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先物取引

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<先物取引


1 先物取引と委託証拠金
被害者は、先物取引と委託証拠金の理解が出来ていない。
 素人が先物取引を始めるきっかけは、先物取引業者の外務員からの勧誘がほとんどです。その時に、先物取引や委託証拠金の説明がなされるのですが、被害者の多くはそれを正しく理解出来ていません。最初の誤解の最大なものは、委託証拠金と取引代金の違いです。

先物取引とは?
  そこで、先物取引について説明します。
  先物取引とは、委託証拠金を預けて、委託証拠金の10倍ないし20倍の金額の「売り玉」または「買い玉」を建て、限月までに、売り建玉に対しては買い手仕舞いをし、また買い建玉に対しては売り手仕舞いをして、差損益を精算する取引を言います。
  なお限月とは、手仕舞いして決済する「期限の月」の略称です。

委託証拠金とは?
 委託証拠金とは、先物取引を行う時にその担保として商品取引員(先物取引業者)に預託しなければならない現金または株式や国債などの有価証券等です。
 被害者の最初の誤解は、委託証拠金の金額が取引代金額であるという誤解です。
 ところが、委託証拠金の金額は、通常は、取引総代金の5%〜10%で、業者によっては、5%より少ない委託証拠金で先物取引をさせている例もありますので、委託証拠金が5%である場合、取引総代金は委託証拠金の20倍までの金額になります。

 先物取引の被害者は、例えば300万円の委託証拠金を預託して300万円の先物取引をしていたつもりが、実は6,000万円もの取引をしていたということを後で知り、愕然とするのです。

2 委託追証拠金(いたくおいしょうこきん)を要求されてパニックに陥る

 委託追証拠金(いたくおいしょうこきん)とは、相場が思惑通りに動かず、損計算額が発生し、その金額が預託している委託本証拠金の半額を超えた場合に担保補強のために追加で預託しなければならない証拠金のことです。「追証(おいしょう)」とも呼ばれています。

 
委託証拠金が取引総代金の5%であるとすると、買い玉を建てた後、値段がわずか2.5%下がるだけで追証が発生します。
 先物被害者の多くは、この追証の要求にパニックを起こし、冷静な判断ができなくなるのです。それは最初に預託した委託証拠金だけの損害では済まず、それ以外に追証分の損害が発生したと思いこみ、今後いくら損害が発生するか分からないという精神状態に陥るためです。この時点で、冷静に考え、買建玉を手じまえば、委託証拠金の半分の損で済むのですが、そのように考える被害者はおらず、先物業者の外務員の判断を求め、以後外務員の言うなりになって行くのです。
 値動きの激しい先物の取引では、2.5%程度の値動きは常時あるわけですから、取引を始めたその日のうちに追証を求められてパニックに陥る被害者は稀ではありません。

用語例
 なお、「追証攻め」という言葉がありますが、これは、追証拠金を預託しなければならないように相手方を窮地に陥れることをいいます。

3 無意味な両建の勧め
 追証を要求されパニックに陥った被害者に対し、先物業者の外務員は両建を勧めます。
 両建とは、同一商品、同一限月の売り玉と買い玉とを同時に建てておくことをいいます。両建は、先物取引業者の説明では、建玉が一時的に損失計算となっても、投げや踏みによって大きな損害をこうむることで退かなくてもいいように、売り玉と買い玉の両方を立てて一方の損失を食い止め、適当と思うときに一方の建玉を外して残った建玉で利益を得ようとする売買戦法として行われるものだというのですが、しかしながら、両建は値が上がっても下がっても、一方の利益は他方の損また一方の損は他方の利益で相殺されますので、損失は出ない代わりに利益も出ないという、取引事態は全く意味のない、しかし、先物取引業者に手数料を支払うことで一方的に損になる取引です。

 また、先物取引業者は、両建をすると追証がいらないと言いますが、委託証拠金が半減した以上は追証は入りますし、両建による新規の建て玉にも委託証拠金が要るのですから、両建をしたからといって追証や委託証拠金が不要になるわけではありませんので、ここで追証を預託させない両建は違法という外はなく、先物取引業者があえて違法な委託証拠金のない取引をさせるのは、無意味な両建に誘い込むのが目的であることは明らかです。

 しかし被害者はこのことに気がつかず、両建をすることでこれ以上の損失は出ないと思ってまずは安心します。
 これが、その後の恐ろしい先物被害の始まりになります。

4 取引の継続−無意味な取引の反復
 買い建玉に根洗損がでましたが、同一商品の売り玉を建て(両建)ましたので、被害者は、これ以上の損失が出ないことにほっとします。実は、この時点で、被害者は、儲けるために先物取引を始めたのに、委託証拠金の半額以上の損を出して、それ以上の損が出ないということで安心してしまっている自分の姿に矛盾を感じないといけないのですが、追証の恐怖から救われた安心感の方が大きくて、この矛盾に気づく人はあまりいません。

