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不動産取引

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<不動産取引

不動産取引

■著 者  菊池捷男(きくち としお)
       昭和18年生まれ
       昭和45年 岡山弁護士会登録
       平成4年度 岡山弁護士会会長

■発行者 菊池捷男法律事務所
       岡山市南方1丁目8番14号
       TEL086−231−3535
       FAX086−225−8787

■発行日 平成9年2月11日
       菊 池 捷 男

2 重要事項説明義務
  宅地建物取引業者の重要事項の説明義務


宅地建物取引業者に仲介を委託して不動産を売買する場合、宅地建物取引業者にはどの程度の情報提供義務があるのでしょうか。

第1 宅地建物取引業者義務
 宅地建物取引業者との不動産売買等の仲介契約は、準委任契約と解するのが通説・判例です。これにより、不動産仲介業者は、民法644条により善管注意義務を負いますが、宅地建物取引業法35条の重要事項説明義務は、その具体的な一つの義務とせられています。ここで重要事項とは、当該事実を告げないことによって取引の相手方などが重大な不利益を蒙る事実である、と解されていますが、法35条が列挙する事由に限られず、より範囲が広いものです。宅地建物取引業者の注意義務の程度については、抽象的には「職務の専門性に鑑み高度のものが要求される」とされていますが、「重要事項」に該当するか否かは、仲介業者が「どこまで調査・報告すべきか」という問題であると考えられています。具体的事例における判例の検討は、「第3具体的検討」にあるとおりです。重要事項の説明は、契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、書面(図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない、とされています。

第2 注意義務違反の効果
  • 1 損害賠償責任(債務不履行・不法行為)
  • 2 媒介契約の解除は勿論、宅建業者自身が売主である場合には、重要事項の説明義務は売買契約に付随する売主の義務であり、売買契約そのものの解除が認められるケースもあります(後記「第3、1のF」の判例など)。
  • 3 報酬請求権の不発生
  • 4 その他行政責任・刑事責任など
 があります。

第3 具体的検討
1 法令による不動産利用制限に関する調査義務
 宅建業法35条1項2号は、「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別に応じて政令で定めるものに関する事項の概要」を顧客に事前に説明しなければならないとし、同法施行令3条に具体的な法令を挙げているが、宅地建物取引業者は、同法35条1項2号(及び同施行令3条)に規定されている事項のみについて調査すれば足りるのではなく、判例上以下のような事項についても調査・報告(説明)する義務が認められている。
  • @大阪高裁 昭和50年7月15日
    (建築基準法)
    「売買目的物件である建物につき建築基準法6条の確認を受けていないこと、およびその宅地につき右の宅地造成の許可、開発許可を受けていないことは、いずれも宅建業法47条1号にいう「重要事項」にあたる」
  • A東京地裁八王子支部 昭和54年7月26日
    (宅地造成等規制法)
    「宅建業者が土地を売買斡旋するについて、当該土地が宅地造成等規制法による宅地造成工事の規制を受けている場合には、買主に対しその旨を告知しなければならない」
  • B東京地裁 昭和54年10月30日
    (都市計画法)
    「土地の売買契約の仲介業者は、都市計画区域指定の可能性及び市街化区域もしくは市街化調整区域に含まれるかなどについて事前に十分に調査し、その結果を買主に伝える義務がある」
  • C最高裁 昭和55年6月5日
    (森林法)
    「宅建業者は、所轄機関に照会して売買目的たる山林について保安林指定の有無を調査すべき業務上の注意義務がある」
  • D東京地裁 昭和57年2月22日
    (建築基準法)
    「不動産仲介業者は、単に建坪率など建築基準法上の一般的な建築制限事項を調査するだけでなく、現実に当該土地に依頼者が希望の建物を建築する場合に必要な関係各庁の建築制限事項等を調査し告知する義務がある」
  • E東京地裁 昭和59年12月26日
    (建築基準法等)
    「宅建業者は、土地売買の仲介にあたり、仲介契約の目的が建売住宅用地としての売買である以上、買主に接道義務の問題や行政指導の問題について調査、説明義務を負う」
    (ただ、同判例は「不動産仲介業者に行政上の規制等についての調査義務があっても、仲介を委託した土地買主が自らも不動産仲介業を営む会社であり、計画通りの宅地造成をしても建築確認の得られないことを容易に理解できたときは、仮に買主が土地売買に関してなんらかの損害を被ったとしても、右損害はいわば買主の自招行為によるものと認められ、仲介業者の調査義務違反との間に因果関係は認められない」と判示している。)
  • F東京高裁 平成2年1月25日
     「分譲マンションの建設用の土地売買契約において、売買の目的とされた土地に判示のような行政指導に基づく建築規制が存することは買主にとって重要な事柄であり、売主としても右事実を容易に買主に説明でき、またその重要性を認識しうる職業的立場にあったことからすれば、売主には売買契約の締結にあたって右建築規制の存在について買主に説明すべき義務があるものと認められ、この説明義務は売買契約における信義則から導かれる広義の契約上の付随義務の一種であるから、売主の右義務の不履行を理由に買主は売買契約を解除することができる」
      
