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民事再生法講義 第8回

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<民事再生法講義 第8回

第8回講義 再生計画


一 再生計画案の提出
1,再生計画案の意義
(1) 再生手続のとりあえずの目標は、再生計画案の策定である。
 再生債務者等は、再生計画で、再生債権を変更(多くは、一部免除、残金の分割)してもらい、変更後の再生債権を弁済し、事業の再生を図るのである。
(2) 再生の方法
  • ア 自主再建型を採用するなら、再生債権への弁済は、収益弁済(分割弁済)になるのが一般である。
     収益弁済型で再生を図る場合は、次の問題をクリアする必要がある。まずは、免除益対策である。すなわち、再生計画で多額の再生債権の免除を受けると免除益が発生するが、これを繰越欠損金や財産評定による固定資産等の評価損、売掛債権等の売却による譲渡損で消すことができるかどうかである。これができないと、多額の法人税が発生し、債権は不可能になる。
     次の問題は、収益弁済が、再生債務者が再生計画認可後の事業で収益を上げ、税金を支払った後の資金で弁済をするのであるから、税引き後の利益が長期間継続して見込めるか、という問題である。これが見込めないと再建は不可能である。
  • イ スポンサー型は、@増減資をして、スポンサーが再生債務者の株主となり、スポンサーによる資本の引受と貸付金で、変更後の再生債権を一括弁済、あるいは、スポンサーの下での収益弁済をする型と、A事業譲渡を受け、譲渡代金で変更後の再生債権を一括弁済する型がある。事業譲渡の場合は、免除益課税の問題は生じない。
  • ウ 単純清算型は、再生債務者が事業を譲渡して譲渡の対価を配当原資にして会社を清算する場 合や事業譲渡に失敗して事業も継続もできなくなった場合に、再建を諦めて、資産を全部処分して、再生債権への配当に充てる方法である。清算型再生計画を策定する。この場合も免除益課税の問題は生じない。
     このような清算を目的とする再生計画も許されるとされている。

2,再生計画案の提出
(1) 提出者
 再生債務者等は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない(163@)。再生計画案の提出は、再生債務者等の義務であるが、管財人が選任されている場合の再生債務者又は届出再生債権者は、裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出することができる(163A)。これを任意的提出者という。実務では、任意的提出者が再生計画案を提出することはまずない、と言われている。
(2) 提出時期
 提出時期は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内であり(163@)、期間の末日は、特別の事情がある場合を除き、一般調査期間の末日から2月以内の日としなければならない(規84@)。期間の伸長は、特別の事情がある場合を除き、2回を超えてすることができない(規84B)。
(3) 提出後の修正・変更
 再生生計画案の提出者は、裁判所の許可を得て、再生計画案を修正することができる。ただし、再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、この限りでない。167により、理由があれば、付議決定後も、修正は可能である。
(4) 裁判所の排除命令・修正命令
 裁判所が、再生計画案について、@再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき、A再生計画が遂行される見込みがないとき、B再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき、のいずれかに該当するものと認めるときは、その再生計画は排除し、決議に付すことはできない(69@B・174A)。ただ、排除の前に、裁判所は、再生計画案の提出者に対し、再生計画案を修正すべきことを命ずることができる(規89)。
(5) 再生計画案の変更
 再生計画案の提出者は、再生計画案について付議決定があった場合でも、再生債権者に不利な影響を与えないときに限り、債権者集会において、裁判所の許可を得て、当該再生計画案を変更することができる。

二 再生計画案の内容
1,再生計画の条項−絶対的必要的記載事項
(1) 内容
 すべての再生計画案に定めなければならない事項(154@1号)
  • @ 全部又は一部の再生債権者の権利の変更
  • A 共益債権及び一般優先債権の弁済
  • B 知れている開始後債権があるときは、その内容
(2) 全部又は一部の再生債権者の権利の変更
 これについては、、「・・・権利の変更の一般的基準を定めなければならない。」(156)ことになっており、また、届出再生債権者と自認債権ごとの一般的基準に従って変更した後の権利の具体的な内容をも定めなければならない(157)ことになっている。具体的には、
  • @ 債務の減免 「再生債権の開始決定後の利息損害金については全額免除を受け、その余の部分に月8割の免除を受ける。」など
  • A 期限の猶予
  • B その他の権利の変更 弁済方法の変更(金銭での支払・債務の更改や代物弁済など)などがあるが、この一般的基準を定める場合の注意点は、債権者平等原則とその例外、と弁済率と弁済期間、である。
(3) 再生債権者間の平等と例外
 再生計画による権利の変更の内容は、再生債権者の間では平等でなければならない(155本文)。
 例外は、
 
