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民事と税金に関するQ&A

ホーム弁護士菊池捷男の法律実務レポート 目次<民事と税金に関するQ&A


1 財産分与者に譲渡所得課税が!
 財産をもらった方にではなく、与えた方に税金がかかるって本当?

 単純な贈与の場合は、財産をもらった方に贈与税がかかります。
 しかし、離婚を原因とする財産分与で不動産が与えられた場合、もらった方にではなく、与えた方に譲渡所得課税問題が生じます。
 これは、財産分与をした方が、時価(実勢価格)でその不動産を売ったと同じ評価になるのです。
 最高裁は、この理由として、財産分与義務者は財産を譲渡することで財産分与義務が消滅するが、「この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがつて、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによつて、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。」と言っております(昭和50.5.27)。
 この経済的利益が、譲渡所得と評価されて、譲渡所得課税問題になるのです。
 さて、読者の皆さんはどの程度このことを知っていますか。
 離婚に伴い妻に土地を与えたところ、自分に税金がかかってきたとすると、夫はさぞやあわてるでしょうね。
 この場合は、財産分与契約を無効にする外はありません。
 これも最高裁判決ですが、夫が、実際には多額の譲渡所得税が自己に課せられるのに、課税されることはないと誤信して、「自己に課税されることはないということを当然の前提としかつこの旨を妻に黙示的に表示して」自己の土地建物を妻に譲渡する旨の財産分与契約を結んだケースで、夫には、財産分与契約に錯誤があるので、財産分与契約は無効であると判示しております。(平成元年9月14日判決)。

2 生命保険金と相続税
 生命保険金の受取人がいると、そうではない相続人は、税金の上で損になるの?


 そのような場合もありますので、具体例で説明します。

 夫が死亡し、妻と長男、長女の3人が相続人で、遺産が6000万円あり、妻と長男と長女が相続したとします。
 相続税は、遺産総額から相続税の基礎控除額を控除した後に残った金額(これを「課税遺産総額」といいます)がプラスでないと課税されませんが、基礎控除額は、5000万円に、相続人の数×1000万円を加えた金額ですから、8000万円になりますので、
 遺産総額が6000万円のままだとすると、ここから基礎控除額8000万円を控除した後の課税遺産額はプラスになりません。したがって、相続税は課せられないことになります。
 ところが、妻が生命保険金5000万円をもらったとすると、話は変わってきます。
生命保険金は、生命保険金控除額として相続人の数×500万円を控除した後は、遺産に加算されますので、これが3500万円となりますが、これにもともとの遺産額6000万円を加えますと、9500万円になります。ここから基礎控除額8000万円を引くと、課税遺産額は1500万円になり、相続税が課されることとなります。当然、生命保険金をもらえない長男と長女にも、税金がかかってきます。
 妻に生命保険金が入らなければ、相続税がかからなかった長男と長女ですが、妻に生命保険金が入ったおかげで、自分たちは1円の利得もないのに、税金のみかかるという例です。

3 譲渡所得税という税があるの?

 譲渡所得税という税はありません。
  資産を譲渡したとき、その代金から、資産の取得費及び譲渡費用の額を控除し、その残額である譲渡所得から譲渡所得の特別控除額を控除した金額がプラスである場合、そのプラスの金額に、所得税が課せられます(所得税法33条)。
  この税は、あくまで所得税であり、譲渡所得税ではありません。
  同じ譲渡所得でも、不動産の譲渡所得については、総合課税ではなく分離課税とされていますので、不動産の譲渡所得にだけ、あたかも独立の税が課せられる感があります。
  そのためでしょうか、譲渡所得にかかる所得税を譲渡所得税と言う言い方をする人が専門家の中にもいます。
  この譲渡所得税という言い方は、言いやすく、分かりやすい表現ですが、しかし、厳密には譲渡所得税なる税はありません。譲渡所得に課せられる所得税というのが正確な言い方になると思います。

4 アパートを壊して駐車場にしたら、固定資産税が大幅に増額になりました。
 どうしてなの?