  • G東京地裁 平成3年2月28日
    (河川法)
     「宅建業者が、土地売買の仲介にあたって、当該土地が河川改良工事の拡幅計画対象地に含まれていることを説明しなかったことは、信義則上の義務違反であるとして不法行為責任が認められる」
     一方、大阪高裁平成7年11月21日判決は、「取引の対象となる土地が文化財保護法57条の2所定の周知の埋蔵物包蔵地に該当することは、宅地建物取引業法35条1項2号の「法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項」にはあたらず、そのことが業務上予見可能であり、かつ取引関係者に周知の埋蔵物包蔵地であることによる負担を負わせるのが酷であるような特段の事情がある場合に限って、宅建業者が調査説明義務を負う」として、この点に関する一般的な調査義務については否定している。ただし、仲介業者がこれを知りながら顧客に伝えなかったような場合には、当然違う結論になることが考えられる。下記の判決参照。
    東京地裁 昭和53年10月16日
    「宅建業者が、買主の土地購入の目的が別荘の建築であることを知りながら、またその土地が自然公園法10条、17条1項の国立公園の特別地域及び文化財保護法69条1項の名勝に指定を受けている土地で建築について制限があることを知りながら、その事実を告知しないことは詐欺にあたる」
2 人物・信用等の調査義務
 とりわけ賃貸借契約のような継続的な契約関係にあっては、取引の相手方については重大な関心事であるが、仲介業者としてこの点についてどこまで調査すべき義務があるか、問題となる。
 この点、東京地裁昭和56年7月15日判決は、「仲介業者は、賃借希望者の自ら申し出た身元、職業等の事項について、仲介業者としての通常の注意義務を払った結果、右申出事項に疑問があり、ひいては正常な賃貸借関係の形成を望み得ない事情のあることをうかがわれる場合を除き、原則として賃借希望者の申し出た右事項を委任者である賃貸人に伝えれば足り、それ以上に右事項につき独自に調査し報告すべき業務上の注意義務はない」として、取引の相手方の身元等について積極的な調査義務は否定している。ただし、契約の締結前に問題がある人物であることを知り、または知り得た場合には、当然これを委託者に通知する義務があると考えられる。

