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民事再生法講義 第4回

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<民事再生法講義 第4回

第4回講義 手続機関と再生債権について


第一 手続機関
  一 監督委員

 民事再生法上の機関には、裁判所の外に、監督委員、管財人、保全管理人、調査委員、債権者集会、債権者委員会、代理委員がある。この中で、もっとも活用されているのが監督委員である。

1, 選任
   裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員による監督を命ずる処分をすることができる(54@)。「監督委員による監督を命ずる処分」が監督命令であるが、裁判所は監督命令をする場合には、当該監督命令において、一人又は数人の監督委員を選任し、かつ、その同意を得なければ再生債務者がすることができない行為を指定しなければならない(54A)。監督委員は常に選任されるわけではなく、任意的な機関であるが、ほとんどの事件で、裁判所の職権により監督委員が選任されている。実務上は、原則として、倒産手続に経験を有する弁護士の中から1名選任されている。

2, 監督委員の職務
 監督委員は、裁判所の監督に服し(57@)、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない、いわゆる善管注意義務がある(60@)が、裁判所から独立した地位にある。
 監督委員の職務は、
  • ア 再生債務者の行為に対する裁判所の許可に代る同意(54A)再生債務者等からの報告の受理と再生債務者の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項の裁判所への報告(125B)
  • イ 裁判所の共益債権化の許可に変わる承認(120A)とその報告(規55)
  • ウ 裁判所の命ずる調査、エ否認権の行使(56)
  • エ 再生計画の履行の監督(186A)
  • オ その他(規49@、法187@、193@、194,188A)
がある。

  •  ア 要同意事項
     再生債務者の要同意事項の範囲につき議論がある。
     要同意事項の範囲として、再生債務者のする認否書の作成や提出、再生計画案の作成及び提出のような再生手続上の行為が要同意事項の対象として含まれるかどうかという問題が提起されている。
     一般には、再生手続上の行為が要同意事項の対象とすることは否定されており、実務上もこれらの行為を要同意事項とはしていない。なお、監督委員は、中立的な立場で再生債務者を監督すべきである見地から、計画の立案及び実行の補助という役割を担わせるのは、債権者に対して、債務者サイドの機関との印象を与え、相当でないとする見解もある。このように再生手続上の行為が要同意事項の対象となることは否定的だが、一方で、現実には再生債務者において立案能力に欠ける場合や、再生債務者自身の立案では債権者が納得しない場合なども少なくはないであろうから、監督委員は計画の立案及び実行を補助する権限と責務を有すると解すべきであるとの見解もある。裁判所が再生手続上の行為を要同意事項の対象とした場合は、監督委員はその補助を行うことができると解される。監督委員は再生計画の遂行を監督する義務があるから(186A)、実行の補助もこれに含められるものと解する立場もある。
     監督委員の要同意事項が、法定列挙されてはなく、裁判所が裁量で決定しうるものとされているのは、民事再生法が自然人から上場企業までの広範な層を対象としているところから、具体的に法定列挙することは技術的に困難であったということであろうと思われる。また、監督委員の同意を得ずに行った行為は、その無効を善意の第三者に対抗できないため、少なくともこの限度で取引の相手方は保護される(54C但書)。ただ、監督命令が出された場合は、命令があった旨は公告される(55@)し、取引の相手方としては、事件関係文書の閲覧(17)や、法人登記(11B、要同意事項も登記される)を通じて具体的な指定行為の内容を知ることができる。
    再生債務者が監督委員の同意を求める旨の申請及び監督委員の同意は、書面でしなければならないことになっている。再生債務者は、監督委員の同意を得たときは、遅滞なく、その旨を裁判所に報告しなければならない(規21)。また、監督委員は、裁判所の許可に変わる承認をしたときは、遅滞なく、その旨を裁判所に報告しなければならない(規55)。
     その他、裁判所は、監督委員が再生債務者の業務及び財産の管理の監督を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、監督委員を解任することができる。この場合においては、その監督委員を審尋しなければならない、などの細かな規定も規則上にある。

     同意権の行使期間
     監督命令の内容による。監督命令で定めがないときは、命令の存続する限り再生計画認可決定後も存続するが、東京地裁は、監督命令で「ただし、再生計画認可決定があった後はこの限りではない。」としているので、再生計画認可決定後は監督委員の同意は不要になる。なお、大阪地裁は、再生計画認可決定後は、@重要な財産の処分および譲受け、A多額の借財についてのみ監督委員の同意を要するとし、また、再生手続廃止または再生計画不認可決定後は、再生計画認可決定前の要同意事項に加え、債権の取り立て行為も要同意事項としている。
  • イ 裁判所の命ずる事項の調査・報告
     再生債務者等は、再生手続開始後(管財人については、その就職の後)遅滞なく、次の事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならない(125)。
    ・ 再生手続開始に至った事情
    ・ 再生債務者の業務及び財産に関する経過及び現状
    ・ 法人の役員の財産に対する保全処分又は法人の役員に対する損害賠償請求権の査定の裁判を必要とする事情の有無
    ・ その他再生手続に関し必要な事項
    ・ 裁判所の定めるところにより、再生債務者の業務及び財産の管理状況その他裁判所の命ずる事項
     この点、監督委員も報告義務がある(125B)が、実務上は、業務と財産の管理状況の報告は、再生計画認可前は再生債務者に命じられている(125A)。実際に監督委員に命じられる報告事項は、
    • @申立後開始決定までに廃止事由があるかどうか、
    • A再生計画認可前に再生債務者が提出した再生計画案に不認可事由があるかどうか(174A)、
    • B再生計画認可後は、再生債務者の再生計画の遂行状況の調査、
    • C再生手続開始後、廃止事由があるかどうかの調査(191)である。そのため、監督委員には、物件の検査の権限がある(59)。調査の対象者が、報告を拒んだ場合罰則の対象となる(258)。
  • ウ 否認権の行使
     再生債務者に否認権を行使すべき事由(127など)があるときは、裁判所は、監督委員に個別の否認対象ごとに否認権行使権限を付与することができる(56@)。この場合、監督委員は、一定の財産の管理処分権限を取得する(56A)。再生債務者には否認権は与えられていない。
  • エ 再生計画の履行監督委員
     再生委員は、認可決定が確定したときは、再生計画の遂行の監督をする(186A)。
  • オ その他
     監督委員は、再生計画変更の申立権(187@)、終結決定の申立権(188A)、手続廃止の申立権(193@、194)等も有している。その他に、再生債務者と進行につき協議をする責務もある(規23の2)。
 再生債務者の監督委員への報告事項
     大阪地裁の例
     @ 従業員の給与改定および賞与等の一時金の支給
     A 従業員の解雇ならびに退職金および解雇予告手当等の一時金の支給
     B 再生債務者の会社組織変更に関する行為
     C 監督委員の同意を要する行為と指定された行為のうち常務行為との理由で同意が不要になったもの
     D 監督委員から報告を求められた事項