  • @ 利益を受ける再生債権者の同意がある場合
  • A 少額の再生債権−85Dにもある(劣後債権はダメ85E)が、趣旨は違う。この場合は、社会的・経済的弱者保護にあり、債権者数を減らすという意味はない。少額の意味も85Dより多くともよい、とされている。
  • B 再生手続開始後の利息の請求権・再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金 の請求権・再生手続参加の費用の請求権・・・・本来は劣後的債権であるから不利益な取扱いを認めるもの。ただし、約定劣後債権よりは優先される(155A)
  • C その他これらの者の間に差を設けても衡平を害しない場合ー保証債務、破綻に責任のある親会社や経営者の債権を不利益に扱ったり、ゴルフ会員権を他の再生債権とは別の取扱いをしたりする場合、人身事故による損害賠償債権、下請け業者の債権等を金融機関等大口債権者と配当率で差をつけることなどの場合は、平等でなくともよい、とされる。
である(155ただし書)。
 なお、再生手続開始前の罰金等については、再生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができない(155C)が、再生計画で定められた弁済期間が満了するまでは弁済を受けることはできない(181B)。
(4) 弁済期限
 再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるときは、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可の決定の確定から10年を超えない範囲で、その債務の期限を定めるものとする(155B)。会社更生法の場合は15年。
 弁済期限が10年を超えても良い特別の事情とは、10年を超えた時点で特別な弁済資金が生じる場合、などである。
 このような弁済期限を設けた再生計画は、通常、再生債務者が将来の収益を弁済原資にする場合である。この場合は、収支計画、弁済資金計画を作成した上でなされる。
(5) 権利変更ができない債権
 再生手続開始前の罰金等(97)については、再生計画において減免その他権利に影響を及ぼす定めをすることができない(155C)。この債権は、法178「再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権について、その責任を免れる。ただし、再生手続開始前の罰金等については、この限りでない。」で免責されない。民事上の手続で刑事の恩赦や執行の免除を認めるべきではないからである。
(6) 個々の再生債権者の記載
 再生債権者の権利を変更する条項においては、届出再生債権者及び103Bの規定により認否書に記載された再生債権者の権利(自認債権)のうち変更されるべき権利を明示し、かつ、前条の一般的基準に従って変更した後の権利の内容を定めなければならない。」(157@本文)。変更前の債権額、減免後の債権額、弁済期日とその期日に支払う金額を記載するのである。これは、これらの権利が、「再生計画認可の決定が確定したとき・・・再生計画の定めに従い、変更され」(179@)、るので、「・・・裁判所書記官は、再生計画の条項を再生債権者表に記載しなければならない。」(180@)ためと、これにより「金銭の支払その他の給付の請求を内容とするものを有する者は、再生債務者及び再生のために債務を負担した者に対して、その再生債権者表の記載により強制執行をすることができ(180B)、また、「再生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権について、その責任を免れる。(178)ことになるためである。
 なお、再生債権で、再生計画によってその権利に影響を受けないものがあるときは、その権利を明示しなければならない(157A)。これは衡平と公正性を担保するためである。
(7) 共益債権及び一般優先債権の弁済
 これは、再生計画によらないで随時弁済を受けうるが、その額や履行期は再生計画の内容や履行可能性に影響を与えるので、再生債権者にこの情報を開示するために記載を要するものにしている。なお、規83で、「再生計画においては、共益債権及び一般優先債権については、将来弁済すべきものを明示するものとする。」

