にあたらないとされた事例

東京地裁平成16年3月31日判決


 (1)事案
  静岡県で10立米5700〜6200円の価格帯で、また東京を中心に1都3県で6000円前後でLPガスを販売しているA社が、B社のエリアで4300円の価格で販売し始めたため、B社が、4300円は独禁法に違反する(不公正な取引方法一般指定3項「差別対価」)として、A社の販売等の差し止めを請求した事案です。

  (2)判決
  A社は、一般家庭向けLPガスを、同じ時期に、相手方によって価格に差を設けて販売しているということができるが、その公正競争阻害性については価格の硬直化等を招かないよう慎重に認定を行う必要がある。本件価格差は、市場の競争の状況の違い及び供給コストの差を反映するものと推認することができるので、A社の価格設定行為には公正競争阻害性を認めることができないとして、B社の請求を棄却しました。

  コメント
  この事案は、価格に差を設けていましたが、原価割れを起こしていなかったことが良かったようでした。

11 都市ガス業者による工事費用の値引きが「不当廉売」にあたらないとされた事案

鹿児島地判平成8年4月25日


(1)事案
 プロパンガス会社が都市ガス会社に対し、都市ガス会社が顧客に対し工事代を値引きして顧客勧誘を行ったのは不当廉売に該当する違法な行為だと主張して損害賠償請求をした事案

(2)判決
 「工事代の値引きに関して検討すると、一般に、原告主張の不当対価(差別対価、不当廉売。独占禁止法二条九項二号。)、顧客の不当誘引(同法二条九項三号)にあたるかどうかについては、その意図・目的、規模、周囲の状況などを総合して公正な競争秩序にどのような影響を与えるかを実質的に判断し、不当性を判断すべきところ、本件においては、前記のとおり、工事費用の値引きはプロパンガス事業者間の熾烈な競争により、原告を含むプロパンガス事業者において日常的に行われていたこと、ガス料金そのものの値引きではないこと、被告が工事費用を値引きするようになった原因が原告らプロパンガス事業者における工事費用の値引きなどにあったことからするならば、被告の工事費用の値引きは、原告らプロパンガス事業者らとの間の公正な競争秩序を阻害するようなものではないと解するのが相当であり、不当対価(差別対価、不当廉売)には該当しないというべきである。」

 コメント
 この判決は,不当廉売の判断基準を,「意図・目的、規模、周囲の状況などを総合して公正な競争秩序にどのような影響を与えるかを実質的に判断」と定め,その上で本件については,@工事費用の値引きはプロパンガス事業者間の熾烈な競争により、原告を含むプロパンガス事業者において日常的に行われていたこと、Aガス料金そのものの値引きではないこと、B被告が工事費用を値引きするようになった原因が原告らプロパンガス事業者における工事費用の値引きなどにあったことという事情から不当廉売にあたらないという判断をしました。
  本件では,上記B相手方が先に値引きを行っていたことがポイントになっているように思われます。
(弁護士 森 智幸)
独占禁止法
【Q&A】 1 ファッションビルで、全店共通のポイントカードを発行して、顧客にポイントサービスを受けうるようにし、それにかかる経費や負担分を、全店舗のテナントに負わさせる契約は、独禁法に触れるか?

 運用によっては,「優越的地位の濫用」(優越的地位にある業者が,取引先に対して不当に不利益を与える行為)として独占禁止法第19条(「不公正な取引方法の禁止」)及び一般指定(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)14項(「優越的地位の濫用」)にあたる恐れがあるので,注意を要する。
 ポイント原資のテナント側負担という仕組み自体は通常,行われていること。裁判例において特に独占禁止法違反であると判断されたものはない模様。
 ただし,電子商取引において,公正取引委員会事務総局作成の「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」(平成18年12月)は,運営事業者が,出店事業者(テナント)のポイント制度への参加を義務付け,消費者が実際にポイントを使用したか否かにかかわらず当該一定割合の金額分をポイントの原資として出店事業者の負担とすることについて,「実際には使用されず失効したポイント分の原資まで出店事業者に負担を課すこととなる」ので,「出店事業者に対する取引上の立場が優越している運営事業者が,このような電子商店街におけるポイント制度の運用により,出店事業者に不当に不利益を課す場合には,不公正な取引方法(優越的地位の濫用)として独占禁止法上の問題につながるおそれがある。」と指摘しているので、参考にするとよい。
 失効したポイントを運営側が収入にしてしまうという問題自体は,電子商取引だけでなく,今回の場合も含め,取引一般に当てはまる問題と思われる。
 一般指定は,「優越的地位の濫用」にあたる場合について定義しているが,失効して運営側が収入としたポイントの原資をテナントに負担させることは,優越的地位の濫用のうち,「継続して取引する相手方に対し,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。」(14項2号)にあたると思われる。
 ただ,上記の報告書は,あくまで,運用において,失効し,運営側が得たポイント分の原資まで出店事業者に負担を課すことが問題であることを指摘しているのであり,ポイント制やポイント原資負担自体は問題にしていないものと思われる。
 ポイントが失効した場合,雑収入などとして運営側が利益を得るのではなく,失効ポイント分はテナント側に(売上げに応じた配分等で)還元する仕組みを作り,テナントが負担したポイント原資が,運営側のためには使われず,テナントの利益のためにのみ使われるようにすれば問題はない。そうすれば,ポイント制を義務づけ,原資をテナントに負担させても,独占禁止法違反にはならないものと思われる。
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