3 権原に関する調査義務
(1)宅建業法35条1項1号は、「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記載された所有者の氏名」について説明しなければならないと規定する。従って、法務局で登記簿を閲覧し、所有名義人の住所・氏名を確認することは当然である。また、契約締結にあたっては。最新の謄本をあげてみなければならない。
  • @東京地裁 昭和59年2月24日
     「宅建業者が店舗の賃貸借の仲介をするにあたり、1か月前に受領した登記簿謄本を過信し、権利関係の再調査をしないため店舗がすでに第三者の手に渡っているのに気付かず、物件説明書を作成して賃貸借契約を締結したのは、仲介行為に過失がある」
  • A東京地裁 昭和62年1月29日
    「建物の賃貸借契約を仲介する宅建業者は、仲介契約上の債務として、目的となる建物の所有者を調査し、貸主が所有名義人と異なる場合には貸主に貸借の権原があるか否かを確認する義務を負わねばならず、貸主が自分に権利がある旨説明し、その説明を借主が了承したとしても、それだけでは右義務を履行したとはいえない」
(2)では、不動産の売主(あるいは貸主)が真の権利者であるか否か、また、代理人と称する者が仲介を依頼してきた場合、仲介業者としてはどの程度までその真偽を調査すべきか。
  • @他人が本人になりすました場合
    (事例)
     地面師AがB所有の土地を売却しようと企て、土地の登記簿謄本、公課証明書、公図の写し、Bの住民票を取り寄せ、B名義の印鑑と印鑑証明書を偽造した上、これらを使って、権利証は紛失したとして司法書士に保証書を作らせて事情を知らない仲介業者に売買の仲介を依頼した。
     仲介業者は土地を現地で見分し、登記簿も閲覧した上、所有者Bを名乗る地面師Aに面会し、上記偽造書類等の提示を受けて住所・氏名を確認し、保証書については作成した司法書士に確認を取った。土地売却の動機についてもたずねたところ、Bが経営する工場がストで資金が入り用であるとのことであったので調査した結果事実であった。また、Bの住所付近で調査したところ、年齢、容貌もBを名乗るAと大体一致した。ただし、仲介業者はBの居宅、会社には連絡をとらなかった。
    (判旨)
     東京地裁昭和34年12月16日判決は、権利証を紛失したと称して保証書を提示しているような場合には、このような調査だけでは不十分であり、Bと称する者が真に所有者Bであるか否かの点について特別に注意を払い、Bの居宅、勤務先などに電話で連絡するとか、または直接出向いて確認するなどの調査をすべき注意義務があるとして、仲介業者の責任を認めた。
  • A売主の代理人と称する者が依頼してきた場合
    東京高裁平成元年2月6日判決
     「不動産仲介業者が買主の委託を受けて売買を仲介するにあたっては、売主の代理人と称する者が持参する本人の実印、印鑑証明書等により代理権の調査・確認をするだけでなく、特段の事情のない限り、売主本人に直接照会して売却意思を確認すべき注意義務があり、これを怠り売主本人の意思に基づかない瑕疵のある売買契約を締結させたことは、仲介契約上の債務不履行にあたる」
     
  • B以上の通り、この点については、仲介業者にかなり高度な調査義務が負わされているといえる。
  
  (3)に、当該不動産が差押えを受けていないか、抵当権が設定されていないかといった事項について
  は、謄本を見れば明らかであるので、仲介業者としては当然調査報告すべき義務がある。
@東京地裁 平成4年4月16日
 「宅建業者が委託を受けて店舗の賃貸借を仲介するにあたり、店舗のある建物の差押登記等の有無を確認しないまま、賃貸人を自称する男の言に従って重要事項説明書を作成交付して賃貸借契約を締結させたことは、調査義務に違反し、後の競売の結果やむをえず店舗を明け渡した賃借人の損害賠償請求が認められる」
A東京地裁 平成8年7月12日
 「宅建業者が土地売買の仲介をするにあたり、当該土地上に根抵当権が設定されていることの調査を怠ったため、買主が根抵当権設定後に売買代金を支払うに至り、根抵当権の極度額の限度において買主に損害が生じた場合、当該業者は土地の買主に対して調査義務違反の債務不履行責任を免れない」
  (4)逆に、大阪地裁昭和41年1月20日判決は、不動産の権利関係は登記簿の記載で一応推認されるから、「他に特段の事情がない限り、仲介業者としては、登記簿によって現在の権利関係を調査して瑕疵の有無を把握すれば一応目的物の権利関係の調査義務を尽くしたものというべく、それ以上の権利の取得過程にまでさかのぼってその真偽を確認する義務は存しない」としている。