 土地の使用方法が、住宅用と非住宅用とで、固定資産税の額が異なります。
 土地の使用が住宅用から非住宅用に変わると、200u以下の部分について、固定資産税は6倍になり、200uを超える部分については3倍になります。
 本来固定資産税は、固定資産課税台帳に登録された金額を課税標準額として課税される(地方税法349条)のですが、住宅用地については、200u以下については、固定資産税の課税標準額は、本来の課税標準となるべき価格の6分の1の額となり、200uを超える部分については、3分の1になっています(地方税法349条の3の2)ので、住宅用地が非住宅用地になれば、200u以下の部分について、固定資産税は6倍になり、200uを超える部分については3倍になるからです。
 

5 親の土地に家を建てさせてもらったが、地代を支払うのはやばいって本当?

 やばい、つまり、税金がかかる危険があります。
 建物の所有を目的に地代を支払って土地を借りることは、借地権の設定を受けたことになります。借地権は資産ですから、通常権利金が支払われる地域で権利金を支払うことなく借地権の設定を受けますと権利金分の贈与を受けたことになります(これを「権利金の認定課税」といいます。)。
 ただ、この場合、相当地代といわれる地代を支払っておれば、権利金の認定課税はされません。この場合の相当地代というのは、土地の自用地としての価額すなわち相続税評価による更地価額の過去3年間における平均額の6%程度とされています。
 つまり、認定課税を避けるためには、路線価2000万円程度の土地でしたら、年間その6%である120万円、つまり月10万円程度の地代を支払う必要があるのです。
 親子の間で、このような高額の地代を支払うことはまずないと思いますので、親から安い地代で土地を借りると、権利金の認定課税がなされ、何百万もの税金が課せられることになります。要注意です。
 なお、借地人か地主の双方または一方が法人である場合は、相当地代の支払の場合以外でも、税務署に「無償返還届」をすることで、権利金の認定課税を避けることができるのですが、借地人、地主とも個人の場合は、この制度は認められていません。

6 親の土地に家を建てさせてもらったが、地代を支払わない場合は、税金がかかるの?
 いいえ。原則として、かかりません。
 昭和43年11月25日大阪地方裁判所判決は、妻が夫から無償で土地を借受けた場合、つまり使用貸借契約を結んだ場合、借主である妻は、その契約によって無償で利益を受けているが、その利益は、通常権利金が支払われる地域であっても、権利金を支払わないですんだことによる権利金相当額ではなく、妻が夫に支払わずにすんだ賃料相当額である、と判示し、使用貸借契約では権利金の認定課税を認めませんでした。
 国税庁は、この判決を契機に、相続税法(相続税と贈与税)の取扱いを変更し、相続税個別通達昭48直資2−189「使用貸借に係る土地についての相続税お呼び贈与税の取扱いについて」で、取扱いを整備し、使用貸借の場合は権利金の認定課税をしないこと、地代相当の贈与についても、その金額が少額である場合や課税上弊害がないと認められる場合には贈与税は課税しないことにしました(相基通9−10)。

参考(国税庁のQ&Aより)
 親の土地に子供が家を建てたとき [平成17年4月1日現在法令等]
 土地の貸し借りが行われる場合に、借り手は地主に対して地代を支払います。
 権利金の支払が一般的となっている地域においては、地代のほか権利金などの一時金を借地権設定の対価として支払うのが通例です。しかし、親の土地に子供が家を建てたときに地代や権利金を支払うことは通常ありません。
 このように地代も権利金も支払うことなく土地を借りる場合を土地の使用貸借といいます。
 親の土地を使用貸借して子供が家を建てた場合、子供が親から借地権相当額の贈与を受けたことになるのではないかという疑問が生じます。
 しかし、使用貸借による土地を使用する権利の価額はゼロとして取り扱われていますので、この場合、子供に借地権相当額の贈与税が課税されることはありません。
 この使用貸借されている土地は将来親から子供が相続する時に相続税の対象となります。相続税の計算のときのこの土地の価額は他人に賃貸している土地ではなく自分が使っている土地として評価されます。つまり、貸宅地としての評価額でなく更地としての評価額になります。(昭48直資2−189)