2,相対的必要的記載事項
 一定の要件がある場合は定めなければならない事項
(1) 未確定の再生債権がある場合の条項
 再生債権者は、その有する債権が確定している場合に限り、再生計画の定めによって認められた権利を行使することができる(179A)。逆に言うと、再生債権は確定していないと権利の行使が認められないことになる。そのため、異議等のある再生債権で、その確定手続が終了していないものがあるときは、再生計画において、その権利確定の可能性を考慮し、これに対する適確な措置を定めなければならない(159)ことになっている。「適確な措置」とは、確定した場合、他の再生債権と比べて平等かつ衡平になるようにという趣旨である。実務では、「異議等のある再生債権で、現在その確定手続が終了していないものは、別紙未確定再生債権一覧表記載のとおりである。この債権が将来確定したときは、一般的基準を適用する。」「弁済期より後に確定したときは、確定後1ヶ月以内に支払う。」「弁済期日を経過した分については、確定後最初に到来する弁済期日に、経過した弁済期日に支払うべきであった分割金を加算して支払う。」「分割弁済期間経過後に確定したときは、確定後1ヶ月以内にその全額を支払う。」「確定された金額につき、確定後最初に到来する弁済期後は、一般的基準に従い他の債権者と同一の内容の弁済率で支払をする。確定までに他の債権者に対し再生計画に基づく弁済が開始していたときには、未確定なために受領することができなかった部分につき、確定後最初に到来する期日において同日までに生じた遅延利息を付して弁済する。」等がある。
(2) 別除権の行使による不足額が確定していない場合の条項
 別除権者は、行使不足額が確定した場合に限り、権利を行使することができる(182)。別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定していない再生債権を有する者があるときは、再生計画において、その債権の部分が確定した場合における再生債権者としての権利の行使に関する適確な措置を定めなければならない(160@)。破産法では、打切り主義が採用されている(破198B)。民事再生法では、181@とともに、配当から排除されることはない。
 そして、再生債権者が担保権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分が確定した場合に限り、その債権の部分について、認可された再生計画の定めによって認められた権利又は180@の規定により変更された後の権利を行使することができる(182本文)。
 なお、この例外として、別除権が根抵当権であり、その元本が確定している場合は、再生計画において、その根抵当権の被担保債権のうち極度額を超える部分について、権利変更の一般的基準にしたがい、仮払いに関する定めをすることができ(この場合は、確定したときにおける清算に関する措置をも定めなければならない。160A)、この定めがある場合は、その定めに従い弁済を受けることが出来る(182ただし書き)。この仮払いに関する定めをした再生計画案を提出する場合は、あらかじめ根抵当権者の同意が必要となる(165A)。破産法にも同様な規定がある(破196B・198C)。
 なお、別除権行使不足額の確定は、ア別除権実行による未回収被担保債権額の確定、イ担保権消滅請求による別除権の消滅、ウ別除権の放棄、エ目的物の売却による別除権の解除、エ別除権協定がある。別除権協定による確定で確定した金額が被担保債権額全額でない場合は、登記必要説と不要説とがある。
(3) 債務の負担及び担保の提供に関する定め
 「再生債務者以外の者が債務を引き受け、又は保証人となる等再生のために債務を負担するときは、再生計画において、その者を明示し、かつ、その債務の内容を定めなければならない。

2 再生債務者又は再生債務者以外の者が、再生のために担保を提供するときは、再生計画において、担保を提供する者を明示し、かつ、担保権の内容を定めなければならない。」(158)
 これは、再生計画は、再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者のためにも効力を有し(再生計画の効力の人的範囲177@)、再生計画の定めによって認められた権利については、その  再生債権者表の記載は再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者に対しても、確定判決と同一の効力を有し(180A)、その権利が金銭の支払その他の給付の請求を内容とする場合は、再生のために債務を負担した者に対しても、その再生債権者表の記載により強制執行をすることができる(180B)からである。このため、債務の負担又は担保の提供についての定めをした再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、当該債務を負担し、又は当該担保を提供する者の同意を得なければならない(165@)になっている。さらに、裁判所は、再生計画の遂行を確実にするため必要があると認めるときは、再生債務者等又は再生のために債務を負担し、若しくは担保を提供する者に対し、相当な担保を立てるべきことを命ずることができることにもなっている(186B)。
(4) その他
 再生計画によってその権利に影響を受けないものがあるときは、その権利を明示しなければならない(157A)。知れている開始後債権があるときは、その内容、債権者委員会に関する費用等がある。

