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商取引

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<商取引

継続的供給契約


1 売買申込証拠金は全額返還が原則
継続的に商品を買い受けてきた小売店に対し,メーカーないし問屋が突然出荷を停止すると言ってくることが許されますか?
一方的に解約されたときはどの程度の損害賠償の請求ができますか?

 平成5年6月21日大阪地方裁判所決定は,「特定の種類の商品についての継続的供給契約が締結されている場合において,売主が買主からの発注に対して,これを承諾せずその出荷を停止することが許されるのは,買主側に支払遅延,支払停止等代金回収についての不安が存し,あるいは契約当事者間の信頼関係を破壊するような特段の事情がある場合等,売主側の出荷停止を止む得ないものとして是認される場合に限られ,そのような事情がないのに出荷を停止することは許されず,売主側は買主側からの発注を承諾のうえ,在庫商品を速やかに出荷すべき義務があるというべきである。」として,ジーンズについての継続的売買契約において,売主のとった出荷停止措置が,買主がジーンズを安売店へ卸売しないようにとの売主の要求に応じないことをもってなされたものであるときは,買主と売主との間の信頼関係を破壊するような特段の事情に該当するものとすることはできず,売主側の出荷停止がやむを得ないものとして是認される場合に当たらないことを理由に,買主の,ジーンズ製品の継続的な供給を受ける契約上の権利を有する地位を仮に定めるとともに,売主に対し製品の仮引渡しを命じました(仮処分事案)。解約ができないのに,売主が一方的に解約をし,出荷停止をしたときは,どの程度の損害賠償の請求が出来るのかに関しては,平成7年11月7日大阪地方裁判所判決は「商品供給停止から1年間の得べかりし利益を相当因果関係のある損害として賠償すべきである。」と判示し,平均年間売上高から平均年間売上げ原価と平均年間変動費を控除した1年間の平均営業利益相当の損害賠償を命じましたが,その控訴審では,商品供給停止から5か月分に相当する損害の賠償しか認めませんでした。事案によりますが,一般的には,半年から1年間くらいの得べかりし利益の請求が認められる感じです。

機械の修理代−不当利得返還請求


2 売買申込証拠金は全額返還が原則
機械の修理会社が,A社から頼まれて機械を修理し,A社に引き渡した後,A社が倒産し,その機械は所有権留保付で売っていた販売会社B社が持って帰った場合,修理会社は販売会社B社に修理代を請求することができるか。

 修理により価値が増えた分にについてのみ,請求できます。
  昭和59年12月27日東京地方裁判所判決(判例時報1172号74頁・判例タイムズ553号182頁)は,修理会社が,所有権留保附で建設機械を買受けた者の依頼により建設機械を修理したが,この買受人がその後破産し,販売会社によって,機械が引き揚げられた場合は,その機械の引き揚げは,修理により価値が附加された後の機械の引き揚げであるから,修理業者は,修理代金相当額の損失を被り,他方これにより機械を引き揚げた販売業者は,修理による附加価値に相当する利益を受けたもので,右損失と利得の間には因果関係があり,機械の修理業者は,販売業者に対し,附加価値分の支払いを請求することができる,と判示しておりますので,修理により価値が増えた分にについてのみ,請求できることになります。

LPガス販売事業者の顧客切り替え問題−過当競争

 (背景)
 今,LPガス販売事業者間での過当競争が問題になっています。
 平成8年に液化石油ガス法が改正され,LPガスの販売事業が許可制から登録制に変更になりました。これによるLPガス販売事業者数の増加が,業者間の顧客獲得競争を激化させており,これに近年は,都市ガス販売事業者との競争も激化しています。
(無償配管の慣行)
 昭和40年代後半から,LPガス販売事業者は,顧客を確保するために,消費者の建物に,無償で,ガス配管設備(後述の「消費設備」を含む)を設置してあげ,消費者との間に継続的なガスの販売が続けられることを期待するが,競争会社(後行ガス販売事業者)が,消費者に,より安くガスを販売することを申し出,先行の販売事業者が建物に設置したガス配管設備を撤去してしまう等の行為が繰り返されており,そのため裁判にまでなっています。
  現在は都市ガス販売事業者も同じようなサービスをし,顧客獲得活動をしており,LPガス販売事業者との間でトラブルも起きています。
  このようなガス販売業者間の紛争の多発化に解決の指針とするための,Q&Aを書いてみました。

