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民事再生法講義 第1回

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<民事再生法講義 第1回



第1回講義 再建型倒産法(民事再生法・会社更生法)、再生手続の流れ、民事再生法上の問題点


  • 1,はじめに−受講生への注文と連絡事項
    (1) 教科書としては、民事法研究会発行『実務倒産法講義』を使うので、毎回予定された講義の範囲を、理解できる程度読み込んでおくこと。
     講義内容は、かなりのボリュームがあるので、解説を黒板に書くなどの時間はない。講義のスピードはかなり速いことを考え、予習は必ずしておくこと。
     講義は、解説を中心とするが、基本的な法律用語については適宜質問するので、言葉の正確な意味を調べ、理解しておくこと。

    (2) 第1回講義は、再建型倒産法と言われる民事再生法と会社更生法についてと、民事再生手続の流れを解説する。教科書で言えばP126〜133の範囲であるが、講義の内容はそれだけではないので、このレジメをよく読み、条文にもあたっておくこと。
     第2回目の講義は、教科書のP134〜170まで進むので、第1回の講義までに読んでおくこと。

    (3) なお、倒産法には、「再生・再建型倒産手続」と「整理・清算型倒産手続」があると説かれ、民事再生法、会社更生法が前者であり、破産法や会社法第9章の第2節510条以下の「特別清算」の規定が後者と言われている。

     ここで、倒産法という言葉が使われているが、実定法上倒産法という法律はない。
     倒産法は、倒産に関する法律を包括的に説明するための便宜上の用語であり、講学上の用語である。受験生は、講学上の用語でも一般に認知されていない用語の場合もあるので、一般に認知された講学上の用語以外は、実定法にない用語はできるだけ使わない方がよい。また、民事再生法の条文にある言葉は、このレジメで「」をつけているので、注意して読むこと。法文を正確に知る、ということは大切である。例えば、再生計画では再生債権は10年内に支払わないとならないことは一般によく理解されているが、ではいつからか、と聞かれると即答できない者もいる。正解は「再生計画認可の決定の確定から」(155)である。法文を正確に覚えるということは、想像以上に法律の正しい知識を知ることにつながるのである。

     (4) また、倒産法には、(倒産)実体法規と(倒産)手続法規がある、等と解説されるときの「実体法規」や「手続法規」とはなにか?また、先程書いた、「実定法」とは何か?これらの用語の意味を正確に言えるようにしておく。
       *司法試験を目指す者は、法律概念を正確に把握し、定義を教科書に書いてあるとおりに言えることが求められる。
  • 2,再建型倒産法について
     再建型倒産法と言われる法律には、会社更生法と民事再生法がある。
    (1) 教科書では、会社更生法は民事再生法の特別法と書かれている。たしかに現行の会社更生法は平成15.4.1施行で、民事再生法の平成12.4.1施行より後だが、旧会社更生法は昭和27年に公布された法律で、会社更生法が言わば先輩に当たる。
     民事再生法が一般法と言われ、会社更生法が特別法と言われる所以は、倒産手続における優先順位にある。倒産手続は、再建型が清算型に優先し、各型では、特別法が一般法に優先するので、倒産4法での優先順位は、会社更生法、民事再生法、特別清算規定、破産法の順位になる。これはある倒産手続が開始されても、同じ債務者について他の倒産手続が申立てられた場合、上記優先順位で手続が進められる形で現われる。この原則を知っていれば、再生の申立があった場合すでに他の倒産手続が開始されていたときはどうするか等の問題に対し、正確な回答をすることができる。

    (2) 会社更生法は、「当該株式会社の事業の維持更生を図ること」を、民事再生法は、「当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ること」を目的とする。
     会社更生法の場合、それが適用される債務者は株式会社に限定されるので、その目的も「当該株式会社の事業の維持更生を図ること」になり、民事再生法の場合、それが適用される債務者には特別の制限はない(例外としては、個人債務者のみに認められる小規模個人再生(221以下)・給与所得者等再生(239以下)がある。)ので、「当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ること」が目的になる。規定上の細かな違いはあるが、目的は更生・再生という点で同じ内容である。そしてこれらの更生や再生は、「その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し」(再1)た上でなされることになる。債務者を再生させるためには、債権者が債権の一部を放棄する等の犠牲を払わされることになるため、債権者の多数の同意がなければ再生は認められないこと、また「当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し」た結果債権者に債権の放棄という法律効果を発生させるには「裁判所の認可を受けた再生計画」が必要であることを宣言しているのである。
     無論これらの倒産手続を主導するのは裁判所である。その理由は?