3,任意的記載事項
(1) 再生債務者が株式会社である場合の、株式等に関する定款の変更、募集株式の引受けに関する条項等
 これらは再生計画によらずとも会社法上によってもできることであるので、任意的記載事項になる。
  • ア 株式会社につき再生手続が開始され、再生計画が認可され、再生が軌道に乗ることを想定した場合、もし、株主の権利がそのまま残るとすると、株式会社の再生は多くの債権者の犠牲の上で株主のただ乗りを認めることになってしまう。これでは債権者の理解が得られないし、モラルハザードを将来しかねない。そこで、民事再生法では(会社更生法でも)、会社法ではなく、民事再生法の手続として、再生債務者の株式に関する条項を定めることが認められている。
  • イ 法154Bで定める、再生計画の定めによる再生債務者の株式の取得に関する条項、株式の併合に関する条項、資本金の額の減少に関する条項又は再生債務者が発行することができる株式の総数についての定款の変更に関する条項を定めた再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、裁判所の許可を得なければならない。2裁判所は、株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができない場合に限り、前項の許可をすることができる(166@A)。1項の減資や定款変更に関する条項は会社法の定めるところにより株主総会等の決議を得ないとできないが、株式会社が債務超過である場合(再生手続開始時を基準にした継続企業価値による財産評定が前提になる。)は、実質的には株主の権利はないものとして扱われ、会社法所定の手続によらないで、事前の裁判所の許可(代替許可)でできることにしたのである。この再生計画は、債権者もできる(163@A)が、法154Cで定める、募集株式(譲渡制限株式であるものに限る。)を引き受ける者の募集に関する条項を定めた再生計画案は、再生債務者のみが提出することができ(166の2@)、債権者は提出できない。つまり、管財人が選任された再生事件でも、管財人は、減資の再生計画は策定できても、増資の再生計画は再生債務者の協力がなければ作成できないのである。要は、株主の総入れ替えは、再生債務者の同意無くしてできないことになる。
     ここに、民事再生法がDIP型の再建方法であることの特色が現れている。
     なお、この代替許可に対しては、即時抗告ができるが、争点は、債務超過かどうかだけとなる(事業譲渡の場合は、「事業の継続のための必要性」も争点になる。)
(2) 資本金の額の減少等を内容とする条項
  • ア 株式の取得
     法161@は、再生債務者の株式の取得に関する条項、株式の併合に関する条項、資本金の額の減少に関する条項又は再生債務者が発行することができる株式の総数についての定款の変更に関する条項を定めた再生計画案を提出しようとする者は、あらかじめ、裁判所の許可を得なければならない、と規定し、161Aでは、「裁判所は、株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができない場合に限り、前項の許可をすることができる。」とし、その場合は、 再生債務者が取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)・再生債務者が前号の株式を取得する日等を定めなければならないとしている。
     本来、株式会社がその発行済み株式を取得するには、会社法155の場合であるが、その中には株主総会の決議を要する場合もあるが、民事再生法では、債務超過を条件に、株式取得は法166@の裁判所の代替許可によって、株主総会等を不要とした。そして、183@で、この再生計画において再生債務者の株式の取得に関する条項を定めたときは、再生債務者は、株式を取得すると定めた日に、認可された再生計画の定めによって、株式を取得する、ことになる。
  • イ 株式の併合
     株式併合は、資本減少の場合が通常であろうが、本来なら会社法180Aによる株主総会の決議を要するが、これも債務超過を条件に、代替許可で可能となる。再生債務者は再生計画認可確定によって株式の併合ができるが、その場合、反対株主の株式買取請求権及び買取価額の決定に関する会社法116.117は適用されない(183A)。
  • ウ 資本金の額の減少
     会社更生法の場合、100%減資が常態化したが、民事再生法でも100%減資は可能である。しかしながら、株主総会の議決を省略して増資する再生計画案を提出しうるのは再生債務者に限られるので、資本金の額を100%減少するかどうかは、結局のところ、再生債務者会社の株主の意思にかかってくる。
  • エ 発行可能株式総数についての定款の変更
     資本金の額を減少して欠損の補充に充てた場合、発行済み株式総数は減少しないから、資本金の減少に応じた募集株式の発行ができない場合もある。そのため、株式の併合をするか、発行可能株式総数に関する定款の定めを変更する必要がある。そのため、民事再生法では、会社法466の株主総会の決議に代わる裁判所の許可を認めている(166@)。これも、債務超過の場合に限られる。
  • オ 再生計画による募集株式の引受等
     民事再生法は、基本的には、募集株式の発行等増資に関する規定は置いていない。そのため、原則として増資をする場合は、再生計画では行えず、会社法の規定(株主総会の特別決議等)に従ってしなければならない。ただその例外として、譲渡制限株式であるものに限って、法183の2@は「154Cにより(裁判所の許可・債務超過等の要件がある)再生計画において募集株式を引き受ける者の募集に関する条項を定めたときは、会社法199Aの規定にかかわらず、取締役の決定(再生債務者が取締役会設置会社である場合にあっては、取締役会の決議)によって、同項に規定する募集事項を定めることができる。」とされている。
     ただ、法154Cに規定する条項を定めた再生計画案は、再生債務者のみが提出することができる(166の2@)点で、会社更生法の場合と大きく異なる。
     再生債務者とスポンサー会社の協力によって初めて100%減資と増資ができることになる。
     なお、増資方法の一つとして、会社法の施行によって、DES(デッド・エクイティ・スワップ、債権を現物出資して株式とすること)がし易くなった。これらの活用も考えられて良いが、再生計画の衡平を害さないことが要求される。

