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夫婦 婚姻費用

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<夫婦 婚姻費用


婚姻費用とは何ですか

 生活費のことです。
 硬い表現になりますが、婚姻費用とは、夫婦の共同生活において、財産、収入、社会的地位等にふさわしい通常の生活を維持するために必要な生計費をいう、とされています。衣食住の費用、医療費、子供の養育費、教育費、相応の娯楽費、葬祭費、交際費等がこれです。
 夫婦が離婚の前段階として別居した場合の生活費も、婚姻費用に含まれ、別居時における婚姻費用の支払がしばしば争いの対象になります。具体的には次のようなものが問題になります。

2 婚姻費用分担請求権とはどのような権利か
 民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めていますが、ここでいう婚姻から生ずる費用の分担を請求する権利、これが婚姻費用分担請求権です。
 そして、婚姻から生ずる費用というのは、夫婦とその子が通常の家族的な共同生活を営むに要する費用であって夫婦の生活費だけでなく、子の生活費も含むものです。
 子は、未成年者と未成熟子の区別をしていない判例もありますが、概して未成熟子とする判例が多いのですが、子のうち成年に達している者でも病弱で再三に渡り入院加療を続けている子など未成熟子と同様に考えられており、婚姻費用分担請求では成年に達したかどうかを問わず、独立して生活を営むことができる能力があるかどうかを基準にし、その能力がないものについてはその者の生活に要する費用も婚姻費用に含めるべきであるとの見解もあります。
 そうであれば成年に達した子の高等教育費が婚姻費用に含まれるか否かが問題になりますが、大阪家庭裁判所審判昭和41年12月13日は、すでに成人に達し現在医科大学に在学中の長男の学費がその進学について相手方(夫)の了承を得ており、かつ相手方の資力にてらしその修学が当然と認められる場合には婚姻費用に含まれると判示しておりますので、高等教育を受ける費用も婚姻費用分担者の資力に比して不相当でなければ婚姻費用の中に含まれると考えてよいと思われます。

3 婚姻費用分担請求は夫婦が別居している場合に常に認められるか
 夫婦が別居生活に入ったとしても婚姻関係が継続している限り、原則として婚姻費用分担義務の負担者はその負担を免れないというのが判例の見解ですが、別居の原因につき責任のある者からの請求は全額が認められるものではなく、婚姻費用分担義務者は、婚姻関係の破綻の程度に応じて婚姻費用の分担額が軽減されるとされ、破綻の原因が専ら夫婦の一方のみにある場合には、その者は相手方に対し婚姻費用の分担を請求することはできないとされています(浦和地方裁判所昭和57年2月19日判決)。


4 過去の婚姻費用についての請求の可否

私は夫と別居して一年以上になりますが、婚姻費用分担請求権のあることを最近知りました。
過去の分まで請求できるものでしょうか。また、いつからの分から請求できるものでしょうか。

 過去の婚姻費用につき分担請求は可能です。
 いつからの分が請求できるかについては、考え方が分かれておりまして、婚姻費用分担請求は、婚姻費用分担を必要とする事情が生じた時点まで溯ってそのときの分から請求できるとする裁判例と、婚姻費用分担の請求者から分担義務者に対して請求がなされたときから請求できるという見解に分かれますが、折衷的な考えとして、義務者において請求者が分担の支払いを受けなければならない状況にあることを知り、または知り得べかりし時からの分について請求権が発生するとの見解もあります。(大阪高裁昭和58年5月26日判決)

5 大学生の学費も請求できますか
 婚姻費用には婚姻当事者の生活費だけではなく子供の養育費・教育費も含まれます。子供の範囲に関しては争いがありますが、未成年か否かではなく、未成熟子であるか否かを基準とする例が多く、ここで未成熟子とは経済的に自ら独立して自己の生活費を獲得すべき時期の前段階にあって、いまだ社会的に独立人として期待されていない年齢にある子女をいうとされ、決済上問題となるのは、すでに成人に達した後、いまだ稼働していない子供の養育費・教育費について婚姻費用の分担を考慮する必要があるかという点です。
 成人に達したがいまだ大学生であるケース等は未成熟子の段階にあるといえ、大学生の養育費・教育費は婚姻費用の分担の対象になるとされています。

 原則として婚約者が事実上ないし法律上夫婦となり夫婦共同体が成立した場合は、結納の目的は達成されたとして、その返還義務はないと解されています。
 しかし、婚姻は成立したが事実上夫婦共同体が成立しなかったときは、結納の返還を認めるとされています。
 判例で、挙式後2ヶ月間同棲生活をした場合で、その間当事者間の融和を欠き、相互間の情宜を厚くするに至らなかった時は、結納の返還義務があるとしたものがあります。


6 夫が他の女性と同棲しているような場合、その女性の生活費を婚姻費用分担額算定に際し考慮すべきですか
 裁判所は考慮すべきではないとしていますが、その女性との間に生まれた子の養育費は別途控除が認められています。

