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建築・建設問題

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<欠陥住宅問題

建設


1−@ 瑕疵とは何か。
 瑕疵判定基準 
  • 共通項目
 建物の水平度  1.5/1000o
 コンクリートの亀裂  1.5o/1000o
 設計図書寸法と実際の相違  3%
 性能瑕疵  3%
 汚れ  汚れが過半数の人にわかる程度
 割れ・亀裂  0.1o
 剥がれ・捲れ・凹凸  2o/1000o
 床鳴り・軋み  全てが瑕疵となる。
 層間騒音  建築学会の設計基準案参照
 隣接住戸の騒音  法的基準
 家相学的瑕疵  発注者の要望内容による。
 補修の範囲  補修の範囲の特定
 排水不良  HASSの基準
 不等沈下  全てが瑕疵となる。
 撓み   2o/1000o 

(鉄筋コンクリート造・鉄骨造)
 コンクリートの圧縮強度不足  設計基準強度の−10%
 建物の垂直度  幅0.1o以上
 コンクリートの被り厚さ  建築基準法施行令
 鉄筋の間隔不足  所定間隔に所要本数があればよい。
 コンクリートの中性化深さ  理論的深さの+10%
 鉄筋の台直しの程度  現状による判断
 基礎の割栗地業の瑕疵  設計の20%以上の不足
 溶接部分の瑕疵  検査による合否の判定
 アンカーボルトの埋め込み長さの不足  所定長さの20%
 鋼材の厚み不足   設計寸法

(鉄骨構造)
 鋼材の寸法  ±0
 建物の傾斜  1/500以下、最大25o
 床の湾曲  1/200以下、最大30o
 柱の心の出入り  3o
 柱の傾斜  1/500以下
 梁の撓み  1/1000以下
出典:田中峯子『建築・近隣紛争の法律相談』264頁[中村幸安](青林書院、平成9年)

1−A 建築物に瑕疵がある場合、注文者から請負業者に対し、どのような請求ができますか

 瑕疵修補請求と損害賠償の請求ができます。
 詳細は欠陥住宅問題を参照していただきたいのですが、民法634条では、「仕事の目的物に瑕疵あるときは注文者は請負人に対し相当の期限を定めて其瑕疵の修補を請求することを得・・・A注文者は瑕疵の修補に代え又は其修補と共に損害賠償の請求を為すことを得・・・と定めていますので、瑕疵修補請求と損害賠償の請求ができます。

1−B 瑕疵担保期間つまり前問の請求のできる期間はいつまでですか。

 いわゆる瑕疵担保期間ですが、民法638条は、「土地の工作物の請負人は其工作物又は地盤の瑕疵に付ては引渡の後5年間其担保の責に任ず但此期間は石造、土造、煉瓦造又は金属造の工作物に付ては之を10年とす」と定めていますので、木造建物の場合は引渡を受けてから5年間、鉄筋コンクリート造りの場合は10年間、請求できます。ただし、次の例外があります。
  • 例外の1(期間短縮の合意)
     民間での請負契約書の代表的なものである、民間(旧四会)連合約款による請負契約書は、その27条で、瑕疵担保期間として、木造建物の場合は引渡日から1年間、鉄筋コンクリートの場合は2年間(ただし瑕疵が請負人の故意または重大な過失によって生じたものであるときはそれぞれ5年間、10年間)とする定めておりますので、瑕疵担保期間は、実務上は民法で定める期間より短くなっている場合の方が多いと思われます。

     判例は、このような契約書については、「請負契約において、契約当事者が請負人の瑕疵担保責任の存続期間を2年に短縮する旨約した場合、この合意は有効であり、民法638条1項に違反しない。」と判示(昭和49年3月28日最高裁判決)としております。 
  • 例外の2(新築住宅の特例)
      住宅の品質確保の促進等に関する法律87条で、新築住宅の請負契約では、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵について、請負人に10年間の瑕疵担保責任が課せられており、この規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とされております。