4,更生計画と再生計画の違い
(1) 会社更生法では、手続外での担保権や租税債権・労働債権の行使を禁じているので、これらに関する事項を更生計画に中に定めなければならないが、民事再生法では、これらの権利は手続外で行使できるので定めない。
(2) 会社更生法では増資・減資や取締役の選任など会社の組織的事項について更生計画で定めることとしているが、民事再生法では減資・株式取得・株式併合や譲渡制限株式の発行などを除き、基本的には、会社の組織的事項は再生計画では定めるべき事項としていない。

5,約定劣後債権について
 約定劣後債権とは、約定劣後ローンとも言われるが、再生債権者と再生債務者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が破産法99@の劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権をいう。この約定劣後債は、国際業務に関する自己資本規制(BIS規制)や、国内の預金取扱金融機関等の健全性基準において一定の要件の下で自己資本に組み込まれることから、資金調達の一態様として発行されている。通常、再生計画では、通常全額の免除を受けると定められている。

三 再生計画案の決議
1,付議決定
 再生計画案の提出があったときは、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該再生計画案を決議に付する旨の決定をする(169@)。
  • @ 一般調査期間が終了していないとき。
  • A 財産状況報告集会における再生債務者等による報告又は125@の報告書の提出がないとき。
  • B 裁判所が再生計画案について、@再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、このりでない。A再生計画が遂行される見込みがないとき。B再生計画の決議が再生権者の一般の利益に反するときのいずれかに該当するものと認めるとき。
  • C 裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に再生計画案の提出がないとき、又はその期間内に提出されたすべての再生計画案が決議に付するに足りないのであるときにより再生手続を廃止するとき。
である。
 なお、BのB「再生計画の決議が 再生債権者の一般の利益に反するときのいずれかに該当するものと認めるとき」は、清算価値保障原則に違反する場合であるが、清算価値保障原則でいう清算配当率の算定時点は、手続開始時点を原則とするが、その後資産の変動もあり、調査時点の清算配当率を算定する監督委員もいる。
 Cの「再生計画案が決議に付するに足りないもの」とは、決議に付しても可決の見込みがないことをいう。
 付議決定には不服の申立はできない。

2,議決権の行使方法の決定
   裁判所は、決議に付する旨の決定において、議決権を行使することができる再生債権者(議決権者)の議決権行使の方法として、
  • @ 債権者集会の期日において議決権を行使する方法
  • A 書面等投票により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法
  • B @とAの方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法
のいずれかを裁判所が決めることになる(169A)。
 @は原則的な方法なので、裁判所は、議決権行使の方法として書面決議の方法を定めた場合において、知れている再生債権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる債権を
  有する再生債権者の申立てがあったときは、議決権行使の方法につき、当初の書面決議による定めを取り消して、前記@またはBの方法を定めなければならない(169D)。
 Aは遠方の再生債権者も参加が容易だが、再生計画案の変更ができないし(172C)、否決された場合の続行ができない(172D)という難点もある。

3,決議に至るまでの手続
 裁判所は、付議決定をした場合には、議決権の不統一行使の通知期限を公告し、かつ、当該期限及び再生計画案の内容又はその要旨を再生債務者、管財人、議決権を行使できる届出再生債権者等に通知する(169B)等の手続をすすめる。
 実務上は、監督委員にも通知がなされる。また、通知書には、監督委員の意見書が添付される。
 他に、115@〜Cもある。
4,基準日制度
 裁判所は、相当と認めるときは、再生計画案を決議に付する旨の決定と同時に、基準日を定めて、基準日における再生債権者表に記録されている再生債権者を議決権者と定めることができる。基準日は2週間以上前に公告しなければならない(172の2@A)。議決権確定のための基準日の制度は、債権譲渡や代位等で再生債権者の変動があるようなケースで利用される。