 なお、監督委員は平成16年改正法で、再生債務者だけでなくその子会社・孫会社の業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査する権限が付与された(59BC)。再生債務者代理人へも報告を求める権限がある。
 監督委員が調査できる対象は法54にあるとおり、
     ア 再生債務者、
     イ 再生債務者の代理人、
     ウ 再生債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人およびこれらに準ずる者、
     エ 再生債務者の従業者、
     オ イないしエであった者、
     カ 再生債務者の子会社、
     キ 再生債務者が大会社である場合の連結子会社
となる。


 二 調査委員
    裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関人の申立てにより又は職権で、調査委員による調査を命ずる処分をすることができる(62)ことになっている。調査委員は、任意的な機関である。調査委員に対する裁判所の監督、調査委員の調査権、注意義務、報酬などは、監督委員に関する規定が準用されている。実務上はあまり例がないようである。

三 管財人
 管財人は、裁判所の管理命令によって選任される。選任された管財人は、再生債務者の業務の遂行、財産の管理処分権を有する。これは、会社更生法における更正管財人と同じような立場である。民事再生法はDIP型の再建手続を原則とするので、管理命令が発令されるのは例外をなし、管理命令を発令する意味は、不適格な経営者を排除するという点もあるが、また別に、民事再生の適用を受ける再生債務者が株式会社に限られていない関係で、例えば、医療法人や学校法人が破綻した際に、民事再生を会社更生の代替手段と考え、管財人の手で本格的再建をはかることもできる意味合いもある。また、この規定は、民事再生が常に現経営者の経営権を守るというものではなく、経営者のモラル・ハザードがある場合は、経営者が排除されるということを宣言する意味もある。
 法人は、管財人になるができる(監督委員の規定を準用。78、54B)。信託会社、銀行その他の法人が考えられる。また、監督委員同様、管財人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができ、管財人は、その選任後、再生債務者に対する債権又は再生債務者の株式その他の再生債務者に対する出資による持分を譲り受け、又は譲り渡すには、裁判所の許可を得なければならず、許可を得ないでこれらの行為をしたときは、費用及び報酬の支払を受けることができない(78.61)。

    裁判所は、再生債務者(法人である場合に限る。)の財産の管理又は処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の再生のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続の開始の決定と同時に又はその決定後、再生債務者の業務及び財産に関し、管財人による管理を命ずる処分をすることができる(64)。管財人が選任されるのは、法人債務者についてのみの制度とされている。管財人も任意的な機関であるが、選任例は少ないようである(64@)。
 その権限は、事業遂行、財産管理を専属することにある。管財人が選任されるのが債務者が法人の場合に限られる理由は、個人の場合は、個人に帰属する財産、収入と事業活動に関する財産、収入の区別が難しく、管理型になじみがたいこと、個人の場合は事業規模が小さいこと等が挙げられている。法人格のない社団や、財団の場合は、管理命令の対象とはならないと解されている。

    管理命令は、再生債務者の管理処分が失当であるときなど、特別の必要があるときに限って認められる。現経営陣の不適格性が積極的に認められる場合であることが必要と思われる。不適格経営者の排除なくしては事業の再生ができないというような状況が考えられるが、会社更生法67条3項では、更正管財人の選任基準として、役員等責任査定決定を受けるおそれがない取締役を管財人に選任することができる道を開いているが、民事再生法でもこの趣旨は活かされて良いと考えられる。また、民事再生法での管財人も会社更生法と同様、弁護士を法律管財人に、スポンサー予定企業から事業管財人を選ぶことがあっても良いが、なお、管財人に関しては、調査委員と違い(規則26@)、利害関係のないことは必ずしも要求されていない。利害関係を抜きには、事業管財人が手当できないこともあると思われる。
 管理命令の発令は、利害関係人の申立または職権でなされる。発令の時期は、再生手続開始決定と同時にまたはその決定後ということになっている。最初から管財人による再生手続開始を試みる場合もあろうが、通常は、DIP方式でスタートした後、再生債務者の経営の不適格性が判明し、監督委員等の申立によって後発的に管理命令の発令がなされる場合が多いと思われる。管理命令の発令に際しては、再生債務者の審尋がなされる(64)。再生債務者にとって、管理処分権の喪失、経営権の剥奪という重大な結果を意味するものであるから、債務者の手続保障の面からも、当然必要なことである。