<注意>
 なお、使用貸借契約を結んでも税金がかからないというのは、地主、借主とも個人の場合だけです。法人が関与しますと、税金がかかりますので、注意が必要です。


7 相続時精算課税って何?
 最近、相続時精算課税制度のことが話題になっていますが、この制度を利用すると得になるのですか。

 相続時精算課税制度というのは、親から子へ生前贈与をしても一定の条件をクリアすれば贈与税はかからず、親が死亡して相続が開始したときに相続税で清算するという制度ですが、この制度を利用することが得になるかどうかは、ケースにより、受贈者の事情により、異なります。

  まず、相続時精算課税制度の内容ですが、
  (1) これは親から子への生前贈与の場合に適用されますが、親の年齢は贈与する年の1月1日現在で65歳以上(ただし財産によっては異なる場合があります。)、子の年齢は20歳以上です。親には養親を含み、子には養子や代襲相続人を含みます。
  (2) この制度を利用するためには、受贈者が贈与税の申告時に選択届出書等を提出することが必要ですが、いったんこの届出をすると撤回が出来ません。
  (3) 相続時精算課税制度を利用すると、受贈者ごとに2500万円の特別控除額(財産によっては加算されます。)が認められますので、この範囲内の贈与であれば贈与税はかかりません。贈与税がかからない金額を引いた残りの贈与分の贈与税率は、一律20%です。

  以上だけを見れば、相続時精算課税制度は有利な税制に見えますが、
  (4) この制度を選択すれば、このときの贈与を含めそれ以後の子への贈与にかかる財産はすべて贈与時の価格で相続税の対象となる遺産に含められます。したがって、この制度を選択すると、生前贈与をすることにより相続時に課税対象となる遺産を減らして相続税を節税するというプランは立てられないことになります。
  (5) さらに、贈与された不動産については相続税の場合に認められる小規模宅地の評価減の適用は受けられず、贈与された財産については物納も認められないのです。さらに贈与された財産が未上場株式の場合評価減も認められません。
  (6) 不動産の贈与を受けた場合の登録免許税が、相続なら0.4%なのに贈与では2%となり、不動産取得税が、相続ならかからないのに贈与では3%かかるなどの問題もあります。
  (7) しかし、贈与財産が相続時までに値上がりしている場合は、相続税の課税価格は贈与時の価格で計算されますので、得になります。逆に値下がりしているときは損になります。

  具体的なケースで考えてみましょう。
  資産家の父親が、3人の子に住宅取得資金としてそれぞれ現金5000万円、合計1億5000万円を贈与した事例を前提にします。
1,まず税額の比較をします。
(1) 相続時精算課税制度を選択した場合
  • @ 一度に贈与した場合
     3人の子全員が、相続時精算課税制度の特別控除額2500万円に加えて、住宅取得資金の贈与の場合の特別控除額1000万円が認められ、合計3500万円3人分で合計1億0500万円までは無税となります。1人につき残り1500万円に20%の税率で300万円、3人分合計900万円の贈与税がかかります。この贈与税額は、親が死亡したときの相続税から引いてもらえます。相続税の方が安い場合は、差額が還付されます。
  • A 長期間に分けて贈与した場合
     贈与税の額は変わりません。特別控除額全額が使われた後の贈与分については一律20%の贈与税が課されますので、金額に変化は生じないのです。
(2) 相続時精算課税制度を選択しない場合
  • @ 一度に贈与した場合、
      親が3人の子それぞれに一度に5000万円ずつを贈与した場合は、1人につき2220万円、3人分合計6660万円の贈与税がかかります。
  • A 長期間に分けて贈与した場合
     例えば、10年間毎年500万円ずつに分けて贈与したとしますと、贈与税は1人毎年53万円かかるだけですから、3人分を合わせても3人×53万円×10年=1590万円しかかかりません。
     これは、通常の贈与税の場合は年間110万円の基礎控除額が認められていること、110万円を超える金額については10〜50%の超過累進課税となっているためです。
2,次に、父親が死亡して相続が開始したときの課税価格と相続税額を比較します。
(1) 相続時精算課税制度を選択した場合
 3人の子に贈与した合計1億5000万円は全額相続税の課税価格に算入されます。過去に納付した贈与税は相続税額から控除され、贈与税の方が多い場合はその分が還付されます。
 相続が生じたとき、最高で50%の相続税がかかりますので、1億5000万円の生前贈与分が課税価格に算入されると、最大で7500万円から贈与税として納付済みの金額を差し引いた額の相続税が増えることになります。