 4 周囲の眺望・建築計画に対する調査義務
 取引対象土地の近辺の眺望、建築計画に対する調査義務については、これを否定したものもあるが、当然のことながら知ってこれを買主に告げない場合には注意義務違反の責任を問われることになると思われる。
(参考判例)
@東京地裁 平成11年1月25日
 マンションを分譲販売した宅建業者が周辺に換気塔及びトンネル出入口を建設することになる道路計画を告知する義務を負っていないとされた事例
A大阪地裁 平成11年2月9日
 「マンションの角から20メートルの地点に公衆浴場の煙突があることは、マンション売買契約締結時において説明義務の対象となる事実にあたらない」(以下は、建設計画を知りながらこれを告げなかった事例に関する判例)
B名古屋地裁 昭和59年2月10日
 「宅建業者が、土地の売買の仲介をするにあたり、買主がゴルフ場用地とする目的で取得することを知りながら、同地に特別高圧送電のための鉄塔の建設の予定があることを買主に告知しないのは、仲介業務上の注意義務を怠ったものである」
C松山地裁 平成10年5月11日
 「土地の売主である宅建業者が南側隣接地に高架道路を建設する計画があることを知りながら買主にその事実を説明しなかったことは、重大な契約上の義務違反であるとして、土地及び建物の減価額と精神的損害につき、損害賠償請求が認容された事例」
D東京地裁 平成11年2月25日
 「マンションの南側隣接地に建物を建築する計画は、マンション購入の意思決定に重要な意義を持つ事項であり、マンションを分譲販売する宅建業者は、売買契約に付随する義務として、右計画を購入者に告知すべき義務を負う」


3−1 「売買ノ目的物ニ隠レタル瑕疵」があるときという場合の瑕疵とは何ですか。
瑕疵とはキズ、欠陥を意味します。
 通常売買契約において通常要求される品質、性能等を備えていないことです。
 瑕疵には、
@物理的瑕疵
A権利の瑕疵
B心理的瑕疵(主観的瑕疵)
があります。

3−2 隠れたる瑕疵とは、どのような瑕疵ですか。
 隠れたる瑕疵とは、買主が購入したときに、通常の注意を払っても知ることができない瑕疵をいいます。

3−3−2 騒音も瑕疵になりますか。
 平成3年12月26日福岡地方裁判所判決は、騒音の激しい地域に位置する新築マンションの分譲に当たって、遮音性および機密性に優れた高性能防音サッシの使用をうたいながら、実際には遮音性能の不十分なサッシを使用したため、窓を閉めても近くの鉄道線路を通過する列車と踏切警報機の騒音に悩まされ、睡眠妨害等の被害が認められる場合、このマンションには瑕疵があり、マンションの売主には、マンションが十分な防音性能を欠くことによって下落した価格相当額の損害を賠償する責任がある、と判示し、さらに、このようなマンションを販売した会社には故意または過失があり不法行為にあたるとして、慰謝料まで認めております。

3−4 権利の瑕疵とは何ですか。
 建築制限等の権利の制約のことをいいます。
3−5 心理的瑕疵(自殺・事故死・殺人があった建物や敷地の瑕疵)
1,過去に建物内で自殺があった場合、それは建物の瑕疵になるか?
 なる、というのが判例です。
@平成9年8月19日浦和地裁川越支部判決
 土地建物の売買において、建物内で売主の親族が首吊り自殺していたことが目的物の瑕疵に該当するとし、買主の損害賠償請求が認容。
A平成7年5月31日東京地裁判決
 建物に付属する物置内で自殺行為がなされたことは、売買の目的物たる土地及び建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥にあたり瑕疵になる、とされた。
B平成1年9月7日横浜地裁判決
 家族の居住のため、マンションを購入したが、そのマンションで6年前に縊首自殺があったことを理由として、瑕疵担保責任による売買契約の解除と違約金条項に基づく損害賠償が認められた。

2,自殺のあった建物は取り壊され、同じ敷地で建物が新築された場合はどうか?
 瑕疵には該当しない、とされた裁判例があります。
C平成11年2月18日大阪地裁判決
 既存建物の取り壊しを目的とする土地及び建物の売買で、平成10年に建物と敷地を購入。建物取り壊し後に、売主らの母親が平成8年に首吊り自殺をしたことを知ったという事案。
 首吊り自殺があったという事実は、物件の瑕疵に該当する余地があるが、本件では、かつて存在した建物内で首吊り自殺があったということで、嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて、もはや特定できない一空間内におけるものに変容している。
 また、土地にまつわる歴史的背景に原因する心理的な欠陥は少なくない。嫌悪の度合いは特に縁起をかついだり、因縁を気にするなど、特定の者はともかく、一般人が、本件土地場に新たに建築される建物を居住に適さないと感じるとはいえない。よって、瑕疵に該当しないとされた。