1−C 瑕疵担保期間内にどの程度のことを請求すれば、瑕疵担保権を行使したことになるのですか。

 請負契約で瑕疵担保期間を1年間と定められているケースで、判例は、請負の目的物に瑕疵があり、その引渡から1年以内に注文者から修補請求がなされたときは、これより生ずる修補に代る、または修補とともにする損害賠償請求権は、たとえ最初の引渡の時から一年経過後でも、その行使を妨げられないとしています(昭和53年10月26日大阪高裁判決)。
 瑕疵担保期間は、「除斥期間であり、右期間内に裁判外で権利を行使すれば権利は保全される」(昭和60年2月15日東京地裁判決)のです。
 つまり、瑕疵担保期間内に、裁判外で、「注文者から修補請求がなされたときは、修補請求権はこれにより保存され、10年間の消滅時効が完成するまで存続するものであり、また、修補に代わる損害賠償請求は修補請求に代わるべきものであるから、修補請求権が存続する限り損害賠償請求権も存続する」(昭和61年10月1日福岡地裁判決)のです。

2 土地利用に関する法規制
  建物を建築する等土地を利用をする場合の法律のしくみを教えてください。

 土地利用をめぐる法として次のものがあります。
(1)都市計画法 都市計画法のしくみは、知事が都市計画区域を決め、その中に公共施設を効率よく配置するのですが、

  • @都市計画区域の中に計画的な市街化を図るため、市街化区域と市街化調整区域とを定め、
    • @市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域、
    • A市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされ、原則として建物の新たな建築はできないところになっております。
  • A市街化区域については、
    • @用途地域の指定がなされます。
      用途地域には、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域があり、地域ごとの土地の利用目的が決められます。
    • Aその他に美観地区などの地区の指定が必要に応じてなされ、その地区指定に応じた土地利用の制限や利用の促進がなされます。
  • B都市計画区域の中に、特に市街化区域の中に、道路・公園・上下水道などの都市計画施設が造られます。
    都市区画整理法や都市開発法という法律などで市街地の開発事業も必要に応じてなされます。
  • C建物の建築を規制する条項は都市計画法では特に定められておりませんが、建築基準法同法 施行令、各都道府県や市の条例などで規制が定められております。
  • Dなお、市街化区域と市街化調整区域とで一定の規模以上の土地の利用をする場合は、都市計画法で開発許可を受けなければならないことになっております。
(2)建築基準法
  • @建築基準法では、
    • @第一章に総則規定が置かれ、
    • A第二章に単体規定といわれるものが定められ、これによって建物の内容が規制されております。
    • B第三章に集団規制といわれる規定があります。
  • A建築基準法は、都市計画区域内では、容積率と高さ規制と建ぺい率の3つの規制がなされております。
    • @容積率は、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合のことです。
    • A高さ規制は、斜線制限というかたちで道路との間の斜線制限、北側隣地との斜線制限などを定めています。
    • B建ぺい率とは、建築敷地面積に対する建築面積の割合のことで、敷地に一定の空地を保つために設けられています。
  • B都道府県や市が定める条例
     都市計画法では、美観地区や風致地区における建築制限について、条例で規制を定めることができることになっております。
    条例で建物の建築制限を定めることができると定められている場合は問題はありませんが、条例で定めることができることになっていないのに条例で規制している場合に問題が生じます。
     神戸地方裁判所平成9年4月28日は、宝塚市が、都市計画法では建築の制限を受けない用途地域であって、条例によってパチンコ店等の風俗施設の建築を禁ずる条例を設けているケースで、都市計画法と条例との関係を次のように述べ、条例でもって都市計画 法が規制していない用 途地域において建物の建築を規制することはできないと判示し、控訴審の大阪高等裁判所もこの判決を支持しております。
    【判旨】
     「都市計画法及び建築基準法は、住居地域、商業地域等の用途地域ごとに建築可能な建築物をあらかじめ定め、地方公共団体が、どのような町づくりを行うかは、都市計画における用途地域の決定、変更を通じて行うという都市計画行政体系を採用しているものと解される。
     また、建築基準法において、 一定の事項に関しては、地方公共団体の条例において同法と異なる規制を行うことができる旨規定している(四〇条、四一条等)のに対して、用途地域内における建築物の制限については、地方公共団体の条例において同法と異なる規制をなし得るとした規定は存在しない。
     さらに、地方自治法二条三項一八号は、土地利用規制は、「法律の定めるところにより」地方公共団体の事務に属するとし、都市計 画法は、用途地域等の地域地区内における建築物等に関する制限は、同法で特に定めるもののほか、別に「法律で」定めるとしている(一〇条)。
     したがって、建築基準法は、用途地域内における建築物の制限について、地方公共団体の条例で独自の規制をなすことを予定していないと解するのが相当である。
     この点、宝塚市は、地域の実情は長い時間を掛けて徐々に変容していくものであること、特別用途地区が設定できる地域は限定されていることから、町づくりは、用途地域の変更や特別用途地区 の指定のみにより行うのでは不充分であり、地域の実情に即応して制定できる条例によっても行うこと ができる旨主張する。
     しかし、都市計画法は、同法に規定する一二種の用途地域による規制が、全国 一律に適用されるものであり、この規制だけでは必ずしも地域の実情に充分に対応しきれないことを 慮して、右規制を補完し、地方の実情に即した土地利用の増進、環境の保護等を図るため、特別用途地区を定めている(八条二号、九条一三号、同法施行令三条)。
     そして、右地区内の建築制限は、建 築基準法に基づいて条例で定めることになっている(同法四九条、五〇条)。
     したがって、地方公共団体の町づくりは、あくまで都市計画における用途地域の決定、変更及び特別用途地区の設定を通じて 行うこととしており、右規制につき、法律の委任を受けない条例が、地域の実情に応じた独自の規制をなすことを予定していないと解するのが相当である。」