 管理命令の発令に対しては、即時抗告ができるが、執行停止の効力はない。
 管財人は、就職の後、直ちに再生債務者の業務及び財産の管理に着手しなければならない(72)。
 管財人は、DIP方式の再生債務者と同等の存在であるから、再生債権の調査、財産の評定、再生計画の立案・遂行などを行うのは当然である。また、否認権行使権限(135)、法人の役員の責任追及権限(142)、担保権消滅許可の申立権限(148以下)をも有している。この中で、否認権や役員の責任追及に関しては、機関としての第三者性が明確な管財人において、積極的な行使が期待される。
 管財人の任務は、再生計画の遂行またはそれが確実になるまで続く(188B)。その間、管財人は再生裁判所の監督に服し(78、57)、善管注意義務を負う(78、60@)。裁判所からは独立した第三者機関である点、監督委員と同じである。 裁判所が監督命令を発した場合、裁判所が監督するため、要許可事項を指定する(41)のが通常である。管財人が選任されると、管財人が財産の処分、管理権限を有し、当事者適格を有することになるから、再生債務者の財産関係の訴えは管財人が当事者となる(67@)。この結果、訴訟の中断と管財人による受継がなされるが、これについては別の機会で解説する。
 管理命令後の効力として、再生債務者が管理命令を無視し、財産に関してした法律行為は、再生手続との関係でその効力を主張できないとされているが、善意の相手方は保護される(76@)。なお、管理命令の公告が効力を生ずる前であれば、相手方の善意が推定され、効力発生後は悪意が推定される(76C)。管理命令が発令された場合の否認権の行使は、管財人が行う。
 株式会社の組織上の権限については、裁判所の許可を受けて行う営業譲渡(42)、再生計画に基づいて行う株式の併合、資本金額の減少、発行株式の総数に関する定款の定めの変更(154B、161、166)だけであり、これ以外には組織に関する権限を有しない。

四 保全管理人
 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債務者(法人である場合に限る。)の財産の管理又は処分が失当であるとき、その他再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、再生債務者の業務及び財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる(79)。これも任意的機関である。
 DIP型再建手続である民事再生法でこれが利用されることは余りないと思われるが、民事再生手続の中で、破産法91Aの保全管理人の選任が有効に活用されたケースがある。すなわち、再生手続開始申立があったが、棄却事由がある場合、棄却をしても棄却決定が確定しないと破産手続開始決定ができない(250@)。この間に、再生債務者が財産の隠匿をしないとも限らない。その場合に備えて、再生手続申立を棄却するのと同時に破産法91Aの保全管理命令を発令してもらい、保全管理人が再生債務者の財産を管理するのである。私の場合、再生手続申立後、監督委員をつとめていたが、再生債務者に棄却事由があり、再生債務者に棄却を予見させては財産の隠匿がなされる恐れがあったので、裁判所に棄却決定をしてもらい、同決定書を申立代理人に交付するのと同時に保全管理人命令を発令してもらい、間髪を入れず、財産の管理に着手したおかげで、再生債務者が営業をしている中で金庫を開け、2000万円以上を占有下においた経験をした。

五 債権者集会
 債権者集会も任意的な機関である。現在は、破産の場合も、会社更生の場合も債権者集会(会社更生の場合は関係人集会)は全て任意的機関とされている。債権者集会が開かれるのは、114の場合である。また、財産状況報告集会(126)と再生計画案の決議のための債権者集会(169A)である。ただ、財産状況報告集会は、すでに述べたように、再生債務者による債権者説明会が開催されるのが通常であるところから、ほとんどの事案で開かれていない。再生計画案の決議のための債権者集会は、付議決定がされる際に、議決権行使の方法の1つとして定められているものである(169A)。実務上は、開催されることが多い。


六 債権者委員会
 これも任意的な機関である(117.52)。手続関与を承認された債権者委員会は、裁判所から必要に応じて意見を求められ(117A)、意見を述べることができ(117B、118A)、再生債務者等から報告を受け営業譲渡に関する意見を述べる権限が与えられるほか、再生債務者等に対する財産状況の報告命令の申立権や(118の3@)、債権者集会の招集申立権(114)、再生計画履行確保のための監督権(154A)が与えられているが、実務上、このような債権者委員会が認められる例はほとんどない。

 七 代理委員
 代理委員は、これを選任した再生債権者のために、再生手続に属する一切の行為をすることができる者である(90B)。再生債権者は、裁判所の許可を得て、共同して又は各別に、一人又は数人の代理委員を選任することができる(90)@。利害を共通にする再生債権者間で、その意見を手続に反映させる目的を持つ。ゴルフ場経営会社の場合、金融機関、日常の取引業者、預託金債権者、リース債権者等の利害が対立した再生債権者グループごとに代理委員が選任されるというイメージである。なお、この代理委員は、債権者の利益のためもあるが、「裁判所は、再生手続の円滑な進行を図るために必要があると認めるときは、再生債権者に対し、相当の期間を定めて、代理委員の選任を勧告することができ」(90@)、また、「裁判所は、共同の利益を有する再生債権者が著しく多数である場合において、・・・代理委員の選任がなければ再生手続の進行に支障があると認めるときは、その者のために、相当と認める者を代理委員に選任することができる。」(90A)ことになっている。