7-1 婚姻費用の計算方法はどのようなものですか
 以前は、いろいろな算定方法がありましたが、現在、裁判所は、全国共通の標準算定表を使って、わりと機械的に数字を出しています。判例タイムズ1111号285ページ以下に載っております。

7-2 前問で、婚姻費用は、夫の収入と妻の収入を合わせたものに対し、夫、妻、子らの消費単位で按分するとの回答をしていただきましたが、そうすると大学生の学費も婚姻費用として請求できるという場合には、大学生の学費はどのように、考慮されるのですか。
 婚姻費用額を定める審判のある具体的な事例について説明します。
(1)まず、夫婦の基礎収入を確定します。
 この基礎収入は、夫婦それぞれの年間の収入全額から職業費、公租公課費用の他、特別経費が引かれて、計算されます。
 この事案では、夫は医者で月の平均収入は約64万円です。
 職業費を35%相当の25万3500円が、公租公課として、社会保険料、固定資産税、都市計画税、自動車税等が約10万円引かれております。
 特別経費としては自動車保険料約5000円が引かれています。
 この結果、約24万円が夫の基礎収入になります。
 妻はパートで勤務し、約10万円の収入がありますが、公租公課として、健康保険料などが引かれ、特別経費として家賃や子の保険料が引かれると、基礎収入は約1万円とされました。
 この結果、夫婦の基礎収入の合計は約25万円となり、これが、夫、妻、子の各消費単位で按分されるのです。
 したがいまして、大学生の学費や保険料が認められる場合は、基礎収入を決める前に特別経費として認められることになります。

8 婚姻費用の理論的根拠は何ですか。
 婚姻費用分担義務は、夫婦と子供は一杯の粥も分けて食べる関係、すなわちお互いに自分と同一水準を維持しうる生活費を負担すべき関係に基づく義務(生活保持義務という。)であり、自己の生活に余裕のある限度ですれば足りるとされます親族間の扶養義務のような生活扶助義務とは異質のものです。
9 別居した場合、婚姻費用は常に計算どおり貰えるのですか。
 婚姻関係が破綻して別居しているような場合には、その破綻の度合いに応じて生活保持義務が希薄となり、生活扶助義務の程度にまで至るとする考え方が実務でも支持されつつあります。
 家庭裁判所の審判例や高等裁判所の決定の中に、婚姻関係が破綻して円満な夫婦生活の回復が期待できない場合には、その破綻の程度に応じて婚姻費用分担の額が軽減されるという裁判例もみられるようになりました。
 夫婦関係破綻の責任がある者からの婚姻費用分担請求でも、全部否認するのではなく、夫婦関係破綻に対する責任の割合によって、相手方の負う分担額を軽減するというものが多いのです。
 ただ、夫の意志に反して別居し、夫の同居の要請にも耳をかさず、且つ自らも同居生活回復の努力をしなかった妻からの請求に対し、妻の生活費については権利の乱用として認めず、妻が扶養している子供2人の監護費用を婚姻費用として認めた判例もあります。
 夫婦関係破綻の責任が主として相手方にある場合は、婚姻関係が完全に破綻していても生活保持義務に基づき相手方の収入、社会的地位にふさわしい程度の生活を保障すべき義務がある、とする判例もあり、別居の原因がいずれにあるかによって婚姻費用分担額がかなり違ってきます。

10 婚姻費用はいつからの分から、また、いつまで請求できるのですか。
 婚姻費用は、離婚訴訟が提起されると、支払義務はなくなるのですか。
 否です。婚姻費用は、離婚の訴訟が継続している場合でも現実に婚姻解消に至るまでは夫婦は婚姻費用分担義務を免れないとされていますので、離婚訴訟中でもその請求ができます。
 離婚が成立した後になって過去の婚姻費用についての分担請求ができるかについては、できるとするものと、できないとするものとがありますが、できないとするものは婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするので離婚によって消滅し、過去の婚姻費用は財産分与の事情として解決すべきであると解くものです。
 この見解が実務上強いようです。


11 いったん決まった婚姻費用の金額の変更は認められないのですか
 裁判等で婚姻費用の分担額が決まったらそのまま変更を求めることができないかについてであるが、一度分担額を決めた後、事情の変更が生じた時に婚姻費用分担の変更を許すという法律上の規定はありませんが、事情変更の原則を援用して増減額または取消が許されると解されています。
 ただこの場合の事情の変更は重要な事情の変更であることが必要とされ、当事者双方の健康状態、要扶養者側の扶養の必要の増減、義務者の収入、資力の増減、物価の変動などによる生活費の高騰は一般に重要な事情とみられています。
 審判例の中には、消費者物価指数の上昇率が15%を越えたこと、婚姻費用の分担をしている側の収入が増えたことから婚姻費用分担額の増額を認めた事例があります。
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