5,議決権
(1) 債権者集会における議決権
 法104@で「再生債権の調査において、再生債務者等が認め、かつ、調査期間内に届出再生債権者の異議がなかったときは、その再生債権の内容又は議決権の額は、確定する。」
 異義等で未確定の再生債権については、「債権者集会の期日において、届出再生債権者の議決権につき異議を述べることができる。」(170@)が、この場合の「異議のない議決権を有する届出再生債権者」は「届出の額」が議決権になる。
 未確定の再生債権で債権者集会において「異議のある議決権を有する届出再生債権者」は「裁判所が定める額」が議決権になるが、この場合、「裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない。」(170AB)
 この議決権を決定する裁判に対しては、不服申立ては認められない。
 債権調査における議決権についてのみ異義を述べていても、債権者集会で議決権について異義を述べないと、届出額で議決権が行使されるので、注意がいる。
(2) 書面等投票における決議での議決権
 法104@でその額が確定した議決権を有する届出再生債権者のみが、確定した額について議決権を有し、それ以外の届出再生債権者は、裁判所が定める額の議決権を有する。ただし、裁判所が議決権を行使させない旨を定めたときは、議決権を行使することができない(171)。
 社債権者も一定の要件の下で議決権の行使ができる(169A)。

6,別除権者の議決権
 別除権者の被担保債権の債務者が再生債務者である場合、別除権行使による予定不足額は確定手続の対象にならない。別除権行使の結果、この不足額が確定している場合は不足額が議決権の額になるが、不足額が未確定の場合は、94Aで届出される不足見込額で議決権が行使されると考えられている。
 実務上は、予定不足額として届出された額を届出議決権の額とし、債権調査で再生債務者等が認め届出再生債権者から異義がなかった場合は、その額を確定した議決権の額として取り扱う方法と、届出られた予定不足額を未確定の届出議決権とし、債権者集会で異義があれば裁判所が議決権を決定(170@A)し、書面等投票方式の場合は、裁判所が裁量で議決権を定める方法(170@A)とがある。

7,議決権の不統一行使
 議決権者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、169A前段に規定する期限までに、裁判所に対してその旨を書面で通知しなければならない。議決権の不統一行使をする場合は、第一項第一号又は前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、同号に規定する議決権者の数に一を、再生計画案に同意する旨の議決権の行使をした議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする(172の3F)。

8,可決要件
 再生計画案を可決するには、@権者集会に出席し、又は書面等投票をした議決権者の過半数の同意と、A議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意のいずれもがなければならない(172の3@)。@は頭数要件で会社更生法にはない要件である。Aは議決権の総額が分母になっているので、議決権者が議決権を行使しなかった場合や無効の投票をした場合は、反対と同じ効果が生じてしまう。

9,債権者集会の期日の続行
法172の5
 再生計画案についての議決権行使の方法として169A1号又は3号に掲げる方法が定められ、かつ、当該再生計画案が可決されるに至らなかった場合において、次の各号のいずれかに掲げる同意があるときは、裁判所は、再生計画案の提出者の申立てにより又は職権で、続行期日を定めて言い渡さなければならない。ただし、続行期日において当該再生計画案が可決される見込みがないことが明らかである場合は、この限りでない。
  • ア 172の3@各号のいずれかに掲げる同意
  • イ 債権者集会の期日における出席した議決権者の過半数であって出席した議決権者の議決権の総額の二分の一を超える議決権を有する者の期日の続行についての同意
 A前項本文の場合において、同項本文の再生計画案の可決は、当該再生計画案が決議に付された最初の債権者集会の期日から2月以内にされなければならない。
 続行要件が満たされないときは、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない(191B)。書面等投票は期日の続行が認められていないので、可決要件を満たしていなければ、再生手続は廃止される。

10,その他
 法172の3Aの、約定劣後再生債権の届出がある場合には、再生計画案の決議は、再生債権(約定劣後再生債権を除く。)を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う。ただし、議決権を有する約定劣後再生債権を有する者がないときは、この限りでない。法172の3Bの裁判所は、前項本文に規定する場合であっても、相当と認めるときは、再生計画案の決議は再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれないで行うものとすることができる。法172の3Eの第1項の規定にかかわらず、第2項本文の規定により再生計画案の決議を再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う場合において再生計画案を可決するには、再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者の双方について第一項各号に掲げる同意のいずれもがなければならない。