八 裁判所
 裁判所は最も重要な機関である。比較法的には、行政機関が倒産手続に関与する法制もあるが、わが国では、裁判所が深く倒産手続に関与する制度がとられている。
 裁判所の関与は裁判によってなされる。再生手続に関する裁判は、通常の判決手続とは異なり、決定手続で行われ、口頭弁論はなく(任意的口頭弁論)裁判所は職権で必要な調査をすることができる再生手続開始決定または棄却決定、保全処分・他の手続の中止命令、包括的禁止命令、手続開始決定以後においても再生計画認可・不認可、手続の廃止、再生債権の査定、損害賠償請求権の査定などの裁判がある。再生手続に関する裁判は、決定の形式でおこなわれるから、その裁判は相当と認める方法で告知するのが原則となる(民訴119)が、民事再生法ではその裁判の内容の重要度に応じて、個別に裁判の告知方法が定められている。再生手続に関する裁判の告知方法は@送達と公告が要求されているもの(包括的禁止命令など)A送達をしなければならないもの(仮差押えなどの保全処分)B送達されるが公告で送達に代えることができるもの(強制執行などの中止命令など)C公告と通知を要するもの(再生手続開始決定など)D告知方法の規定がないもの(費用の予納決定など)がある。
 再生手続に関する裁判に対する不服申立方法は、即時抗告に限られるが、即時抗告を認める特別の規定がある場合に限って即時抗告ができることになっている(9)。ただし、裁判の中では、再生債権の査定の裁判や損害賠償請求権の査定の裁判などの不服申立として、通常の判決手続である異議の訴えが規定されているものがあり、その場合はそれによらなければならない。
即時抗告期間は、裁判の公告がなされている場合は、裁判の公告が官報に掲載された翌日から起算して2週間であり(9)、裁判の公告をしない場合は、裁判の送達または告知を受けた日の翌日から起算して、1週間である(18)(18,民訴)。この場合、送達に公告がなされた場合は、公告があった場合の即時抗告期間となる。即時抗告がなされた場合、常に抗告裁判所(高等裁判所)が審理しなければならないものではなく、原裁判所が即時抗告状を受理した後、再度の考案によって、公告に理由があると認められるときは、自ら更正することもできる(18、民訴333)。

第二 再生債権
1, 再生債権とは、再生手続開始後、再生計画によらなければ弁済を受けることができない債権を言う。再生手続開始によって、否、それ以前の再生手続開始の申立後になされる保全処分に行って、棚上げされ、その後、再生計画で減額や分割弁済を強いられる債権のことである。

2, 法84は、「再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。)は、再生債権」としている。原則として「再生手続開始前の原因に基づいて生じた」債権である。
 「再生手続開始前の原因に基づいて生じた債権」とは、債権が開始決定前に完全に生じている必要はなく、債権発生の要件のうち、主要なものが、開始前に備わればよいと解されている。 したがって、履行期未到来の債権、停止条件付債権、将来の債権(例えば全部義務者の事後求償権)も全て再生債権となる。
 不法行為に基づく損害賠償請求権も、発生原因である不法行為が開始決定前であれば、再生債権になるが、損害が顕在化されていない場合の扱いにつき、問題が指摘されている。
(注意)再生債務者が他人の財産を不法に占有している場合、手続開始前の不法占有に基づく損害賠償債権は手続開始前の原因に基づくものとして再生債権となるが、再生手続開始後も再生債務者等が不法占有を続けている場合は、これによる損害賠償債権は、「再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした・・行為によって生じた請求権」であるから、再生債権ではない。これは共益債権となる(119D)。

3, 例外ー再生手続開始後の原因に基づいて生じた債権で再生債権になるもの
    再生手続開始後の原因に基づいて生じた債権は再生債権にはならないが、例外として(84Aで)
   ・ 再生手続開始後の利息の請求権
   ・ 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
   ・ 再生手続参加の費用の請求権は再生債権とされている。
 この例外となる債権は、本来劣後的債権であるが、会社更生法のような組み分けによる手続をとるには煩雑すぎるので、民事再生法では再生債権として処遇している政策的なものである。ただし、このような債権は、一般の再生債権並みに優遇する必要はないので議決権はない(87A)。また、再生計画において、他の再生債権と異なる定めをすることも許されている(155@但書)。実務ではすべて免除の対象になっている。
 その他、再生手続開始後の原因に基づいて生じた債権で再生債権になるものは、
   ・ 為替手形の支払人などが再生債務者である振出人などび対する求償権(46)
   ・ 双方未履行の双務契約において再生債務者等解除を選択した場合の相手方の損害賠償請求権(49D、破54@)
   ・ 取引所の相場のある商品の売買契約に基づく損害賠償請求権(51、破58B.54  @)
   ・ 交互計算が封鎖されたことに基づく相手方の残額支払債権(51.破59)
   ・ 否認の相手方が反対給付について持つ価額償還請求権(132の2A2)
 などがある。

4, 開始前の原因に基づいて生じた債権でも、共益債権や一般優先債権もある。
 本来再生債権にすぎないものが政策的に共益債権に格上げされている場合もある。開始前の借入金債務などで、裁判所が共益債権とすることを許可したもの(120@)。保全管理人が権限に基づいてした資金の借入等の行為によって生じた請求権(120C)。開始決定前に選任された監督委員、調査委員及び保全管理人の報酬等である。詳しくは共益債権のところで説明する。

5, 財産上の請求権
 再生債権は、財産上の請求権である。金銭債権に限られない。破産においては、金銭による割合配当を行う必要上、非金銭債権、期限未到来の債権であっても、金銭化、現在化(破17、22、23)がなされるが、再生手続では、こうした権利の処遇も再生計画において別途定めれば足りるため、非金銭債権、期限未到来の債権のままで再生債権となる。
 契約上の不作為請求権は、そのままの形では再生債権とはならない。これに対し、契約上の作為請求権であって、非代替的作為を目的とするものは再生債権となる。この点、破産手続の場合で、破産者以外の者では履行できない非代替的作為義務は、破産財団の外で破産者との間で存続するとの最高裁正和2.11.26民集41−8−1585がある。

6, 再生債権は強制可能な請求権でなければならない。
 したがって、自然債務(不法原因給付の返還請求権、消滅時効にかかった請求権)、責任なき債務(不起訴の合意、不執行の合意など)、合意により訴求可能性、掴取力が奪われている場合は再生債権たり得ない。