(2) 相続時精算課税制度を選択しない場合
 原則として生前贈与分の価額は相続税の課税価格に算入されません。算入されるのは相続開始前3年間の贈与だけです。10年500万円ずつ贈与をした上記の事例では、課税価格に算入されるのは最大で相続開始前3年分の贈与である4500万円(3人×500万円×3年)ですから、相続税は最大で2250万円増えることになります。なお、この場合3年分の贈与につき納付した贈与税53万円×3年×3人=477万円は贈与税額控除として相続税額から差し引かれます。

結論 
  相続時精算課税制度では、贈与した財産の価格が贈与時の価格で相続税の課税価格に算入されますので、値上がり確実な未上場株式や土地などを生前贈与する場合などは有利な制度と言えますが、一般には、親が資産家で相続人に高額の相続税がかかる場合は、相続時精算課税制度を利用しないで、毎年110万円の贈与税の基礎控除額や低率の贈与税率の範囲での贈与を継続した方が有利となる場合が多いでしょう。逆に、相続税があまりかからない場合は、相続時精算課税制度を選択すれば、相続発生前に、贈与税をあまり気にしないで、親から子に財産の移転が可能になりますので、子が財産を必要としている場合には有効だと思います。

8 贈与税の連帯納付義務
 愛人にマンションを贈与したが、贈与した方に贈与税がかかってくるって、本当?

 そういう場合もあります。
 贈与税は、贈与により財産を取得した者に課せられますので(相続税法21条)、このケースでは、贈与税の納税義務者は愛人さんになりますが、相続税法34条4項で、「財産を贈与した者は、・・・贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。」と規定して、贈与者にも、受贈者と連帯して納付する義務を課していますので、愛人さんが贈与税を納付しない場合は、贈与者が贈与税を納付しなければなりません。

 愛人にマンションを買い与えたところ、愛人がその愛人とともに、これを売り飛ばしていなくなり、あなたには贈与税だけをプレゼントしてくれることもあり得ます。くれぐれもご用心。

9 相続税の連帯納付義務
 兄弟2人で遺産分割をし、自分の相続税を納付しましたが、弟が弟の分の相続税を納付しなかったら、税務署より弟の相続税を納付せよといわれました。こんなのありなの?

 あり、です。
 相続税法34条2項は、「同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、当該被相続人に係る相続税又は贈与税について、その相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の責めに任ずる。」と規定しているからです。

10 時効取得と一時所得課税
 土地について時効取得が認められたが、所得税がかかるって本当?

 本当です。
 時効取得というのは、土地などの財産を、所有の意思をもって、善意無過失である場合は10年、それ以外は20年、占有することで認められる制度です。
 通常、時効取得は、裁判等で「援用」、つまり、時効取得を主張しますよ、という意思表示をしなければなりませんが、所得税法では、この援用をした時に、その財産を時価で取得したものと扱われます。所得は一時所得になりますので、その2分の1が総合課税対象の金額になります。
 注意すべきは、一時所得の時期です。50年以上自主占有(所有の意思をもって占有すること)し、20年経過したので時効取得したとすれば、一時所得をした時期は30年前になるのではないか? その場合は、所得税の時効期間5年(悪質な場合は7年)が経過しているので、税金はかからないのではないか?との期待を持たれると思いますが、残念ながら、税務署は甘くはありません。一時所得の時期は、時効の援用の時とされていますので、税金がかかります。
 では、裁判で勝っても、所有権移転登記をしないでおれば、税務署には一時所得の事実が分からないので、所得税の時効期間が完了するまで所有権移転登記をしないでおこうですって?しかしながら、その場合は、所有権移転登記の日から3年間は課税ができるという非公式見解があるようです。

11 遺産の再分割と贈与税(1)
 遺産分割をやり直すと、贈与税や譲渡所得課税がありなの?