3 瑕疵ある建物に対し、建築代金の支払いを拒みうるか。
 私は、自宅を新築したのですが、引渡を受けるとき、思ったものとは違う建築物でありいわゆる瑕疵のある建物であったため、建築代金の残金の支払いを拒否しましたが、請負業者から、残金を支払わないと高い金利がつくと言われ心配です。
 納得のいかない建物でもいったんは残金を支払わないといけませんか。


 原則として残代金の支払は拒否できますが、例外に注意して、以下をお読み下さい。
  • @注文者は、建物が完成したが、その建物に瑕疵があるときは、請負業者に対し、相当の期限を定めて、瑕疵の修補、つまり修繕を請求することができます(民法634条1項)。 請負業者は、注文者との契約上、完全な建物を完成させる義務を負いますので、完全な建物にする修理をするまでは、代金の支払いを受けることは出来ないという関係、いわゆる修理義務と残代金支払義務が同時履行の関係にありますので、注文者は、請負業者に対し、当然に、修繕をするまで は残金の支払いを拒否することができます。同時履行の関係というのは、民法533条で「双務契約当事者ノ一方ハ相手方カ其債務ノ履行ヲ提供スルマテハ自己ノ債務ノ履行ヲ拒ムコトヲ得」という関係です。以上により、あなたは、請負業者に対し、修理を請求し、それがなされるま残代金の支払を拒否で きます。残代金の支払が拒否できると言うことは、支払いの遅れに対して遅延損害金を支払わなくても良いと言うことですので、あなたの場合の請負業者がいうような金利の支払いをする必要はありません。
  • Aところで、請負業者がいつまでも修理をしないとか、あなたが請負業者に対する信頼をなくした結果、請負業者に修理をさせず、修繕に代えて損害賠償の請求をしたいと思われる場合もあるかと思い ますが、法は、このような場合、「注文者ハ瑕疵ノ修補ニ代へ又ハ其修補ト共ニ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ第五百三十三条ノ規定ヲ準用ス」(民法634条2項)と定め、注文者が、修繕に代えて損害賠償の請求をすることも、また、修繕と共に損害賠償の請求をすることもでき、しかも、この場合も、注文者は、請負業者がその義務を履行するまでは残代金の支払を拒否できると定めております。請負業者の本来の修補義務の場合は、当然のことですから、わざわざ残代金と同時履行の関係にあるということを明らかにするために民法634条1項に民法533条を準用するとは規定していませんが、修繕に代わる損害賠償の請求や修繕と共にする損害賠償の請求は、理論上、残代金の支払義務とは当時履行の関係にはなりませんので、同条2項に但し書きを設けて、この場合も、同時履行 になることを明らかにしたものです。ただし、例外のあることに注意が必要です。
  • B最高裁判所平成9年2月14日判決は、、「請負契約において、仕事の目的物に瑕疵があり、注文者が請負人に対して瑕疵の修補に代わる損害の賠償を求めたが、契約当事者のいずれからも右損害賠償債権と報酬債権とを相殺する旨の意思表示が行われなかった場合又はその意思表示の効果が生じないとされた場合には、民法634条2項により右両債権は同時履行の関係に立ち、契約当事者の一方は、相手方から債務の履行を受けるまでは、自己の債務の履行を拒むことができ、履行遅滞による責任も負わないものと解するのが相当である。」と判示しております。
  • Cまた、同最高裁判所判決は、続いて、「しかしながら、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等に鑑み、右瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払を拒むことが信義則に反すると認められるときは、この限りではない。