7,公法上の請求権であっても、再生債権としての要件を満たすものならば、再生債権となる。ただし、公法上の請求権の中には、一般の優先権が与えられているもの(122@)もある。また、再生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用追徴金、または過料で一般の優先権を持たないものについては、再生債権になるが、再生手続による権利の変更の対象外とされ(155C)、その反面として、議決権がなく(87A)、債権の届出、調査及び確定(97、113@)について例外的な取扱いがなされている。
8, 別除権がある場合に再生債権の行使に制限がある。
 「再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。」(53@)
  別除権者は、担保権によって担保される債権については、「その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、再生債権者として、その権利を行うことができる。」(88)
 これを不足額責任主義という。

9, 再生債権の取扱い
(1) 「再生債権については、再生手続開始後は、民事再生法に特別の定めがある場合を除き、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。」(85@)。要は、再生手続開始により棚上げされる運命にある。そのため、再生債権は、自己の運命を決する債権者集会において、書面など投票により議決権を行使することができ、また他の再生債権の議決権について異義を述べることができる(170A、170@)ことになっている。
 法85条1項は、「弁済をし、弁済を受け・・ることができない。」とされているので、再生債権者の側からする取立行為であると、債務者などからする履行行為であるとを問わず、再生債権を満足させる行為を包括的に禁止する趣旨の規定である。ただし、免除は再生債務者に利益をもたらすだけなのでその例外である。他にも、85AやDの弁済・92条の相殺等の例外もある。
 法85条1項は任意の弁済を禁じているが、39条は、再生債権に基づく強制執行などを禁止し、すでに開始済の手続は中止する旨を定めている。法85条1項は、39条に規定されていない権利の実現のための行為も全て禁止するものと解されている。対象となる債権は無論再生債権である。
 85@によって禁止される効果は第三者にも及ぶ。再生手続開始前より再生債権者が再生債務者の第三債務者に対する債権を差し押さえていた場合、再生手続開始の効果として、取立行為は39@により中止し(取立訴訟は中断する40@)、以後は、第三債務者は再生債権者に対する弁済を禁止される。
(2) 違反行為の効果
 これに違反した債務消滅行為は、すべて無効である。手続開始前の弁済禁止の保全処分に違反して再生債務者がした弁済は、再生債権者が保全処分について悪意であったときには、その効力を主張することができないことになっているが、開始決定後の債務消滅行為は、再生債権者の善意、悪意を問わず無効となる。

 10, 例外として許される再生債権の弁済1−中小企業者の債権に対する弁済
 法85Aは、「再生債務者を主要な取引先とする中小企業者が、その有する再生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障を来すおそれがあるときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。」と規定する。
 この例外が設けられたのは、昭和39年の山陽特殊製鋼の更生事件が契機となったものである。山陽特殊製鋼の倒産により、下請企業の連鎖倒産が発生したが、当時の会社更生法では、その更生債権の早期弁済をする術はなかった。そこで、会社更生法が改正され、中小企業者の債権につき、裁判所の許可により部分的に弁済を認めることにした。その後、この規定が民事再生法にも引き継がれたものである。この例外は、公益的な要請によってするものであるので、裁判所の職権でもなされ得ることになっている。しかし同時に、この制度はただ単に、中小企業者自体の保護を目的とするだけではなく、納入業者が連鎖倒産し、部品の納入等が停止してしまうと、再生債務者の事業の継続が困難となり、その継続企業価値が損なわれるので、それを避けるため、つまり、再生債権者の利益につながるものである点を忘れてはならない。したがって、弁済の対象となる中小企業者は、再生債務者を主要な取引先とするものでなければならず、依存度は20%を超えれば原則として主要な取引先と認められるとされている。ただ、連鎖倒産防止のための弁済といっても、中小企業者の債権を共益債権とするものではないので、弁済額の面では将来作成されるべき再生計画において、中小企業者が受ける弁済額の範囲内に止めるべきであるが、弁済の時点では将来作成される再生計画による弁済率を正確に予測することは困難であることから、およその見込で弁済率を決めればよく、弁済率を高めに見て支払ったが後日再生計画での弁済率がそれより低かった場合でも、この例外規定の適用を受けて弁済を受けた中小起業者はその差額を返還する義務はなく、逆に、再生計画での弁済率が多かった場合は、差額の支払を受けうることになる。この支払の基準は弁済許可の時であって再生手続開始の時ではない。裁判所が職権でなし得るところから、申立は再生債務者等に限られているが、再生債務者等が握りつぶしをすることを避けるため、「再生債権者から・・・求められたときは、直ちにその旨を裁判所に報告しなければならない。この場合において、その申立てをしないこととしたときは、遅滞なく、その事情を裁判所に報告しなければならない。」とされ(85C)再生債務者等から裁判所への報告義務等を課している。この規定による裁判所の弁済許可は、再生債権の届出が前提になるとされている。
 なお、この場合の裁判所の許可による弁済の効果は、仮払いではなく本来の弁済であるので、その限度で再生債権が消滅し、議決権も弁済額分だけ縮減する。
 なお、再生債務者等がこの規定による弁済をしたときは、規85で、再生計画案を裁判所に提出するときに、弁済をした再生債権を記載した報告書を提出しなければならない。
 論点として、許可決定に基づく弁済の後、再生手続廃止決定や再生計画の不認可決定などにより再生手続が中途で終了する場合に、本項による弁済が牽連破産における否認の対象となるかについて問題となるが、弁済が公益的な政策目的のためになされていることに鑑み、否認の対象とならないと解されている。

 11,例外2ー手続の円滑な進行のための少額債権の弁済(85)
 「少額の再生債権を早期に弁済することにより再生手続を円滑に進行することができるとき・・・、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。」(85D前段)。これは、債権者集会等における議決権者の議決要件の中に債権者の頭数要件が入っているところから、債権者の数を減らす目的で少額債権を全額弁済してしまうという制度である。これは手続コストの低減を図る趣旨である。公益的な政策によるものではないから、専ら再生債務者等の申立に基づいて与えられることとなっている。少額の再生債権の消滅を目的としたものであるから、一部弁済と言うことはありえない。実務上この弁済許可の利用は多い。