 3,では、殺人事件だった場合はどうか?建物を取り壊した場合でも、敷地の瑕疵にならないか?
 なる、との裁判例があります。
D平成18年12月19日大阪高裁判決
 ある建物内で女性が刺殺されるという殺人事件あり。この建物は、事件後、取り壊し。土地を購入した買い主が、殺人事件のことを知った。
 殺人のあった建物は取り壊されたものの、女性が胸を刺されて殺されるという、病死、事故死、自殺と比べても残虐性が大きく、一般人の嫌悪の度合いも大きい。新聞報道もされており、8年以上前とはいえ、住民の記憶にも残っている。本件土地には、その上に新たな建物を建築しようとする者が、その建物を住み心地がよくなく、居住の用に適さないと感じることに合理性があると認められる程度の、嫌悪すべき心理的欠陥があり、瑕疵にあたる。
 この件では、売却価格の5%にあたる75万の損害賠償が認められました。
3−6 建物の所有権及び建物敷地の賃借権の売買契約で、底地に瑕疵がある場合も、売買契約の目的物の瑕疵と言えますか。
 底地の瑕疵が、@敷地の面積の不足、敷地に関する法的規制又は賃貸借契約における使用方法の制限等の客観的事由によって賃借権が制約を受ける場合(したがって、賃貸人に何も請求できない場合)は、建物の所有権及び借地権(建物敷地の賃借権)の売買契約の目的物の瑕疵となりますが、A物理的欠陥はあるが、賃借人として賃貸人に対し、修繕義務の履行を請求することで、瑕疵が修補されうるものは、売買契約の目的物の瑕疵にはあたらない、とされています。

  平成3年4月2日最高裁判所判決は、売買対象の土地が、南側が幅員六メートルの公道に接し、北側は基部が高さ2メートル弱のコンクリート擁壁で、その上に高さ約2.4メートルの大谷石の擁壁が積み上げられたいわゆる二段腰の構造となった崖になっていたが、売買契約の7ヶ月後、台風に伴う大雨により、擁壁に傾斜、亀裂を生じ、崖上の本件土地の一部に沈下及び傾斜が生じ、構造耐力上及び保安上著しく危険な状態となったため、行政庁から土地所有者らに対して、擁壁の新規築造又は十分な改修補強等、安全上必要な措置を早急に採るよう文書をもって勧告され、買主も、土地所有者に対して同様の申入れをしたが、土地所有者が何らの措置も採らなかったので、買主が、建物の倒壊の危険を避けるため、やむなく、取り壊したが、擁壁がこのような状態となったのは、擁壁に通常設けられるべき水抜き穴が設けられていなかったため、土中に含まれた雨水の圧力が加わり、大谷石の擁壁がこれに耐えきれなかったことによるもので、買主が借地権と建物を買い受けた際、擁壁のこの構造的欠陥について何の説明も受けず、水抜き穴の欠如がこのような重大な結果をもたらすことに全く想到し得なかったことを認めながら、通常人として無理からぬことであった、という事案で、原審が、借地権付建物の買主が当該売買契約当時知らなかった事情によりその土地に建物を維持することが物理的に困難であるということが事後に判明したときは、その借地権には契約上当然に予定された性能を有しない隠れた瑕疵があったものといわざるを得ず、これにより建物所有という所期の目的を達し得ない以上、借地権付建物の買主は、民法570条、五66条1項により売買契約を解除することができるとして、買主は売主に対して、売買代金の外に、売買に伴い支出した登記費用及び建物火災保険料の金額の合計額並びに遅延損害金の支払を命じたのに対し、「建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、右敷地についてその賃貸人において修繕義務を負担すべき欠陥が右売買契約当時に存したことがその後に判明したとしても、右売買の目的物に隠れた瑕疵があるということはできない。けだし、右の場合において、建物と共に売買の目的とされたものは、建物の敷地そのものではなく、その賃借権であるところ、敷地の面積の不足、敷地に関する法的規制又は賃貸借契約における使用方法の制限等の客観的事由によって賃借権が制約を受けて売買の目的を達することができないときは、建物と共に売買の目的とされた賃借権に瑕疵があると解する余地があるとしても、賃貸人の修繕義務の履行により補完されるべき敷地の欠陥については、賃貸人に対してその修繕を請求すべきものであって、右敷地の欠陥をもって賃貸人に対する債権としての賃借権の欠陥ということはできないから、買主が、売買によって取得した賃借人たる地位に基づいて、賃貸人に対して、右修繕義務の履行を請求し、あるいは賃貸借の目的物に隠れた瑕疵があるとして瑕疵担保責任を追求することは格別、売買の目的物に瑕疵があるということはできないのである。」と判示して、買主から売買契約の解除は認められないとしました。