そして、民法634条1項但書は「瑕疵カ重要ナラサル場合ニ於テ其修補カ過分ノ費用ヲ要スルトキ」は瑕疵の修補請求はできず損害賠償請求のみをなし 得ると規定しているところ、右のように瑕疵の内容が契約の目的や仕事の目的物の性質等に照らして重要でなく、かつ、その修補に要する費用が修補によって生ずる利益と比較して過分であると認められる場合においても、必ずしも前記同時履行の抗弁が肯定されるとは限らず、他の事情をも併せ考慮して、瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額との同時履行を主張することが信義則に反するとして否定されることもあり得るものというべきである。ただし、右のように解さなければ、注文者が同条1項に基づいて瑕疵の修補の請求を行った場合と均衡を失し、瑕疵ある目的物し か得られなかった注文者の保護に欠ける一方、瑕疵が軽微な場合においても報酬残債権全額について支払が受けられないとすると請負人に不公平な結果となるからである(なお、契約が幾つかの目的の異なる仕事を含み、瑕疵がそのうちの一部の仕事の目的物についてのみ存在する場合には、信義則上、同時履行関係は、瑕疵の存在する仕事部分に相当する報酬額についてのみ認められ、その瑕疵の内容の重要性等につき、当該仕事部分に関して、同様の検討が必要となる)。」と判示して、注文者が請負業者に対し残代金の支払を拒否し得る場合の例外として、
    (1)契約当事者のいずれからも右損害賠償債権と報酬債権とを相殺する旨の意思表示が行われなかった場合
    (2)瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等に鑑み、右瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬残債権全額の支払を拒むことが信義則に反すると認められる場合は
    注文者が請負業者に対して残代金の支払を拒むことが出来ないとしております。
  • D逆に言えば、注文者か請負業者が、瑕疵による損害賠償の請求権と請負残代金の請求権を対等額で相殺する意思を表示してしまえば、残代金から損害賠償額を引いたものの支払は拒否できません。 また、瑕疵の内容が重要でなく、それほど費用がかからないのもかかわらず残代金が大きい場合などは、残代金の支払を拒否することは出来ません。後者については、参考判例として、平成9年11月28日福岡高等裁判所判決は、「建築請負業者Xの注文者Yとの間における請負に係り、XがYに請負残代金1325万円の支払を求めたのに対し、 Yが瑕疵の修補があるまで請負代金の支払を拒絶する、瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもっ て相殺すると主張した事案について、
    (1)建物には柱と建具との間に隙間があるという瑕疵が認められるがその修補には46万余円を要するという軽微なものということができるうえ、
    (2)Yは相当な期限を定めて瑕疵の修補を求めたことはなく、当初から一貫して瑕疵修補に代わる損害賠償債権の金額を請負代金から減額するよう求めていたにすぎず、同時履行の抗弁を確定的に主張したのは控訴審における審理の終結間際であったことに鑑みると、Yが瑕疵修補を求めて請負代金全額の支払を拒むことは信義則に反して許されない。」として、残代金の支払を拒否できないとしております。
  • Eさらに、残代金の支払を拒否できない場合として、前記最高裁判所判決は、契約が幾つかの目的の異なる仕事を含み、瑕疵がそのうちの一部の仕事の目的物についてのみ存在する場合には、 瑕疵の存在しない仕事部分に相当する報酬額については支払拒否は初めからできないことも明らかにしております。
  • Fなお、残代金の支払が拒否できないとされたときは、注文者は当然に残代金に遅延損害金が付けられますので注意が肝要です。注文者が請負業者と結ぶ建築請負契約には、民間(旧四会連合)契約約款が付いている場合がありますが、この契約約款では遅延損害金は一日につき残代金の10000分の4が付くことになっております。一日に10000分の4ということは、一年間で10000分の1460ということで、年率1 4.6%に他なりません。非常な高利率です。あなたの場合、残代金の支払を簡単に拒否できるものかどうか、注意深くご検討下さい。