 12,例外3ー事業の継続に著しい支障を来す場合の少額債権の弁済許可
 「少額の再生債権を早期に弁済しなければ再生債務者の事業の継続に著しい支障を来すときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより、その弁済をすることを許可することができる。」(85D後段)。この規定は平成14年改正法によって追加されたものである。事業の継続に著しい支障を来す場合の解釈は、厳格になされなければならない。重要な取引先から再生債権を支払わなければ取引を継続しないといわれた場合安易に弁済を許可するとなると、そのような不合理な申し出を助長することになる。このような場合は、決議に付するに足りる再生計画案の作成の見込がないとして、再生手続の廃止事由に当たるものと解するほかなく、この規定は厳格に解されなければならない。
これまでの弁済許可事例は、イ.外国の租税債権を弁済しなければ在外財産が差し押さえられ、当該国における事業の継続に著しい支障が生じる場合、ロ.外国における債務を支払わなければ、当該国におけるその後の日本企業の活動が極めて困難になる国情にあり、これにより当該企業の評価が低下して事業の継続に著しい支障が生じると認められる場合、ハ.日常的に生じる病院の廃棄物の処理業者がいて、これとの取引が止まると事業の継続が不可能となり、代替措置をとることが困難である場合、ニ.一定の地域に入ることが許される運送業者が限定されており、その業者との取引が中止されると事業の継続に著しい困難が生じる場合などである。
 このような場合の少額債権とはどの程度の債権をいうかは、弁済の対象となる債権の額、再生債務者の資産、業績の規模、弁済の必要性の程度などから判断される。ここでいう弁済は、予想配当率に応じた一部弁済ではなく、債権全額の弁済が許容されているものと解されている。
 
 13,商取引債権の保護
 民事再生の申立をしても、商取引上の債権を保護しないと、再生が困難になることが予想される場合、どういう方法で商取引上の債権を保護するか?
 私的整理とは違い、民事再生法の適用を求める以上は債権者平等の原則に違反することは許されないので、法が認める制度を活用する他に方法はない。まず中小企業者に対する弁済であるが、これは要件が厳しくまた全額弁済を受けうるものではないのであまり利用されていない。そうなると、事業の継続に著しい支障を来す場合の少額債権の弁済許可を考えることになるが、「少額」とはいくらかが問題になるであろう。一般に商取引債権は金融機関のもつ債権より少ないこと、また、「事業の継続に著しい支障を来す場合」とは、1社でも支払を受け得ない再生債権者がいれば、それが事業の継続に著しい支障を来す場合になるのであれば、全商取引債権を全額弁済しうる場合もあるかもしれない。
 そのような考えで、この規定を積極的に活用することを説く実務家がいるし、実務上いろいろ工夫されている。

 14,多数当事者と再生債権
 主債務につき、連帯保証債務や物上保証債務があることは実務上しばしば見られることであるが、このような複数の全部履行義務者の一部または全部につき民事再生手続が開始された場合は、それぞれの手続につき、再生手続開始時点の債権全額につき権利行使できることになっている(86A、破104@A)。これを現存額主義という。手続開始後に他の全部履行義務者から一部弁済を受けた場合、その金額を控除する必要はなく、手続開始時点にあった金額で権利が認められる。この理は連帯債務者間についても言えるが、保証人の場合は、保証人に催告の抗弁権、検索の抗弁権が認められているので、わざわざ条文を設けて、これらの抗弁権を否定して、保証人に民事再生手続が開始された時は、債権者は手続開始時点の債権全額で再生手続に参加することができる(86A、破105)ことにしている。
    しかし、実務上はたんなる保証契約は見られないので、この規定はあまり意味はない。

  • Q  A社に再生手続開始決定が出た。再生債権者B社はA社に対し金銭を貸しており、残債権額は1億円である。C社がその連帯保証人になっている。B社は再生手続開始決定時の1億円を再生債権として届出た。その後C社はB社に3000万円を支払い、求償権3000万円を再生債権として届出た。C社は再生債権者として扱われるか?
  • 答 C社は一部弁済をしても何ら権利行使はできない。B社は3000万円の弁済を受けたが、届出額1億円を維持しておけばよい。再生計画によって配当を受ける場合の基準になる金額は7000万円ではなく、開始時の1億円である。ただし、B社は当初の債権額1億円を超える配当を受けることは出来ない。例えばA社の再生債権の配当率が80%担った場合、B社は7000万円しか配当を受け得ない。
     なお、実務上、金融機関が貸金債権を再生債権として届出、信用保証協会が将来の求償債権を再生債権として予備的に届出、その後保証協会が全額弁償をすることがしばしば見られるが、このような場合、保証協会の将来の求償債権を事後求償権に変更して権利行使を認める方法と(法86条2項、破産法104条3項)金融機関が届出た債権を保証協会が承継する方法(法86条2項、破産法104条4項)とがある。
15,再生債権の現在化、金銭化の不要性
 破産手続の場合は、配当の基礎となる債権額確定の必要性から債権の現在化、金銭化を求められるが、民事再生の場合、再生計画の中で処遇すれば足りるから、破産債権のような現在化や金銭化は認められていない。