はい。あり、なのです。
  • 1,相続税の納期は、相続の開始を知ったときから10ヶ月目です。
  • 2,相続税の申告をする場合は、配偶者に有利な税額軽減の特例として、1億6000万円か遺産の2分の1に相当する金額のいずれか多い金額が課税価格から控除されます
  • 3,また、小規模宅地の特例といいまして、宅地で最大400uまでは課税価格の8割が減額してもらえます。
  • 4,これらの配偶者の税額軽減措置や、小規模宅地の特例の適用を受けるには、遺産分割ができていることが条件になっています。
  • 5,納期限までに遺産分割ができている場合は、個々の相続人は自分の相続税を納付すればいいのですが、遺産分割が決まっていない場合でも、相続税の総額というものは分かっていますので、この 金額を全相続人が連帯して納付しなければなりません。
  • 6,さて、相続税の納期がやってきました。まだ遺産分割ができていません。 この場合は、配偶者に有利な税額軽減の特例も、小規模宅地の特例も受けられません。実は、納期限後でも遺産分割ができれば、そのときに配偶者に有利な税額 軽減の特例も、小規模宅地の特例も受けられるのですが(ただし原則として3年以内)、しかし、納期限までに遺産分割ができていな   い場合は、いったんは、配偶者の税額軽減特例も、小規模宅地の特例も受けずに、相続税を納めてい なければなりません。
  • 7,さて、困った。配偶者の軽減特例がないものとして相続税を納めることになる と、多額なお金が必要になる。そんなお金はない。そうだ、いったん遺産分割をしてしまおう。その後に、再度協議をして最終の遺産分割をしようと全相続人が相談して、とりあえずの案で相続したものとして申告しよう、と考え、申告しました。納期限内の申告ですので、配偶者は、相続税がかかりませんでした。小規模宅地の適用も受けられ、相続税がずいぶん安くあがりました。めでたし、めでたし、でした。
  • 8,そして、その後、全相続人間で、遺産分割の協議を続け、遺産分割ができました。当初の計画通りです。
  • 9,しかし、そこへ税務署から、遺産の再分割は認められないよ、最初の分割で受け取った財産が、再分割の際に移動しており、それが無償の移動の人は贈与税を納付してね、他の遺産と交換した人は譲渡所得課税問題が生ずるよ、と言ってきました。そうなのです。いったん遺産分割をしてしまえば、それにより遺産の帰属が決まってしまうのです。その後、再分割をしますと、遺産の譲渡があったとみなされるのです。その結果、贈与税がかかってきたり、譲渡所得課税問題が生ずるのです。   ご用心、ご用心。

12 遺産の再分割と贈与税(2)
 遺産分割が裁判で無効とされたので、やり直し遺産分割をした場合でも、贈与税や譲渡所得課税がありなの?

 その場合は、あり、ではありません。
 その場合は、最初の遺産分割が無効ですから、初めから遺産分割はなかったことになりますので、改めてする遺産分割は、分割後の再分割ではなく、贈与税や譲渡所得課税はありません。

 国税通則法23条2項は、当初の遺産分割による贈与税の「申告・・に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」は、「確定した日の翌日から起算して二月以内」に更正の請求ができる、と規定していますので、判決による場合だけでなく、判決と同一の効力を有する和解や調停によって、遺産分割が無効とされた場合は、その後に改めてする遺産分割については、贈与税や譲渡所得課税はないことになります。

 ところでです。もし、この国税通則法の規定を悪用する者が現れ、実は、無効ではない遺産分割を無効な遺産分割であるとして、なれ合い訴訟をしたり、和解をして、遺産分割を無効であることにし、やり直し分割をして贈与税や譲渡所得課税問題を避けようとしたら、うまくいくのでしょうか?
 実は、税務署は、このような不逞の輩がいるとの前提で、遺産分割の無効を言う者に厳重な注意を払っています。
 和解が判決と同一の効力があるといっても、訴えの提起前の和解(いわゆる即決和解)は和解とは見てくれません。判決であっても、なれ合い訴訟によるものと疑えるものは、遺産分割を無効とは見てくれません。

 法律の規定は前述の通りですが、こと税金に関しては、税務署は、ひ、じょう〜に、厳しいものがあります。ご用心、ご用心。


13 相続の限定承認と譲渡所得課税
 相続の限定承認をすると、譲渡所得課税が生ずるって本当?