4 瑕疵担保期間内の権利行使の意味
 建物を建築してもらいましたが、引渡を受けた後、半年位して雨漏りが始まりました。
 このとき、施工業者に補修を請求しましたが、施工業者は修理をしてくれませんでした。
 それから5年が経過し、再度請求しましたところ、施工業者は、建築請負契約で定めた瑕疵担保期間が2年間であるから、引渡後5年半も経過した今頃、補修を言ってきても責任はない、と言って補修に応じてくれません。
 業者には、もはや、補修義務も損害賠償支払義務もないのでしょうか。


 あなたは、施工業者に対し、瑕疵補修及び損害賠償の請求が可能です。
 業者は、瑕疵担保期間の意味を誤解していますが、あなたは2年間の瑕疵担保期間内に、業者に、雨漏りの修補を請求していますので、それによって、修補請求権は保存されております。
 最高裁判所平成4年10月20日判決は、瑕疵担保による損害賠償請求権を保存するには、右請求権の除斥期間内に、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判所上の権利行使をするまでの必要はない、と言っております。
 この権利はその時から10年の消滅時効が完成するまで、存続します。
 修補に代わる損害賠償請求は修補請求に代わるべきものですから、修補請求が存続する限り損害賠償請求権も存続するのです。(昭和61年10月1日福岡地方裁判所判決、平成12年12月26日岡山地方裁判所判決)。

5 建築請負人の瑕疵担保責任と債務不履行責任
 私は、自宅を8年前に建てましたが、最近になって瑕疵のあることがわかりました。
@私の場合、請負業者に対し、瑕疵担保責任を追及するには除斥期間が経過しているため出来ないようですので、請負契約の債務不履行(不完全履行)を理由に損害賠償の請求をしたいのですが、出来ますか。
Aもし、請負業者に損害賠償の請求が出来ない場合は、工事管理契約を結んだ一級建築士に管理者としての責任を追及して損害賠償請求をしたいのですが、出来ますか。


 @Aとも出来ません。
 @については、請負人の瑕疵担保責任に関する民法634条以下の規定は、単に売主の担保責任に関する民法561条以下の特則であるのみならず、不完全履行の一般理論の適用を排除するとされている(平成4年12月21日東京地裁判決)からで、
Aについては、一級建築士との間の工事管理契約の法的性質が準委任契約ですから、管理者の責任は10年は消滅時効にかかりませんので、8年しか経過していないあなたの例では、管理者に損害賠償の請求が出来そうですが、ただそれ以前に請負人の瑕疵担保責任が除斥期間の経過によって消滅した場合は、その工事の瑕疵に関する管理者の責任も同時に消滅するとされている(@と同じ判例)からです。

6 シックハウス症候群について建築業者や家主に対し損害賠償の請求が可能か
 最近、新築住宅で、居住者は、めまい、吐き気、頭痛、平衡感覚の失調や呼吸器疾患などいろいろな症状、体の不調を訴えるケースが社会問題になっているようです。この症状を、シックハウス症候群、あるいは、化学物質過敏症などと呼ばれておりますが、このようなシックハウス症候群にかかった人は、住宅会社や家主に対し、損害賠償の請求ができるものでしょうか。
 なお、シックハウス症候群とはSick Building Syndromの和略で、Sickとは、病気のという意味、直訳すれば「病気の家、症候群」とでも言うべきものと言われております。裁判例は少なく、現在のところ、平成10年2月25日の横浜地方裁判所判決があるだけです。
 事案は、新築のアパートに入居した人が、目がちかちかするなどの自律神経失調、視中枢異常、眼球運動中枢異常などが生じた外、非常に広範囲に中枢神経系の異常は見られた、これからアパートの賃貸借契約を解除して退去し、家主に対し、損害賠償の請求をしたというものです。
 裁判所は、
  • @シックハウス症候群(化学物質過敏症)はごく最近において注目されるようになったものであり、未だ学会においてする完全に認知されているものとは言い難い状況にあること、したがって、本件建物建築当時の平成5年6月ころの時点におちて、一般の住宅建築の際、その施主ないし一般の施工業者が化学物質過敏症の発症の可能性を現実に予見することは不可能ないし著しく困難であったと認められること
  • A本件建物に使用された新建材等は一般的なものであり、特に特殊な材料は使用されていなかったと認められること
  • B化学物質過敏症は一旦発症すれば極めて微量の化学物質でも反応するものであり、そうすると、その発症を完全に押さえるためには化学物質を含み新建材等をほとんどないし全くしようせずに建物を建築するほかないことになるが、一般の賃貸アパート等においてそのような方法を採ることは経済的見地からも極めて困難であり、現実的ではなかったと考えられること
  • Cアパートの家主は施工業者は、入居者から本件建物の臭気について指摘を受けた際、換気に注意するよう指示したり、空気清浄機を設置するなど一般的な対応はしていること
  • D化学物質過敏症の発症は各人の体質等にも関係し、必ずしも全ての人が同一環境において必然的に発症する性質のものではないこと
などの認定事実から、本件アパート建築当時、家主や施工業者は、化学物質過敏症の発症を予見し、これに万全の対応をすることは現実的には期待不可能であったと認められ、この点につき家主には過失はなかったと判断されて、アパート入居者から家主への損害賠償の請求は棄却されました。
 ただ、この判決は、平成5年6月ころの時点においてシックハウス症候群が予見できなかったというもので、現在の時点でもこのような判断がなされるかは、今後の裁判例がでてこないと何とも言えません。

