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相続財産3

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<【相続財産】3 預金(1) −預金は全相続人の書面がないと払い戻しに応じてもらえないのか


3 預金(1) −預金は全相続人の書面がないと払い戻しに応じてもらえないのか
1−1祭祀の承継者は誰がなるか。 1−2 墓地は相続の対象になるか。 2 遺体や遺骨は誰のものか。 3 預金(1) 4 預金(2) 5−1 生命保険金 5−2 死亡生命保険金は特別受益になるか。 6 遺族年金 7 死亡退職金 8 遺産であるアパートから得られる賃料は誰のものか。 9 1人の相続人から、被相続人の全預金取引経過の開示請求ができる。


3 預金(1) −預金は全相続人の書面がないと払い戻しに応じてもらえないのか
 父が死亡し相続が開始しましたが、遺産の中に預金がありましたので、銀行に対し私の相続分だけ支払いを請求しましたところ、銀行からは、相続人全員の領収書か遺産分割協議書(遺産分割調停調書か審判の謄本を含む。)の提出がないと払戻しに応じられないと言われました。
 このようなことが認められるのですか。

 法律上は、各相続人が自分の相続分について単独で払戻の請求が可能ですが、銀行実務は、これを認めていません。
 どうしても単独で払戻をしてもらいたいと考えられるときは、訴訟を起こさなければなりません。
【解説】
 最高裁判例は、預金などの可分債権は、相続開始とともに法律上各相続人に分割され、各相続人は、その相続分に応じて権利を承継するとしています(これを分割債権説といいます。)が、銀行実務は相続預金の払戻しは共同相続人全員でしなければならないとしており、最高裁判所の見解を認めていません
 銀行実務は、相続人の相続分が必ずしも明らかでない場合があるので、各相続人に法定相続分どおりの払戻に応じていたのでは、実際の相続分(遺言による指定相続分や、遺産分割協議の結果による相続分)が法定相続分と異なる場合は、銀行に二重払いの危険が生ずる、として、相続人全員の領収書か遺産分割協議書(遺産分割調停調書か審判の謄本を含む。)の提出がないと払戻しに応じられないとの対応をしています。
 下級審の裁判例の中には、銀行事務の取り扱いを事実たる慣習であるとして、その扱いを有効とするものもありますが、ほとんどの判例は銀行実務の取り扱いを有効なものとは認めていません。
 従って、あなたの場合、訴えを提起すれば、銀行も相続分に応じた預金の払戻しをしなければならないこととなります。
 特に、共同相続人の間において遺産分割協議が成立する可能性がほとんどない場合は、訴えを提起して、銀行に対し、自己の相続分の請求をする外にないことになります。
 なお、定額郵便貯金は、郵便貯金法で、分割払戻しの禁止を規定していますので、預入れから10年を経過するまでは、共同相続人の1人がその相続した部分について定額郵便貯金の払戻請求をすることは、定額郵便貯金の分割払戻請求になるので、国にはこれに応ずる義務はないというのが、判例(平成11年3月25日東京高等裁判所判決。平成13年3月23日最高裁判所は、上告不受決定)です。


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