第三 共益債権

1, 法119各号の共益債権
 共益債権は、法で定められた場合にのみ認められる。原則的なものは、法119の1号から7号に規定された債権であるが、他の条文にも共益債権として定められているものがある。
 以下、119に定まられた権利について触れる。
  • 1号 再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
     これは、債権者共同の利益のためにする裁判上の費用であり、再生手続開始申立の費用、保全処分、開始決定その他の裁判費用、公告および送達の費用、債権者集会期日の公告および呼出の費用、再生計画案の送達の費用などがある。
  • 2号 再生手続開始後の再生債務者の業務、生活並びに財産の管理及び処分に関する費用
     これは、再生債務者の業務に伴う原材料の購入費、従業員の給与、退職金事務所の賃料、電気、ガス、水道料、租税。社会保険料などと、再生債務者が自然人である場合の生活費などである。
  • 3号 再生計画の遂行に関する費用の請求権(再生手続終了後に生じたものを除く。) 
     これは、再生計画で定められた、減資、増資、定款変更の手続費用、弁済に要する費用などが考えられる。これは手続中のものであるから、監督委員や管財人が選任されていて、再生計画認可決定確定後も手続が継続する場合になる。
  • 4号は、監督委員等の報酬である。
  • 5号 再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権
     これは、2号が費用の支払いの面から規定されたものに対し、5号は相手方の請求権の面から規定されたものと理解されているが、再生債務者等の不法行為に基づけ請求権等必ずしも2号に含まれるとは言えない債権もある。
     なお、一般に倒産処理手続開始後に債務者に対し行われる融資をDIPファイナンスと言うが、このDIPファイナンスができるのもこれによる融資が共益債権とされるからである。ただ、DIPファイナンスが共益債権になるのは再生手続開始後であるので、再生手続開始申立時からDIPファイナンスを利用する場合は、120@Aの裁判所の許可(それに変わる監督委員の承認)を得なければならない。
  • 6号 事務管理又は不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権
     再生債務者財産の増加や財産の減少の回避を可能にした行為に対応した費用であるので、優先的に扱われる。
  • 7号 再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で、再生手続開始後に生じたもの(前各号に掲げるものを除く。)
     これは、2号に該当しない費用で、やむを得ないものを指し、2号を補完するものとされる。具体的には、管理命令が発令された場合における、法人の組織法上の活動に関する費用で、その支出をすることがやむを得ないものなどである。
 法19の共益債権は、原則として、再生手続開始後の原因に基づいた請求権であって、手続を遂行する上で要した費用及び再生債務者の業務の維持、継続のために要した費用など、手続上の利害関係人の共同利益のためになされた行為により生じた請求権をいう。

2,共益債権は、このように原則として手続開始後に生じた原因に基づく請求権であるが、開始後債権とは区別されなければならない。開始後債権は、後述するが、再生手続が進行中の間は弁済、その他債務を消滅させる行為(免除を除く)を受けることができない。また、この間、強制執行、仮差押えなどもすることができないが、再生債権とは違って、債権の減免を受けることがなく、これらの手続終了後弁済を受けることができる。

3,
  • Q 再生債務者が再生手続開始決定後交通事故を起こして第三者に被害を与えた場合、被害者の損害賠償請求権は共益債権となるか開始後債権となるか?
  • A 交通事故が営業中のものであれば「業務に関する費用の請求権」(119A)となり共益債権とみる余地があり、営業に関しない場合でも再生債務者所有の車両で起こした交通事故については「再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした・・行為によって生じた請求権」(119D)として共益債権と見る余地がある。しかし、営業に関しない場合で他人所有の車両で交通事故を起こした場合は、「再生債務者財産に関し」の要件を欠き5号の共益債権にならないが、営業に関しない場合でも、2号の「再生手続開始後の再生債務者の・・生活・・に関する費用の請求権」と見られ共益債権になるとされている。
4,共益債権は、再生手続によらないで、随時弁済を受けうる(121)。また、共益債権は、再生債権に先立って、弁済されるが、共益債権に基づき再生債務者の財産に対し強制執行又は仮差押えができる。ただし共益債権に基づき強制執行又は仮差押えがされている場合において、その強制執行又は仮差押えが再生に著しい支障を及ぼし、かつ、再生債務者が他に換価の容易な財産を十分に有するときは、裁判所は、再生手続開始後において、再生債務者等の申立てにより又は職権で、担保を立てさせて、又は立てさせないで、その強制執行又は仮差押えの中止又は取消しを命ずることができる、ことになっている(121)。

5, 共益債権に関する諸問題
 リース債権の取扱い
 リース債権を共益債権と見るか再生債権と見るかの対立があるが、最高裁平成7年4月14日判決は、いわゆるフル・ペイアウト方式によるファイナンス・リース契約により、リース物件の引渡を受けたユーザーにつき、会社更生手続開始決定があった場合、未払いのリース料債権は、その全額が更生債権となるとした。 再生手続においても、フル・ペイアウト方式によるファイナンス・リース契約のリース料債権は、共益債権ではなく再生債権として扱い、リース会社がリース物件の所有権を留保しているものについては、非典型担保として別除権の扱いをするのが相当である。この場合、リース物件の所有者は、リース物件の引渡を請求することができるので、事業の継続に不可欠な物件を引き上げられると再生は不可能になるなどの問題を秘めている。
 実務では、このような担保権者との間に別除権で担保される債権について弁済協定を結ぶ、いわゆる別除権協定というものが結ばれているが、これは、別除権の目的の受け戻しに関する協定と考えられるので、裁判所の許可もしくは監督委員の同意を得なければならない。この場合、この協定にもとづく支払債務は、共益債権(119D)となるので、再生手続によらず随時弁済をすることができる。
 これとは反対に、物件の引き揚げ(別除権の行使)がなされた場合には、別除権の行使によっても回収されなかった債権額が再生債権となり、再生計画によって弁済される。
 同じファイナンス・リース契約でも、オペレーティング・リース契約、特にリース会社が物件の修繕、整備、または補修の義務を負うメンテナンス・リース契約に基づいて引渡を受けたリース物件を再生債務者が引き続き使用する場合には、開始後のリース料債権は、49条4項により共益債権となる。