7 シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い
1,シックハウス症候群とは、室内の空気の汚染によって発症する体調の変調ということができます。 シックハウス症候群は、屋外へ出ることによって体調が良くなるものですが、この点が次に述べる化学物質過敏症と違うところです。 体調の変調の内容は、WHO(世界保健機構)の診断基準では、
  • @目・鼻・のどの刺激症状、粘膜の乾燥感
  • A皮膚の紅斑、かゆみ
  • B疲れやすさ、頭痛、精神的疲労、集中力の低下、めまい、吐き気
  • C嗅覚・味覚の異常
  • D過敏性の反応(分泌亢進など)
があげられています。

2,化学物質過敏症とは「過去にかなり大量の有害化学物質の曝露を経験して、急性中毒症状が現れた後に、あるいは、有害化学物質を微量ではあるが、長期間に渡って継続的に曝露を受けてきた場合、次の機会に非常に微量の同じ仲間の有害化学物質の再曝露を受けた場合に認められる、多彩な症状を呈する疾患」と定義されています。
 これは以前に、大量に有害化学物質に触れたことがある人や、少量だが長期間にわたって化学物質を吸っていた人、例えば、除草剤、殺虫剤などに長期間触れてきた人に起こる症状です。

3,有害化学物質に適応できる人の能力には限界があり、化学物質総負荷量が個人の許容量の限界を超えると、一気にからだ全体に自律神経症状、中枢神経症状を中心とした不定愁訴が出現してくるのですが、有害化学物質の曝露の経験が少ない人の場合は、何の症状も出ないが、このような経験 のある人が、例えば新築建物などに入居したとき、そこの空気中のホルムアルデヒド、トルエン有機リン剤などの室内空気汚染物質と接触した後発症するということがあります。
 これは、その人の化学物質総負荷量が許容量の限界を超えたからと評価されます。
 このことから、ホルムアルデヒドのよ うな室内空気汚染物質が、基準値を大幅に超えていて発症する場合をシックハウス症候群、その基準値の2分の1とか5分の1、10分の1などの微量負荷でも症状が出る場合は、化学物質過敏症と言われているようです。

4,なお、化学物質過敏症の原因として、北里研究所病院・北里大学医学部により、次のような調査結果が公にされております。
5,シックハウス症候群や化学物質過敏症になる原因については、
  • @室内において有害な化学物質の発生量が増加したこと
  • A同一の品質で大量かつ調達が容易な化学物質を利用した新建材の使用や化学物質を利用した生活用品、例えば、ヘアスプレーや香水、スプレー式殺虫剤等、あるいは木製家具、それに工費の 節減、工期の短縮、施工精度の向上のためや、熟練労働者の不足の解決のための接着剤の使用などが増えたこと
  • B住宅の高気密、高断熱化によるエネルギー節減のため換気が十分行われないこと
  • C化学物質に反応しやすい人が増えたこと
があげられます。

6,室内空気の化学物質濃度の基準について、平成13年7月現在で厚生労働省が定めている揮発性有機化合物のガイドラインは、次の表の通りです。
  個別の揮発性有機化合物(VOC)の指針値
 揮発性有機化合物  毒性指標 室内濃度指針値※ 
 ホルムアルデヒド  ヒト曝露における鼻咽頭粘膜への刺激  100μg/m
(0.08ppm)
 トルエン  ヒト曝露における神経行動機能及び生殖発生への影響 260μg/m
(0.07ppm)
 