3−7 買主は、売買契約の目的物に隠れた瑕疵のあることが分かったときは、売主に対してどのような責任を追及できますか。慰謝料は認められますか。
 売買の目的物に隠れたる瑕疵あるときは、買主は売主に対し瑕疵担保責任として、(1)まず損害賠償の請求ができます(民法570条、566条1項)。損害賠償として請求できる範囲は、原則として、買主が瑕疵を知らなかったために被った損害(信頼利益)に限られ、通常は修理費用相当額の損害賠償ができることになります。瑕疵があったためにすでに契約のできていた転売ができず、利益を得ることができなかった場合の損害(履行利益)までは請求できないとされております。(2)次に、瑕疵があるために売買の目的を達成することができないときは売買契約を解除することができます。売買契約の目的を達成することができない場合とは、瑕疵の修補が容易でないか、または過分の費用を要するほどの重大な欠陥がある場合を言います。

  なお、売主に故意または過失がある場合は、慰謝料も認められます。Q3−2の判例がそうです。

3−7−2 履行利益の賠償が認められる場合とはどのような場合ですか。
 瑕疵担保責任は無過失責任ですから、損害賠償の範囲も信頼利益の範囲とされていますが、売主に故意または過失がある場合は、履行利益の賠償まで認められます。
3−8 売主への瑕疵担保責任の請求はいつまでにしなければならないのですか。
 損害賠償、売買契約の解除とも、瑕疵を発見したときから1年以内にしなければなりません(民法570条、566条3項)。 ただ、この1年間という期間は、当事者の合意により短縮することも伸長することもできます。ただし、売主が宅地建物取引業者である場合は、瑕疵担保責任の期間について引渡後2年以上とする特約をする場合を除いて、買主に不利な特約はできないことになっております。これに反する特約は無効になります(宅地建物取引業法40条)。また、宅地建物取引業者でなくとも、法人が、民法で定めるより買主である消費者に一方的に不利な特約を結んだ場合も無効になります(消費者契約法10条)。 ただし、新築建物の売買の場合で、瑕疵が、建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものであるときは、建物引き渡しの時からから10年間は、売主は瑕疵担保責任を負い、これに反する特約で買主に不利なものは、無効とされます(住宅の品質確保の促進等に関する法律88条)。この期間は20年以内であれば、特約で伸長することができます(同法90条)。