 先物取引業者は、被害者のこの安心感の上に乗って、さらに先物取引を勧めます。しかも、両建に対する被害者の抵抗感がなくなっているので、その取引は、買い建て一方でも、売り建て一方でもなく、両建で先物取引に誘い込むのです。


5 目くらましの利益の創出
 取引の途中で、先物取引業者は被害者に利益を提供します。

 Aさんは、次の取引をしていました。これは実際の数字ではなく例として書いた数字ですが、目くらましの利益を作り出す方法を示します。
  買い建て   売り建て
日時   単価  代金額  日時 単価  代金額 
 8/5  2,870  2,870万円  8/5  2,870  2,870万円
 8/7  2,860  2,860万円  8/7  2,860  2,860万円
 8/9  2,880  2,880万円  8/9  2,880  2,880万円
 8/12  2,890  2,890万円  8/12  2,890  2,890万円
 見事なまでの両建です。したがって、Aさんのこの時点での取引では、値洗いをしても差損益は出ません。値洗いとは、その時点で精算したと仮定して計算することです。
 さて、8/18になりました。先物取引業者はここでAさんのために利益を出します。
 相場は2,880円でした。そこで先物取引業者は、8/7の買い建て(買値2,860円)を売り手仕舞いしました。その結果、手数料を無視すると、単価20円、代金で20万円のもうけが出ました。手数料を引かれ、10万円を手にしました。

 しかしその結果、Aさんの建玉は次のものに減少し、値洗い損20万円が発生しています。
 なお建玉とは、 取引所において売買取引され、決済末了のものをいいます。
  買い建て   売り建て
日時   単価  代金額  日時 単価  代金額 
 8/5  2,870  2,870万円  8/5  2,870  2,870万円
       8/7  2,860  2,860万円
 8/9  2,880  2,880万円  8/9  2,880  2,880万円
 8/12  2,890  2,890万円  8/12  2,890  2,890万円
 結局、Aさんは10万円 儲けたように見えますが、実際は20万円の値洗い損を出していますので、差し引き10万円の損を出しているのです。そして先物取引業者は10万円を儲けました。
  これが目くらましの見せかけの儲けの姿です。


6 儲けを委託証拠金に、そして追加の委託証拠金が
 先物取引業者は、Aさんが10万円を儲けたことを報告し、Aさんにさらに儲けてもらうために、この儲けを委託証拠金にして先物取引をすることを勧めます。そればかりではなく、また新たに委託証拠金を預託してさらに先物取引を拡大することを勧めます。むろん儲けが一段と大きくなる話をしますので、Aさんの夢は一段とふくらみます。気を良くしたAさんは、この言葉に従いますと、先物取引の金額が一段と増えていきます。
 そしてこのような取引が継続していくのですが、表面に出てくるAさんの儲けとは裏腹に、Aさんの値洗い損はどんどん拡大していきます。一方で、先物取引業者は手数料がどんどん入ってくるのです。

 このころになると、被害者は、もう先物取引業者の外務員や担当者のいいなりです。
 新聞報道などでお分かりいただけると思いますが、先物取引で損を出す人の損失の額は数千万、数億円とかなり大きい金額になっています。しかしこれらの被害者は、はじめからそのような大金の取引をするつもりがあったのではなく、先物取引業者の外務員のいいなりになって次々に委託証拠金を送っていたらそうなったという形で被害が巨大化しているのです。


7 悪質な先物取引業者は向い玉で向かう
 向い玉(むかいぎょく)とは、委託の売買注文に対応して商品取引員が建てる自己玉のことをいいます。要は、客には値が上がるからと言って買わせながら、実は先物取引業者が自分で持っている商品を売りつけること、あるいは、値が下がるからと言って売らせながら、先物取引業者が買っていることです。これは法的に規制されているのですが、被害者には、自分の取引の相手方は誰かが分かりません(裁判になり先物取引市場への調査をするまでは分からない仕組みです。)ので、先物取引業者も自由にできるのです。

 ある裁判例では、先物取引業者が「売り」「買い」とも、9割以上の向い玉をぶつけて被害者に先物取引をさせていました。この事件の被害者の損害額は約1億3000万円です。そしてその内訳は、売買の手数料の差損による損失が6500万円、先物取引業者に支払った手数料が6500万円になっています。この件では、先物取引業者は委託手数料で儲け、向い玉で儲け、被害者の損失の大半は先物取引業者の儲けになっているのです。