 キシレン  妊娠ラット曝露における出生児の中性神経系発達への影響  870μg/m
(0.20ppm)
 パラジクロロベンゼン  ビーグル犬曝露における肝臓及び腎臓等への影響  3800μg/m
(0.88ppm)
 エチルベンゼン  マウス及びラット曝露における肝臓及び腎臓への影響  3800μg/m
(0.88ppm)
 スチレン  ラット曝露における脳や肝臓への影響  220μg/m
(0.05ppm)
 クロルピリホス  母ラット曝露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 1μg/m(0.07ppb)
ただし小児の場合は0.1μg/m(0.007ppb)
 フタル酸ジ−n−ブチル  母ラット曝露における新生児の生殖器の構造異常等の影響  220μg/m
(0.02ppm)
 テトラデカン  ラットにおける経口曝露知見による肝臓への影響  330μg/m
(0.04ppm)
 フタル酸ジ−2−エチルヘキシル  雄ラットの経口投与による精巣への影響  120μg/m
(7.6ppb)
 ダイアジノン  ラットの吸入曝露毒性に関する知見による血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響  0.29μg/m
(0.02ppb)
 ノナナール   ラットへの経口曝露による毒性学的影響  41μg/m
(7.0ppb)

※両単位の換算は、25℃の場合による。
  一般住宅や一般の執務環境の空気濃度は、この厚生省のガイドライン値以下になっている必要があるとされています。
  なお、化学物質の中で一番有名なのがホルムアルデヒドですが、ホルムアルデヒドは、刺激臭のある無色の気体で、水によく溶けます。
 37%の水溶液は、ホルマリンと呼ばれ、殺菌・防腐剤として使われます。ホルムアルデヒドの刺激臭の閾値(においを感じる濃度)は、500〜1000ppbですが、においの閾値以下でも慢性曝露により化学物質過敏症を引き起こす可能性が指摘されています。室内濃度の指針値は、30分平均値で80ppbです。接着剤としてよく使われております。

7,室内の空気汚染物質の濃度を下げる方法としては、
  • @ 汚染発生源を除去・隔離する方法
  • A 発生源を無害化あるいは発生を抑制する方法、一方法として、「ベークアウト」と呼ばれる方法がありますが、これは建材などからの化学物質の発生量は室温(正確には建材の温度)が高いと多くなるという性質を利用して、入居する前に意図的に室内の温度を上げ、いわば「晒した」状態にして、できるだけ多くの化学物質を発生させれば、入居時における発生量を低減できるという考え方です。
  • B 空気清浄機などによる汚染物質除去法
     空気清浄機は煙草の煙や埃のような粒子状物質の除去には効果がありますが、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンといったようなが素性の汚染物質の除去には効果がみられないことが多いようです。
  • C 換気による方法
           最も効果的な方法とされております。

8 マンションと日照権
 住居の南にマンションが建てられ、それまで享受していた日照が得られなくなったとき、マンション建築の差し止めや損害賠償の請求が問題になることがありますが、建築がなされたマンションの一部の撤去と、マンションの完成から撤去までの間、1ヶ月3万円の損害賠償を認めた裁判例(広島高等裁判所岡山支部平成13年12月17日判決)が出ましたので、これを紹介します。
 事案は、第二種住居専用地域(建築後都市計画法の改正により第一種中高層住居専用地域)に指定された土地で3階建ての学生マンションを建築した施主と建築業者に対し、平屋建ての住居に住む北隣の住民からの請求で、建物の一部(3階建て外階段の庇部分と3階の廊下の上の庇部分)の撤去と、損害賠償として、日照が不可欠である半年の期間を中心に、日照阻害や圧迫感の程度を考慮し、暖房費、光熱費等の経済的負担増や精神的苦痛に基づく損害を均霑化して、1ヶ月につき3万円の損害賠償が認められた事案です。
 被害を受ける北隣の住民がすむ居宅は、平屋ですが、裁判所は、それを基準に日照の保護をしたのではなく、平屋建てが2階建てに改築され、さらにサンルーフの設置等によって、地盤面から4メートル以上の高さで、日照を確保することを基準に考えております。
 損害賠償の考え方が、一時金の支払いではなく、マンション完成から判決で命じた撤去の日まで、月3万円の支払を命ずるものである点で従来の裁判所の考えとは違ったものになっております。
 この金額は、判決言い渡し時点で、すでに300万円に達しており、撤去が遅れれば1ヶ月3万円づつ損害賠償額が増えていくことになるものですから、高額の金額と言えます。

