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交通事故 人損

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<交通事故【人損】


1 逸失利益−ホフマン方式とライプニッツ方式−
 逸失利益の算定方式について、中間利息の控除の方式であるホフマン方式とライプニッツ方式の違いにより、裁判所によって金額に違いがあると聞きますが、事実ですか。

 事実です。
 現在、幼児・生徒・学生などの若年者の逸失利益の算定において、原則として全年齢平均賃金とライプニッツ計数の組み合わせによる東京方式と初任給固定賃金とホフマン計数の組み合わせによる大阪方式とがあります。
  ただ、判例時報1692号に掲載された記事によりますと、平成11年11月22日東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の各交通部総括判事より、以上の点に関しては、次の共同提案がなされましたので、今後は、全年齢平均賃金とライプニッツ計数の組み合わせによる方式に統一されるであろうと思われます。

共同提言の骨子
  • A 交通事故による逸失利益の算定において、原則として、幼児、生徒、学生の場合、専業主婦の場合、及び、比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については、基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金によることとし、それ以外の者の場合については、事故前の実収入額によることとする。
  • B 交通事故による逸失利益の算定における中間利息の控除方法については、特段の事情のない限り、年5分の割合によるライプニッツ方式を採用する。
  • C 上記のA及びBによる運用は、特段の事情のない限り、交通事故の発生時点や提訴時点の前後を問わず、平成12年1月1日以後に口頭弁論を終結した事件について、同日から実施する。

共同提言の運用
  なお、この共同提言の内容が、各裁判官の個々の事件における判断内容を拘束するものでないことは当然のことである。

2 逸失利益の計算をする場合、何故年5%もの割合で中間利息を控除するのか。
(1)逸失利益の意味
 逸失利益は、被害者が死亡または後遺症のため、労働能力の全部又は一部を喪失したことにより、将来得られる利益を失ったという損害のことですが、将来発生する損害を現在の損害として支払ってもらうわけですから、本来もらえる時期までの中間利息が控除されなければなりません。
 問題は、中間利息の割合です。現在までの裁判例のほとんどは、中間利息の割合を年5%で計算していますが、これは、現在逸失利益の支払を受けても、今後、これを元本として年5%の割合の利息が得られるという前提に立った考えですが、現在は、銀行利息がタダみたいな時代です。賠償金をもらって安定して年5%の利息を得ることは不可能です。

(2)裁判例
  裁判例は、民法404条が「利息ヲ生スヘキ債権ニ付キ別段ノ意思表示ナキトキハ其利率ハ年五分トス」と定めているところから、一般的には、東京高判平成13年6月13日判時1752号44頁の判示するように、「交通事故被害者の逸失利益の算定における中間利息の控除割合については、従前の訴訟実務の大勢に従って民事法定利率を採用することが、交通事故訴訟の統一的処理という見地からも相当なのであって、本件における中間利息の控除も民事法定利率である年5%によることが不相当であるということはできない」と考えられていますが、これと違った裁判例もあります。
  札幌地判平成13年8月30日判時1769号93頁は、「定期預金金利が平成10年には年0.25パーセントに至り、現在においても大きく上昇する兆しが認められないことなどから、交通事故により負傷した被害者の逸失利益の算定に当たっては、中間利息の控除割合を症状固定後5年間は年3パーセント、その後は年5%とするのが相当である」とし、津地熊野支判平成12年12月26日判時1763号206頁は、「交通事故で死亡した被害者の逸失利益の算定に関して、公定歩合や市場金利の低下及び被害者の就労可能年数が12年であることに鑑みて、中間利息の利率は年2%として控除するのが相当である」としております。
 現在のような低金利の時代には、年5%もの割合の中間利息の控除は、被害者に酷な結果になっていると思われます。
 しかしながら、最高裁判所平成17年6月14日判決は、中間利息は、民事法定利率の年5%によるべきである、と判示しました。
 それまで下級審の判決の中には、5%よりも小さい利率しか認めないものもあったのですが、今後は5%で統一されることになるでしょう。

3 企業損害(間接損害)で認められるもの、認められないもの
 交通事故で、企業の役員や従業員が死傷した場合、企業にも影響が出、損害が発生する場合があります。
 その場合、企業は加害者に対し、損害賠償の請求ができるか、が問題になります。結論は、企業の反射損害といわれるものは請求でき、固有損害といわれるものは原則として認められていません。