8 儲けを委託証拠金にして取引を続ける危険性−10戦10勝はありえない
 最初の取引で儲けが出ました。儲けを証拠金としてさらに先物取引をします。金額が大きくなっています。2回目の先物取引でも儲けました。この儲けも証拠金としてさらに先物取引を続けます。この結果の取引額は一段と大きくなっています。3回目の先物取引も儲けが出ました。その儲けも証拠金として先物取引を続けました。取引額はどんどん大きくなっています。4回目、5回目も同じ経過で儲けが証拠金になりどんどんと先物取引金額が膨らんでいきます。そして10回目に損が出ました。この結果は、証拠金が巨大になっているだけに、損失額は巨大なものになっており、それまでの儲けが吹っ飛んでしまうだけでなく、取引の拡大の過程で新たに預託した証拠金もすべて喪失することになります。業者まかせの先物取引の結果はこのような惨たるものになるのです。

 儲けをさらに証拠金にさせて取引を拡大させるという先物取引業者の方針の下では、10戦10勝の戦果がない限り破綻します。また、10戦10勝の戦果はありえないことです。あなたが100円玉を空中に放りあげ、落ちてくるコインを手のひらに受け取ります。10回続けてみてください。10回とも同じ面が出ることはありません。10戦10勝はありえないのです。

 ある裁判例は、「売り」も「買い」も約54億円の取引になっています。そして1億3000万円の損失を被ったのです。これが普通のサラリーマンが、当初は300万円の先物取引のつもりで始めた先物取引の結果なのです。いつの間にか取引も損も巨大なものになっている。これが、先物取引の恐ろしさです。


9 無断売買
 時に、先物取引業者の無断売買が問題にされます。次の取引は、当事務所で扱った裁判例のある日の取引の内容です。

@ まず前場で、3,100円、3,130円、3,180円で売り(手仕舞い)ます。これは以前に買い建てて
 いたものの手仕舞いですので、この売りは不自然ではありません。
A その後相場が下がってきましたので、3,080円で買っています。
   これも売った値段より安くなったので買ったのですから不自然ではありません。
   しかしながら、
B その後3,120円、3,140円で買っています。
   この取引は不自然です。これだと@で3,100円、3,130円で売る必要はなかったと言えます。
C 続いて3,120円で売っています。3,140円で買った直後の売りです。
   みすみす損をする売りです。
D 前場の終わりに3,140円で買っています。
   これだとその直前での3,120円の売りがますます理解できません。
E 後場になりました。すぐに3,140円で買っています。
   3,120円で売った直後の買いです。これも理解できません。
   続いて3,200円でも買っています。これも理解できません。

 以上が1日の取引です。被害者から見ると、安く売り、高く買うというこの日の取引は、原則もなければ売り買いの目標値もない取引、先物取引業者から見ると、膨大な手数料を得、先物取引業者が向い玉をしている関係で、売買差益でも儲けている取引です。
 被害者は、この取引は無断でなされた取引であると主張し、先物取引業者は争っていますが、同じ人間が、矛盾きわまるこのような取引をするとは考えられません。先物取引業者の無断売買か、判断能力を喪失した被害者が、なにも理解できない状況の中で、先物取引業者の担当者のいいなりになったかのどちらかです。判断能力のある人間なら、このような矛盾に満ち、損するだけの取引をするはずはありませんが、現実には、このような取引がなされているのです。先物取引の危険性がここにも見られます。


10 手仕舞い拒否
先物取引で大きな損を出した被害者が、先物取引業者の担当者にすべての建て玉を手仕舞い、先物取引をやめたいと申出ても、やめさせてくれない場合があります。
  当事務所で扱った事案ですが、被害者の代理人である弁護士から、先物取引業者の担当者に電話で手仕舞いを指示し、担当者が「分かりました。明日、前場が始まったらすぐに成り行きで手仕舞います。」とまで言いながら、その後被害者に電話をして、「手仕舞うためには、あなたから委託臨時増証拠金(いたくりんじまししょうこきん)を支払って貰わなければなりません。その金額を振り込んで貰わないと手仕舞うことはできません。」と言って、手仕舞い拒否をした事例もあります。ここで言う委託臨時増証拠金とは、相場に著しい変動が予想される場合、建玉を持っている委託者から臨時に追加預託させる委託証拠金のことをいいますが、それが証拠金である以上、建て玉を維持するために必要なものであって、建て玉を手仕舞ってしまう場合には必要性のないものですから、手仕舞うために委託臨時増証拠金の預託が必要であるということはありえないことです。この件は、担当弁護士からその点を追求し、先物取引業者の担当者も自分の言ったことの間違いを認めましたが、これ以外にも「相場が落ち着かないので、手仕舞いはできない。」「今やめるとさらにお金が必要だ」「今やめるのはもったいない。必ず損は取り戻してみせる。」などと言って、手仕舞いを事実上拒否することがあります。

  このような場合は、弁護士名の内容証明郵便で、内容証明郵便受領後、最初の取引の機会にすべての建て玉を手仕舞うことを指示し、証拠に残すようにすればよいと思います。経験上、弁護士が内容証明郵便で指示してもなお手仕舞いを拒否する先物取引業者業者はないと言えます。


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