建設


1 勧告制度
 私は建設業を営む者ですが、元請会社から工事を請け負った下請会社の孫請けをしていましたところ、下請会社が倒産したため、工事代金の支払いを受けることができなくなりました。
 建設業法では孫請会社から元請会社に対し直接請負代金の支払いを請求することができるような制度もあると聞きましたが、そのような制度があるのですか。

 建設業法では、孫請から直接元請会社へ工事代金を請求することを認めた規定はありませんが、建設業法41条の2項で、倒産した下請業者の従業員に対する賃金の支払いが遅滞している場合で、必要があると認められる時は、建設大臣または都道府県知事は、元請会社に対して右支払いを遅滞した賃金のうち、当該建設工事における労働の対価として適正と認められる賃金相当額を立替払いすることを勧告することができる旨の規定を設け、さらに同条3項で、倒産した下請業者と取引関係がある孫請け会社などに損害を加えた場合において必要があると認める時は、立替払いをすることを勧告することができる。
 という規定をおいております。
 従って、あなたの場合は建設業法41条3項により必要性が認められると立替払いの勧告をしてもらうことができますが、これは勧告であって支払いを命ずるものではありません。
 元請会社は、建設大臣または県知事から勧告を受けても支払わなければならないという義務が生ずるものではないのです。
 従いまして、この勧告の制度は、元請会社に対する請求権を認めたものではないばかりか、岡山県の場合、業者間の話合解決をすすめますが、これまでに勧告制度を発動した事例はありません(2000年11月28日現在)。
  なお、建設大臣が勧告する場合とは、元請会社が二つ以上の都道府県の区域内に営業所を設ける場合、県知事の勧告というのは、元請会社が一つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けている場合です

解除


1 建築請負契約の注文者都合による解除
 私はある工務店と建築請負契約を結んでいる者ですが、私の都合で取りやめたいと思います。
 できるでしょうか。
 また、その場合どのような義務が私にあるでしょうか。

 損害賠償をすることで、自由に解除することが出来ます。
民法641条は、「請負人カ仕事ヲ完成セサル間ハ注文者ハ何時ニテモ損害ヲ賠償シテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得」と定めております。ですから、あなたはいつでも請負契約をあなたの都合で解除(条文上は解除と規定されていますが、法律的には解約の告知であり、将来に向かってのみ効力を生ずるものです。)できます。ただ、これをしますとあなたは、請負人に対し損害を賠償する義務が生じます。 そこで、どのようなものを損害賠償として支払わなければならないかが問題になりますが、一般には、解除された請負人に支払うべき損害賠償は、 (1)請負人が解除までに支出した費用と
(2)契約が解除されなければ得られたであろう請負人の利益の合計額になるとされています。
 (1) の請負人が解除までに支出した費用は、
@完成部分の工事原価
A現場諸経費
等が考えられ、(2)の契約が解除されなければ得られたであろう請負人の利益は、粗利益ではなく純利益であるとされ、しかも、請負人が仕事の完成を免れたことによって、費用を節約することができたり、労働力を他に使用することによって利益を得たりした場合には、損益相殺よってこれらの利益が控除されるべきであるとされております。
 東京高裁昭和60年5月28日判決は、注文者の都合により解除された建築請負契約の粗利益が請負金額の約12%、純利益率が約5%であるとしてその純利益額を得べかりし利益の損失による損害と認定いたしました。
 ただ、この件では、注文者側の損益相殺の主張に対して、請負人が契約解除により以後その工事にかかる労務の提供を節約できその労働力を利用して何らかの利益を得たとの事実または、故意に利益を得ることを避けたとの事実は、本件全証拠によっても認められず、かえって請負人は、その工事完成により得べかりし利益に代わる利益を何ら得ていないとして、損益相殺の主張を退けております。
 しかし、他方、名古屋高裁昭和63年9月29日判決は、注文者が賠償すべき損害は請負人が支出した費用と得べかりし利益の合計額になるべきであるが、損益相殺の法理の適用を考慮し、請負人が既にした工事に照応する請負代金相当額をもって算定するのが公平に合致すると判示しております。
 出来高清算をすることで十分とするものです。この判決は、請負金額が300万円で、解除までの出来高が75%であったとして、300万円の75%である210万円を損害額と認めております。


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