四 その他
1,再生計画案の変更
法172の4
 再生計画案の提出者は、議決権行使の方法として169A1号又は3号に掲げる方法が定められた場合には、再生債権者に不利な影響を与えないときに限り、債権者集会において、裁判所の許可を得て、当該再生計画案を変更することができる。

2,再生計画の認可・不認可
 再生計画は不認可事由がない限り認可される。また174の2で、再生計画案の決議を再生債権を有する者と約定劣後再生債権を有する者とに分かれて行う場合において、再生債権を有する者又は約定劣後再生債権を有する者のいずれかについて同条第1項各号のいずれかに掲げる同意を得られなかったため再生計画案が可決されなかったときにおいても、裁判所は、再生計画案を変更し、その同意が得られなかった種類の債権を有する者のために、破産手続が開始された場合に配当を受けることが見込まれる額を支払うことその他これに準じて公正かつ衡平に当該債権を有する者を保護する条項(「権利保護条項」という。)を定めて、再生計画認可の決定をすることができる。
 不認可事由は、前述した、@再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき(ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない)。A再生計画が遂行される見込みがないとき(例えば、返済原資の調達が実現不可能なとき)。B再生計画の決議が 再生債権者の一般の利益に反するときのいずれかに該当するものと認めるとき(すなわち、清算価値が保障されていないとき)。の他に、C再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき(例えば、決議に詐欺、強迫、利益誘導、賄賂等があるとき174AB)である。

3,再生計画の効力
 (1) 効力発生時期
 再生計画は、認可の決定の確定により、効力を生ずる(176)。会社更生法201とは違う。
 (2) 確定の効力
  • ア 再生計画は、再生債務者、すべての再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者のために、かつ、それらの者に対して効力を有する(177@)。届出の有無を問わない。
     共益債権者や一般優先債権者には効力は及ばない。
  • イ 再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画の定め又はこの法律の規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権について、その責任を免れる。ただし、再生手続開始前の罰金等については、この限りでない(178)。
  • ウ なお、再生計画は、別除権者が有する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない(177A)。
  • エ 別除権者が有する担保権が根抵当権である場合、再生計画の効力が発生しても、根抵当権の被担保債権は確定しない。
  • オ 再生計画の確定により権利が変更・再生債権の確定により弁済を受ける。  再生計画認可の決定が確定したときは、届出再生債権者及び自認債権を有する再生債権者の権利は、再生計画の定めに従い、変更される(179@)。また、前項に規定する再生債権者は、その有する債権が確定している場合に限り、再生計画の定めによって認められた権利を行使することができる(179A)。
  • カ 確定判決度同一の効力と執行力
     再生計画認可の決定が確定したときは、裁判所書記官は、再生計画の条項を再生債権者表に記載しなければならない(180@)。また、前項の場合には、再生債権に基づき再生計画の定めによって認められた権利については、その再生債権者表の記載は、再生債務者、再生債権者及び再生のために債務を負担し、又は担保を提供する者に対して、確定判決と同一の効力を有し(180A)、第1項の場合には、前項の権利で金銭の支払その他の給付の請求を内容とするものを有する者は、再生債務者及び再生のために債務を負担した者に対して、その再生債権者表の記載により強制執行をすることができる。
  • キ 届出のない再生債権について
  • ク 中止中の手続は失効する。
     再生計画認可の決定が確定したときは、破産手続開始、再生手続開始、特別清算手続開始の申立、強制執行の手続は、効力を失う(184)。ただし39Aによる手続は続行する。効力を失った破産手続における財団債権は共益債権になる(939B@)。
4,再生計画認可後の手続
(1) 再生計画の遂行
 再生計画認可の決定が確定したときは、法186で、再生債務者等は、速やかに、再生計画を遂行しなければならないこと、監督委員が選任されているときは、監督委員は、再生債務者の再生計画の遂行を監督すること、裁判所は、必要があると認めるときは、再生債務者等や再生計画で連帯債務等を約束したものに対し、担保を立てるべきことを命ずることができること、が定められている。
(2) 再生計画の変更
 法187@は、やむを得ない事由で再生計画に定める事項を変更する必要が生じたときは、裁判所は、再生手続終了前に限り、再生計画を変更することができること、が定められている。

  
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