 本当です。所得税法59条1項1号に、限定承認したら、そのときの時価で遺産を譲渡したものとして譲渡所得課税がなされるのです。
 一般に、限定承認は、債務が資産より多い場合か、債務が資産を超えるかもしれないと思われる場合になされますが、限定承認したものの結果において債務がなかったという場合には、遺産から不要な所得税を納付してしまったという結果になることもありますので、安易な限定承認は避けるべきです。
 なお、この場合に課せられる所得税は被相続人にかかるものですので、税金は遺産の中から支払われることになり、相続人が自分の固有財産から納付する義務はありません。

14 贈与に関する税金@
 父から子にマンションを贈与したが、子にかかる贈与税以外に、父にも税金がかかるの?

 いいえ。かかりません。
 贈与を受けた子には、マンションの相続税評価額を課税価格として贈与税がかかり、父には贈与税の連帯納付義務がありますが、父その者には税金はかかりません。

15 贈与に関する税金A
 父から子が経営する会社にマンションを贈与したが、税金はどうなるの?

 贈与した父には、財産を時価(実勢価格)で譲渡したものとして、譲渡所得課税が課され、贈与を受けた会社には、時価相当額の益金があったものとして法人税課税がなされます。

16 贈与に関する税金B
 子が、父が代表者をつとめる会社から、マンションの贈与を受けた場合の税金は?

 贈与をした会社には、時価で譲渡したものとして(取得価格を控除した益金に)法人税が課されます。
 贈与を受けた子には、マンションの時価分の所得があったものとして所得税課税が生じます。

17 贈与に関する税金C
 父が経営する会社のマンションを子が経営する会社に贈与した場合は?

 譲渡した会社には法人税、実勢価格から取得価格を控除した金額が課税価格になります。
 贈与を受けた会社には、実勢価格による益金があったものとして法人税が課されます。

18 抵当権と税金の優劣関係
 担保の入っていない土地に抵当権をつけてもらってお金を貸したところ、競売で、滞納税金があるから  配当は受けられないことになったが、こんなことってありなの?

 条件によっては、あり、です。

 国税徴収法16条は「納税者が国税の法定納期限等以前にその財産上に抵当権を設定しているときは、その国税は、その換価代金につき、その抵当権により担保される債権に次いで徴収する。」と定めていますので、抵当権設定より前に法定納期限等の到来した国税は、抵当権者に優先することになっています。
 この理は、抵当権だけでなく、質権、仮登記担保権についても、あたります。
 留置権は、留置権者が優先しますが、譲渡担保権の場合は、国税徴収法24条で「納税者が国税を滞納した場合において、その者が譲渡した財産でその譲渡により担保の目的となつているもの(以下「譲渡担保財産」という。)があるときは、その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められるときに限り、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる。」と規定されています。

19 税務調査の期間
 税務調査を受ける場合、調査の対象となる期間は何年間なの?

 国税通則法70条に規定がありますが、申告書の提出があつたものについては、申告書の提出期限から3年間、法人税については5年間、申告をしていない場合は5年間、脱税の事案では7年間、増額の更正処分が可能ですので、調査期間も同じ期間になります。
 ただし、税務当局からの減額の更正処分は5年間はできます。
 納税者からの更正の請求(税金が多すぎるので還付してもらいたいという申立)については、次項を参照して下さい。

20 更正の請求
 税金を払いすぎたので、還付を受けたいのだが、いつまでできるの?