3−1 ガス配管設備や消費設備は誰の所有か。販売事業者の所有か。建物に附合して建物の所有者に帰属することになっているのか。
 さいたま地方裁判所平成17年7月22日判決は(1)のような配管工事につき,(2)のような法的判断をし,無償配管工事にかかる配管部分の所有権は,(少なくとも,ボンベからメーターまでの屋外のガス配管設備を除く,メーターから燃焼機器までの屋内の消費設備は,)建物の所有権に含まれると判示しています。

(1) ガス販売事業者が設置した設備
  建物の外壁にガスボンベが4個設置され,それぞれのガスボンベは,ガスホースによって調整器と接続(ただし,ガスボンベ,ガスホース及び調整器は,供給契約の解約後まもなく撤去)。調整器は外壁に支持金具で固定され,ガス管(鋼管)でガスメーターと接続。ガス管の一部は地中に埋設され,途中,絶縁ソケット,ガスメーターコックが設置。ガスメーターは,調整器と同様に支持金具で建物外壁に固定。
  ガスメーターとガス機器の間は,ガスメーターから約50センチメートルまでがガス管(鋼管),その先はフレキ管で接続。ガス管(鋼管)とフレキ管の間には検圧プラグが設置。フレキ管は建物の外壁を貫通して,建物の中に導かれている。上記外壁を貫通した部分はコーキング材でふさがれ,固着されている。建物の内部のフレキ管は数か所プラスチック製の留め具で基礎木に固定。フレキ管は,途中で分岐し,ガスコンロ用と給湯器用の2本に分岐。ガスコンロ用のフレキ管は,台所の基礎木に開けられた穴から壁面を経由してガスレンジ下の収納ボックスに現れている。このフレキ管とガスコンロ用のフレキガス栓が接続。給湯器用のフレキ管は,途中,洗面所及び浴室の床下を経由している。洗面所及び浴室の床下には水道管や浴槽も設置されており,フレキ管は,それらの間を縫うように設置。給湯器は本件建物の外壁に固定。フレキ管は再び外壁を貫通して本件建物の外に導かれ,給湯器用のフレキガス栓に接続。外壁を貫通した部分は,コーキング材でふさがれ固着,というものだった。

(2) 判断 
  本件設備を本件建物から分離するためには,本件建物の外壁及び床の一部をいったん破壊又は取り外すなどして,本件設備を露出させて工事を行う必要があり,復旧の点も考慮すると,多額の費用を必要とするものと認められる。また,ガスは日常生活に不可欠なエネルギーであり,住宅にはガス設備(又はこれに代わりうる電気設備)が備えられており,本件設備を本件建物から分離すれば,本件建物を住居として使用する以上,これに代わるガス設備等を改めて設置しなければならない。他方,本件設備を構成する各部品は,本件建物に合わせて個別に加工されており,本件設備を取り外したとしても,これを別の建物等に設置するなどして再利用することは困難である。・・・本件設備は,本件建物に設置された時点で,独立の取引客体としての性質を失い,本件建物の構成部分となったものと認められる。


3−3 では,先行のガス販売事業者が顧客との間に,顧客が後行のガス販売事業者にガス販売事業者を代えたときは,一定の金額を支払ってもらう旨の契約を結んでいたとき,その金額の請求は出来るか。
  さいたま地方裁判所平成15年3月26日判決は,ガス販売事業者は事業者であり,個人の顧客は消費者であるから,消費者契約法の適用を受けるが,消費者契約法9条1号は,消費者契約において,契約の解除に伴う違約金条項を定めた場合,その額が当該条項において設定された解除の事由,時期等の区分に応じ,当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害額を超える場合は,当該超える部分は無効と定めている。であるから,ガス販売事業者も,業者の切り替えによる違約金を請求する場合,平均的な損害額の限度で請求することができるにすぎない。ガス切り替え工事のために一定の工事費用や通信費等の事務費用等がかかることは想定されるが,いずれも高額なものではなく,本件契約が締結されてから解約まで約5か月経過し,原告はガス料金により一定限度これら費用を回収していると考えられること等に照らすと,平均的な損害額について原告から具体的な主張立証がない以上,本件において「平均的な損害」やそれを超える部分を認定することは相当でないというべきである,と判示しているので,平均的損害は請求できるが,実際上その金額の算定は困難であり,事実上,金銭の請求は出来ないのではないかと思われます。

  東京高等裁判所平成20年12月17日判決も,LPガス販売事業者(先行業者:甲)が,各消費者の自宅建物にLPガスの消費配管設備等を無償で設置した上で,消費者が契約を途中で解約する場合にはLPガス販売事業者に対して一定の金額を支払う旨のLPガス供給契約を締結した場合,その合意は,消費者の解約に伴う違約金を定めたものと解すべきであるので,消費者契約法9条1号により,当該契約の解消により業者に生ずべき平均的な損害を超えて定められた違約金部分は無効であるとした判示しています。