6, 債務者代理人の弁護士報酬 
 債務者代理人の弁護士の業務は、
@再生手続開始申立準備、
A申立後開始決定まで、
B開始決定後再生計画案認可決定まで、C認可決定後再生手続終結決定までに分けることができるが、これらの報酬が未払いの場合、@とAは再生債権となる。ただし、Aについては、120条により共益債権化が可能である。BとCは、共益債権となる。
 共益債権は、119条1号から7号以外にも、次の請求権がある。
  • @ 開始決定により執行した手続に関する請求権(39B)。
  • A 双方未履行の双務契約に関する請求権、解除による反対給付または価額の返還請求権(49CD)。
  • B 継続的給付を目的とする双務契約の相手方が再生手続開始申立後開始決定前にした給付に係る請求権(50A)。
  • C 再生債務者の財産関係の訴えを管財人が受継した場合の相手方の訴訟費用請求権(67D)。
  • D 再生債権確定訴訟において再生債務者財産が利益を受けた場合の異議を主張した再生債権者の訴訟費用償還請求権(112)。
  • E 再生手続開始前の借入金等共益債権化の許可または承認を受けた請求権(120)。
  • F 否認権行使の結果、相手方の反対給付の返還または反対給付によって生じた利益の償還請求権(132B(2)(4))。
  • G 受継された詐害行為取消訴訟、否認権訴訟の相手方の訴訟費用請求権(140E)。
  • H 担保権消滅請求に関して、財産の価額の決定のために評価人が選任された場合において、再生債務者等が、価額に相当する金銭を納付しないため、担保権消滅の許可が取り消された場合の再生債務者に対する価額決定の費用請求権(151C)。
  • I 開始前に係属しており、再生計画認可決定確定により執行した破産手続における財団債権(184A)。
第四 一般優先債権
 1, 一般の先取特権その他一般の優先権がある債権(共益債権であるものを除く。)は、一般優先債権とされ、一般優先債権は、再生手続によらないで、随時(履行期にの意味)弁済するものとされる(122)。民法306ないし310の先取特権、租税債権、企業担保権等があるが、実務上多いのは従業員の労働債権である。租税債権や国税徴収法の例によって徴収される各種社会保険料や負担金も、一般優先債権である。
 これらは再生手続開始前に発生したもので、再生手続開始後発生した債権は通常共益債権になる。

 2, 一般優先債権は、実体法上の優先債権であるが、破産法では優先破産債権、会社更生法では優先的更生債権として手続内に取り込まれ、手続内で優先的な地位を与えられているが、民事再生法は、組み分けに伴う手続コストを避けるため、手続外で権利の行使ができることにした。一般優先債権も原則として、随時弁済を受けるが、再生に著しい支障を及ぼす場合かつ再生債務者が他に換価することが容易な財産を十分に有する時は、一時的に強制執行の中止または取消を命じられることがある(122C.121B)。

 3, なお、再生手続が廃止された後に破産手続に移行した場合、共益債権は財団債権になる(252E)が、一般優先債権は破産法にしたがい財団債権、優先的破産債権、劣後的破産債権になる。
 共益債権や一般優先債権は、随時弁済がなされるとはいえ、裁判所は、これを監督委員の要同意事項とすることができる(監督委員の要同意事項の項参照)。

第五 開始後債権
 再生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権、一般優先債権又は再生債権であるものを除く。)は、開始後債権となるが(123@)、開始後債権は、再生手続が開始された時から再生計画で定められた弁済期間が満了する時(再生計画認可の決定が確定する前に再生手続が終了した場合にあっては再生手続が終了した時、その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない(123A)。また、この期間は、強制執行、仮差押え及び仮処分並びに 財産開示手続の申立てはができない(123B)劣後的債権として扱われる。
  開始後債権というのは、実務上、その発生があまり考えられにくい債権である。
  具体的には次のような債権がこれに該当すると考えられる。
  • @ 再生債務者がその業務や生活に関係なく行った不法行為を原因とする債権。
  • A 再生債務者のために生じた債権ではあるが、119条7号に該当しないもの、たとえば管理命令が発せられ管財人が選任された後に、再生債務者の理事等が組織法上の行為をすることなどにより生ずる債権で、「再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用」でないため、119条7号に該当しないもの。
  • B 再生債務者が、管理命令が発せられ管財人が選任された後に再生債務者財産に関してした法律行為は、再生手続の関係においては、その効力を主張することができないが(76@)、再生債務者の責に帰すべき事由があったときの相手方の損害賠償請求権。
  • C 為替手形の振出人または裏書人である再生債務者について再生手続が開始された場合において、支払人または予備支払人がその事実を知らないで引受けまたは支払をしたときは、その支払人または予備支払人は、これによって生じた債権につき、再生債務者として権利を行うことができるが(46@)、そうではなく、再生手続開始を知って引受けまたは支払をしたときの相手方の債権。
 なお、知れている開始後債権については、再生計画でそれに関する条項を定めなければならない。(154@3)
第六 約定劣後債権
  ここで、約定劣後債権について説明する。
劣後債という社債がある。これは債務者(当該社債を発行した会社)に破産手続開始、再生手続開始等一定の事由が発生した場合は、当該社債の保有者に対する元利金の支払が、他の社債権者に対するよりも後順位になるという社債である。
  約定劣後再生債権とは、「再生債権者と再生債務者との間において、再生手続開始前に、当該再生債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が破産法99@に規定する劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権」であるが、(法35C)、約定劣後再生債権は、再生手続開始の通知がされない場合、議決権が認められない場合、再生計画で配当を受けない場合がある(35C、87B、155A)。実務ではほとんどの劣後債権がこのような扱いを受けているものと思われる。
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