一 反射損害
  代表者や役員・従業員が事故により休業した場合でも、役員報酬や給与が支払われる場合がありますが、その場合は、直接の被害者には休業損害がないことになります。
しかし、一方、役員報酬や給与を支払った企業に損害(「反射損害」「肩代わり損害」「転化損害」などと言われます。)が生じます。
 企業はその賠償を請求できるか?ですが、これはだいたいにおいて、裁判所も損害賠償の請求を認めています。例えば、東京地裁平成14年6月25日判決は、反射損害のうち、代表者である被害者が労務を提供できなかった分として給与の6割を認めました。

二 固有損害
  代表者や役員・従業員が事故により休業した結果、企業の売上が減少したなどで損害が生じる場合がありますが、このような損害について、損害賠償の請求が認められるか?ですが、
1, 代表者の場合
  最高裁昭和43年11月15日判決は、会社がいわゆる個人会社であり代表者に会社の機関としての代替性がなく両者が経済的に一体をなす関係にある場合は、交通事故により会社代表者を負傷させた加害者は、会社に対し損害を賠償する義務があることを認めています。会社と個人は一体のものと考えられる(「財布共通の原則」という言い方があります。)ことからの結論です。
 裁判実務でも、このような場合は企業損害を認めています。
 例えば、神戸地裁平成12年7月31日判決は、被害者が、妻を唯一の事務員とし、常雇いの従業員はおかず、工事の受注があれば、その規模に応じて、そのときどきの手間賃だけの支払いで作業員を雇用して工事をする、いわゆる一人親方の土建会社の経営者というケースで、代表者である被害者が事故により傷害を受けたため、企業は受注活動を行えなくなって売上不振に陥り損害を蒙ったという事案で、この企業の3期分の営業損失額として合計2090万円を認めました。
 また、大阪地裁平成12年3月2日判決も、会社は個人会社で、経営は被害者の個人的な能力に負うところが大きく、被害者には機関としての代替性がなく、会社との間に経済的一体性があることから、事故前3期の営業利益の平均を基準に、休業中の期の現実の営業利益との差額を企業損として認めました。
 部分的に企業損を認めた判例もあります。大阪地裁平成18年6月20日判決は、企業において運転免許を保有していたのは代表者のみで、代表者が事故によって負傷して稼働できなくなったことによって、企業は運送会社に製品の納品等の運送を委託したことにより費用がかかったことを認め、運送費の一部を損害と認めました。

2,従業員の場合
 被害者が従業員である場合は、企業損は認められていません。
 名古屋地裁平成16年7月19日判決は、料理店の従業員が事故で死亡したため、料理店を閉鎖した事案で、企業の経営者は、従業員が休業しても営業に支障が生じないよう対応を講じておくべき、だとして、企業の損害を認めませんでした。

4 むち打ち症に関する損保会社の態度と脳脊髄液減少症
 NHKの2006年7月12日朝の番組で紹介されていた例を紹介いたします。
 この番組では、交通事故の被害者である患者さんのことが紹介されていましたが、この患者さんの怪我は、頭痛、頭重感、倦怠感、脱力感、集中力・気力の低下、睡眠障害等々の症状をもたらす、いわゆるむち打ち症と言われる傷害でした。
  これまでむち打ち症については、医学的にも解明されたとは言えない状況のようですが、この患者さんの症状についても、加害者が加入している任意保険会社は、事故後6ヶ月を過ぎた治療は、交通事故とは因果関係がないとして、治療の打切りを要求し、治療費や休業損害金を支払わないという態度をとったようです。
 しかしながら、この患者さんの症状は、専門医によって、交通事故によって発症した脳脊髄液減少症であることが解明され、その治療をすることで、むち打ち症が快方に向かうようになったことが報じられていました。
  今後、脳脊髄液減少症から来るむち打ち症については、原因が分かっただけに、保険会社も態度を改めてくれるのではないかと思われます。

5 年金受給者が交通事故で死亡すれば、相続人が被相続人の年金受給権の喪失による逸失利益を相続するが、一方で、相続人が遺族年金をもらうと、年金を二重にもらうことになる。この場合の扱い。
  最高裁平成5年3月24日判決は、判決が言い渡される期日の直前の期日(これは「口頭弁論終結時」あるいは「最終口頭弁論期日」と言います。)までに相続人がもらった遺族年金及びそれまでに支給を受けることが確定している金額(通常3ヶ月分)は、被相続人の年金受給権の喪失による逸失利益から差し引くが、相続人が将来もらえる遺族年金については差し引かないことを明らかにしました。
 相続人が将来もらえる遺族年金を逸失利益から差し引かない理由は、その金額が確定していないから、という理由です。




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