    (3) 民事再生法と会社更生法の違いは、
    @ 民事再生法が、債務者が引き続き事業を継続し、あるいあは生活するという自己管理型を基本型としているのに対し、会社更生法は、すべての事件で更生管財人(法文上は「管財人」)がつく第三者である管財人管理型である。民事再生法がDIP型再建手続を基本とすると言われるDIPとは、Debtor In Possessionの略で、占有する債務者の意味である。民事再生法はDIP型、会社更生法は管理型とも言われる。
    A その他にも、民事再生法は、担保権者が再生手続中でも担保権を実行して競売の申立などができたり、租税債権も再生手続の制約を受けない等脆弱な面があるのに対し、会社更生法では、担保権も租税債権も手続内にとりこまれ、権利の行使が制限されることになる。無論、民事再生法は、担保権者が担保権を実行することで再生ができなくなることを避けるため、その対抗策として、担保権実行手続中止の命令の制度(31)や、再生債務者等に担保権消滅請求権を認めてはいる。
     しかし、前者の場合は一時的なものであり、後者の場合、再生債務者等は、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付しなければならないという制約もある(148)。
     一般的に言われることであるが、民事再生法では債務者はそのまま同一人、同一会社だが、会社更生法では、組織変更が大胆にでき、新たな資本の注入よる株主や経営者の大胆な変更があるのが原則で、債務者その者が実質的には別会社になる、と考えると分かりやすい。 
    B その意味で、会社更生法では、株式会社の株主や経営者にとっては、事実上、その株式会社の経営から排除されてしまうので、厳しい法律であると言えるが、その株式会社の取引先や従業員あるいは経済界にとっては、その株式会社が持つ生産設備、ノウハウ、取引先網、社内組織などを生かす優れた法律と言いうる。
    C また、民事再生法では、民事再生能力(再生債務者になりうる能力・資格のこと)に制限はなく、株式会社でも公益法人でも個人、権利能力なき社団等でも対象になり、また、外国人又は外国法人も、再生手続に関し、日本人又は日本法人と同一の地位を有し、民事再生法の適用を受けうるので、だれでも民事再生手続を利用できる便利な法律と言える。それだけに、民事再生手続を利用した債務者の失敗例も後を絶たない。
    D 民事再生法は誰でも利用できるが、通常の民事再生手続はある程度以上の資産や年商規模の事業者でなければ利用しがたく、そのため、民事再生法は、小規模な個人の事業者や給与所得者のため、小規模個人再生手続や、給与所得者等再生手続を設け、さらにこれらの手続を利用する場合、住宅資金貸付債権に関する特則を設けて利用できるようにしている。
  • 3,民事再生法上の問題点
    (1) 弁済原資の確保
    @ 債務者の経済的窮境
     民事再生法では、債務者に「@破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがある場合、A弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合」のいずれかがあるときは、再生手続が開始される。ここで、破産手続開始の原因とは、「債務者が支払不能にあるとき。ただし、債務者が法人である場合は、支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」(破15.16)。要は、債務者に、@支払不能や債務超過のおそれがある状態やA弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある状態にある場合の、民事再生手続の開始を求めるということになる。これが民事再生法1条で言う、「経済的に窮境にある」になる。
    A 清算価値保障原則と再生の手法
     債務者がいくら窮境にあるからといって、債権者へ1円も支払わないわけにはいかない。会社更生法にも、民事再生法にも、債権者への弁済は、債務者に破産手続が開始になった場合に予想される配当より不利であってはならないという清算価値保障原則があるので、再生債務者等は、破産より有利な弁済計画をたてなければならない。通常、配当原資は、@将来の収益によるもの、A一部は遊休資産の売却、残債務は将来の収益によるもの、B事業そのものを譲渡してしまい、その代価を弁済に充てる(スポンサーの支援の場合等)場合、が考えられるが、最も多いのは、@の収益弁済である。しかし、収益弁済方法では、弁済原資の確保が難しく、再生に失敗する企業が後を絶たない。

    (2) 免除益問題
      再生債務者が債権者より債務の一部免除を受けて再生を図ろうとすると、債務の免除は欠かせない。債務の免除を受けると企業に免除益が発生する。これを解消しないと多額の法人税が課せられ、再生は不可能になる。免除益を消す方法は、@繰越欠損金によるもの、A財産評定により資産の評価をし直し、評価損を出して、免除益と通算すること、B評価損の対象にならない債権をサービサー等に譲渡して譲渡損を出し、通算することであるが、それでも免除益が消せない場合は、自力再生はあきらめて、事業譲渡をし事業だけでも残すことにしなければならない。事業譲渡の対価はすべて債権者への配当にあてられ、再生債務者には残らないがやむを得ない。