3−4 では,ガス販売業者との間のガス販売契約で,解約時はガス販売業者から消費者に対しガス配管工事の残存価格を請求できる旨の約束をした場合はどうか。
東京高等裁判所平成18年4月13日判決は,消費者が,LPガス販売事業者との間のLPガス販売契約において,同契約を解約する場合には,LPガス設備及び給湯器の減価償却後の残存価値の支払請求を認めています。

3−5 ガス配管設備が建物の所有者のものになっているときは,建物の所有者は,無断でこれを撤去しても良いか。
 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律第16条第2項は「液化石油ガス販売事業者は,経済産業省令で定める基準に従つて液化石油ガスの販売(販売に係る貯蔵を含む。)をしなければならない」と定め,同法施行規則第16条16号には「一般消費者等から液化石油ガス販売契約の解除の申し出があった場合において,当該一般消費者等から要求があった場合には,液化石油ガス販売事業者はその所有する供給設備を遅滞なく撤去すること。ただし,撤去が著しく困難である場合その他正当な事由があると認められる場合は,この限りでない。」との規定があるので,先行のガス販売事業者は,供給設備を速やかに撤去しなければなりませんが,これをしないときは,後行のガス販売事業者は,先行のガス販売事業者が設置したガス配管設備を,先行のガス販売事業者に無断で撤去しても良いかガス販売事業者という問題です。

  これについては,本来,実力行使は自力執行として許されませんが,先行のガス販売事業者がガス配管設備を撤去しないと,後行のガス販売事業者がガス配管設備を設置できないという現状があるためか,同法施行規則第16条15号の2は「新たに一般消費者等に対し液化石油ガスを供給する場合において,当該一般消費者等に液化石油ガスを供給する他の液化石油ガス販売事業者の所有する供給設備が既に設置されているときは,一般消費者等から当該液化石油ガス販売事業者に対して液化石油ガス販売契約の解除の申し出があってから相当期間が経過するまでは,当該供給設備を撤去しないこと。ただし,当該供給設備を撤去することについて当該液化石油ガス販売事業者の同意を得ているときは,この限りでない。」との定めが置かれています。これは,「相当期間
(参照記載の通達で「1週間」)経過後は,後行のガス販売事業者が先行のガス販売事業者が設置したガス配管設備を撤去することを許した規定と理解されていますが,この解釈には疑問があります。
 その理由は,法律は自力執行行為を認めていないのに,一片の通達が,後行のガス販売事業者に,先行のガス販売事業者が設置したガス配管設備を,実力でもって,撤去する権限を与えることなどできるわけはないからです。
 業者間競争激化の折から,この通達が,ガス販売事業社同士の実力行使を認めたと解されるときは,無秩序な実力行使の応酬という事態すら生じかねません。まさか,経産省が,そのような事態を容認したとは思えません。
 
参照:液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則(平成9年通商産業省令第11号)の運用及び解釈の基準について
 「相当期間」については,供給設備を所有する液化石油ガス販売事業者の業務状況は一般消費者等との間の液化石油ガス料金等の精算手続のために必要な期間等を総合的に勘案して判断するものとし,原則として一週間を基準とする。
 


3−6 ガス販売業者が顧客のガス販売業者の変更に対抗する目的で,ガス消費設備を撤去することは許されるか。
 許されません。ガス消費設備は,建物の一部になっているので,ガス販売業者の所有権は及ばないからです。

3−7 ガス配管設備を設置してあげたガス販売事業者は,新たに出現し顧客を奪った競争会社の販売事業者に対し,文句を言えないのか。
 さいたま地方裁判所平成19年2月16日判決は,LPガス販売事業者(先行業者:甲)が,各消費者の自宅建物にLPガスの消費配管設備等を無償で設置した上で,LPガス供給契約を締結していたところ,同じくLPガス販売事業者である他のLPガス販売事業者(後行業者:乙)が,甲より安い料金を提示するなどして勧誘したことにより,各消費者が,甲との契約を解消し,乙からLPガスの供給を受けるようになったことに関し,甲が,乙の行為によって,継続的にLPガスを供給することによって消費配管設備等の設置費用を回収し得る権利ないし地位を侵害されたと主張して,損害賠償を求めた事案で,甲の,本件各消費者に対し継続的にLPガスを供給することによって本件設備等の設置費用を回収し得る権利ないし地位は,法律上保護されるべき利益ということはできず,これを被侵害利益とする不法行為の主張は認められないと判示しているので,先行業者は,後行業者に対し,損害賠償の請求は出来ない,と判示しています。

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