3−9 隣家に暴力団構成員が住んでいるというだけで、不動産に瑕疵があることになるのですか。
@東京地裁平成7年8月29日判決は、売買の目的土地のすぐ近くに暴力団事務所が存在する事例で、これが土地の隠れた瑕疵に当たるとして、売買代金額の2割相当の損害賠償を認めました。
A東京地裁平成19年12月25日判決は、売買対象土地の隣に、脅迫的言辞をもって敷地部分における建物の建築を妨害する者が居住しているという事例で、この点が瑕疵に当たるとして売買代金額の3割相当の損害賠償を認めました。
B札幌地裁平成13年5月28日判決は、地方住宅供給公社が、購入希望者が暴力団関係者か否か等を調査確認すべき義務を負うところ、これを怠り暴力団関係者や不良入居者を多数入居させたという事例で、同公社に対し、一戸あたり金200万円の慰謝料の支払いを命じました。
 以上の裁判例から、裁判所が、売買対象土地の隣人が暴力団構成員であるという事実を、瑕疵と判断する可能性は高いと思われます。暴力団事務所と構成員の住居は全く同じではありませんが、ヤクザ風の人間が出入りしたり、いかにもそれらしい車が出入りすることは周辺住民及び隣人にとっては生活の安定を脅かされる事情です。転売が困難となることも予想されるからです。
 
 重要事項として説明する義務があるか?
 不動産売買の媒介を業とする者は、このように瑕疵にあたる可能性が相当程度高いものについては、重要事項として買主に告知すべきであると考えます。

4−1 市街化調整区域って何?
 都市計画法第7条3項で、市街化を抑制すべき区域とされている一定の地域をいいます。
  都市計画法は、都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることができこととし(7条1項)、市街化区域(2項。すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)と市街化調整区域(3項)を定めることができるものとしているのです。

4−2 サラリーマンが市街化調整区域で建物を建築することはできますか?
 原則として、できません。(注意:既存宅地の制度は平成18年になくなりました。)
  都市計画法第4条第12項は、「開発行為」とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう、と定めており、建物を建築することは開発行為にあたりますが、開発行為を行うには、都市計画法第29条で、「都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(岡山市の場合は岡山市長)の許可を受けなければならない、とされていますので、建物を建築するためには知事(岡山市の場合岡山市長)の許可(この許可を「開発許可」といいます。)が必要になります。
  ただし、都市計画法29条に例外規定があり、2号では、「市街化調整区域で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの」は、開発許可は不要になっております。それ以外は、開発許可がないと建物を建築することは出来ませんが、都市計画法34条では、市街化調整区域では、「当該開発区域の周辺の地域において居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為」(1号)等例外を除いては、限られた建築しか認められていませんので、これらと関係のないサラリーマンが市街化調整区域で建物を建築することは出来ません。
  ただ、市街化調整区域でも開発行為が出来る例外規定としては、都市計画法34条1号の外、1ないし10号と8号の2ないし4まであり、特に、8号の3「市街化区域に隣接し、又は近接し、・・・五十以上の建築物が連たんしている地域・・・」では、開発許可が得られているようです。

4−3 市街化調整区域にある農地を農地として使うために購入することはできますか?
 農地法第3条により、個人が自分の住所のある市町村の区域内にある農地を購入する場合は農業委員会の、そうでない農地については知事の許可を得なければなりません。
  許可は、購入しようとする者又はその世帯員がその取得後において耕作の事業に供すべき農地の面積の合計及びその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき採草放牧地の面積の合計が、いずれも、北海道では2ヘクタール、都府県では50アールに達しない場合等一定の場合は許可されません。

4−4 市街化調整区域にある農地を資材置き場にすることはできますか?
 農地法第4条により、都道府県知事の許可(面積が4ヘクタールを超える場合等は農林水産大臣の許可)を受ければ、できます。
 ただし、これには例外もあり、例えば、市街化区域内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合等は、許可が不要です(農地法第4条1項4号外)。そして、その許可ですが、農用地区域内にある農地については許可されません。
 それ以外の農地については、(1) 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地で政令で定めるもの、(1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地で政令で定めるもの以外は、原則として許可されません(農地法第4条2項)。


4−5 市街化調整区域にある農地を宅地にするために購入することはできますか?
 農地法第5条1項により、農地を農地以外のものにするために購入する場合、原則として都道府県知事の許可(4ヘクタールを超える場合には、農林水産大臣の許可)を受けなければなりません。そして、その許可ですが、農用地区域内にある農地については許可されません。それ以外の農地については、(1) 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地又は採草放牧地で政令で定めるもの、(1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地又は採草放牧地で政令で定めるもの以外は、原則として許可されません(農地法第5条2項)。

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