    (3) 別除権問題
     別除権とは、再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権で、特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権その他がある(53@)。別除権者は、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、再生債権者として、その権利を行うことができる(88)が、別除権は、再生手続によらないで、行使することができる(53B)ため、別除権者は、再生債務者等の意思に反しても、再生手続中であっても、競売の申立等担保権を実行することができる。再生債務者等はそれをされると再生が不可能になってしまう。民事再生法は、担保権の実行手続の中止を命ずることができる規定(31)を定めるが、中止期間は一時的なものでしかない。また、担保消滅請求の制度もあるが、再生債務者等には、担保権消滅の対価たる資金が常に準備できるものでもなく、なかなか難しい問題がある。
     実務では、再生債務者等は別除権者と話し合いをし、別除権によって担保された債権は利息を付けて分割払いをしその支払が続けられる間は別除権者は競売の申立をしないという内容の契約(「別除権協定」と呼ばれる。)を結ぶ等の努力をしているが、別除権によって担保された債権の額を決めるに当たっては、別除権の対象になっている不動産の値上がりが見込まれる場合は難しい問題が生じてくることが予想される。
  • 4,用語の意味(例)
    実定法
    国家機関による制定行為や慣習、判例といった経験的事実に基づいて成立した法すなわち人間の行為によってつくり出された法のこと、と説明されているが、主として成文法を言う。
    実体法規
    権利義務の発生、変更、消滅の要件等の律関係について規律する法の規定。民法、商法、刑法等がこれに当たる。
    手続法規
    権利、義務等の実現のために執るべき手続や方法を規律する法の規定。技術的・手段的性格の規定が多く、民事訴訟法や民事再生法等に多い。
    手続
    一般に、事を行う順序、方法をいうが、法令上は、一定の目的の実現に向けられる複数の行為の体系的な連続をいう。
     平成13年9月14日、マイカルが1兆7000億円を超える負債を抱えて、民事再生の申立をした。
     マイカルでは四方社長が会社更生法適用申請を準備していたが、この日就任した山下新社長は、会社更生の申立では再建に2年も3年もかかるが、民事再生では半年で終わると考え、民事再生の申立をしたということである。この民事再生の申立は主力取引金融機関の意向に反したものであったため、平成13年9月28日、マイカルの山下社長は民事再生法を選択した責任をとって辞任し、申立代理人の弁護士も代理人を辞任した。その後の新経営陣は会社更生法を選択したが、民事再生法を選択しないで、会社更生法を選択した理由は何か?
    追加資料

    私的整理
    法的整理
    法的手続を利用した私的整理
    再建か解体か?

    倒産処理に関する法律
    再建型倒産法
     一般法 民事再生法 特別法 会社更生法
    倒産処理法
     一般法 破産法    特別法 特別清算規定

    民事再生法 
     和議法に代る、再建型倒産処理の一般法 H12.4.1施行
    和議法との違い
     手続開始原因を緩和
     再建計画提出期限の緩和
     取下げの制限 
     担保権実行に対する制約(競売手続中止命令・担保権消滅請求)
     管理命令の発動可能
     株主の責任追及(再生計画による減資)や取締役等の責任追及(損害賠償の査定) 再生計画の履行確保(監督委員の監督・再生計画に債務名義性)
    会社更生法との違い
     担保権の手続内への取り込みができない(別除権)。
     社債の発行、資本構成の変更、合併・会社分割・株式交換等は会社法上の手続を要す。
     しかし、株式会社の事業譲渡、減資、定款変更は株主総会の決議によらず、裁判所の許可や再生計画の定めで可能、再生計画で第三者への増資が可能になる(16 改正)、社債権者の議決権が制限(17改正)。
     迅速・簡易(申立から認可まで4〜6ヶ月)
     
    民事再生法における再生手続の多様性
     DIP型、後見型(監督委員)、管理型(管財人)。実務は、ほとんどが後見型

    再建手続の選択
    私的整理
     中小企業
     大企業 私的整理ガイドラインに基づく整理
     メリット 柔軟、廉価、迅速、秘密裏、
     方法   会社分割、デット・エクイティ・スワップ(DES)、債権譲渡と特別清算の組み合わせ
     デメリット 不透明性、信頼性・公平性を欠く、不公平な阿知会を受けた債権者に対する否認権行使等の是正措置を欠く、責任追及の制度を欠く、税務処理上の問題点 債権者内部での株主代表訴訟の危険性、一部の反対者による混乱や暴力団の関与
    特定調停

    民事再生法
    メリット
    旧経営陣が会社に残れる。
    簡易な事業譲渡手続に担保権消滅請求制度を併用することで、短期にM&Aが実
     現できる。
     簡易・迅速(前述「和議法との違い参照)
    デメリット
    組織変更、資本構成の変更、経営者への責任追及、経営への信頼確保に難点

    民事再生法の利用
    • プレパッケージ型手続 スポンサーを事前に選定して民事再生等を申立てる場合。この場合、申立前のスポンサー会社との支援契約は、手続開始後、双方未履行の双務契約になる(49@)ので、再生債務者の公平誠実義務(38A)や監督委員の善管注意義務(60@)と衝突した場合の問題
      ファイナンシャル・アドバイザーの役割も重要
    • 株主総会の特別決議を要する事業譲渡が困難なための、民事再生法の利用
    • 清算のための民事再生法の利用(これは会社更生法より時間的に有利)
      民事再生法による再建の問題
      事業継続の場合、商取引債権を保護するための配慮や方策をどうするか?

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