 納税者からの通常の更正の請求(税金が多すぎるので還付してもらいたいという申立)は、国税通則法23条1項で、法定申告期限から1年間と定められていますが、申告の時は正しい税額だったものが、その後裁判で無効とされる等して、結果において過大な税金になった場合の、特別の更正の請求(後発的理由による更正の請求)は原則として2ヶ月です(国税通則法23条2項)。ただ、相続税については、相続税法32条の特則規定により4ヶ月とされています。

21 代償分割と換価分割では、どちらが税務上で有利なの?
 どちらが有利とは一概に言えませんが、相続をした遺産を売却することを考えますと、遺産を取得する人の立場で言えば、換価分割の方が有利です。お金をもらう立場の人は代償分割の方が有利です。
 つまり、代償分割で不動産を取得したとします。その人が不動産を売却すると、相続税の外に譲渡所得課税問題が生じます。この場合、代償金として他の相続人に支払った金額は、譲渡所得計算における取得費になりません(所得税基本通達38ー7)。譲渡所得課税がなされるときは、遺産を取得した人のみにかかってきます。
 逆に、お金をもらった人は、相続税の問題は生じますが、譲渡所得課税問題は生じません。
 換価分割の場合は、相続税の問題と譲渡所得課税の問題が生じますが、譲渡所得課税問題は、遺産を取得した人だけが負担するのではなく全相続人が分担することになります。


22 外国に住む人から日本にある不動産を1億円で購入したら、税務署から1000万円を支払えって言ってきたが、こんなのありなの?
 はい。あり、なのです。
 所得税法212条1項、213条1項で、非居住者や外国法人から、土地建物を購入した場合は、売買代金の10%を源泉徴収し、翌月の10日までに国に納付しなければならないことになっているのです。
 これは、外国に住む人が、国内にある土地建物を売却しながら、所得の申告をしないという例が多かったことから、平成2年に、国は、税金を逃さない目的で所得税を改正して、土地建物の買い主に源泉徴収義務を課し、買い主から、売買愛金の1割を回収しようとして始めた制度です。
 ただし、個人が自己又はその親族の居住用に土地建物を購入する場合で、売買代金が1億円以下の場合は、所得税法施行令281条の2により、源泉徴収の義務はありません。

23 遺留分減殺請求訴訟における和解と相続税問題の処置
 XからYに対し遺留分減殺請求をし、これが認められますと、Yは、Xに財産を交付する分、相続財産が減りますので、税金の払いすぎの問題(更正の請求による還付金の払戻し)が起こります。一方、Xには、その分相続する財産が増えますので、相続税の納付(修正申告か更正決定)の問題が起こります。
 相続税の総額は同じですから、多くの場合、Xが修正申告で新たに納付することになる相続税の額と、Yが更正の請求をして還付を受ける金額が同一のケースになると思われますが、このようなケースでは、XとYの和解の際に、税金問題を含めて和解し、Yからは税務署長に対し、更正の請求をしないで、またXからも修正申告をしないで、YからXへは、相続税の還付金を控除した残額を支払う場合があります。
 しかしながら、当事者間の合意だけで税金問題を解決することはできませんので、このような和解をした場合でも、Xは修正申告をし、また、Yは更正の請求をしなければなりません。
 それでは、前述のような和解はできないのかという疑問が生じますが、税務の実務では、Yから税務署長宛に、更正の請求をし、更正の請求により生ずる還付請求権をXに譲渡するという通知書を交付し、Xは修正申告で納付すべき相続税額とYより譲渡を受けた還付金の額とを相殺する書面を提出して、事実上、Xは相続税を納付せず、Yは還付を受けないという扱いができるようですので、上記の和解ができることになっているようです。

24 金融機関の取引先が破産手続開始の申立をした場合の問題
金融機関の取引先が破産手続開始の申立をした場合は、
(1) まず、金融機関は、当該取引先の債務者区分を「破綻先」として、破産先債権を自己査定します。
「金融検査マニュアル」での基準では、
  • @ 当該取引先に対する債権のうち、上場有価証券や預金担保、決済確実な商業手形担保など の別除権や、金融機関や信用保証協会など公的な保証のある債権、あるいは、預金債務と相殺 可能な金額など、支払が確実に受けられる金額をT分類(非分類)
  • A @以外の一般担保や一般保証によって回収が見込まれる金額および破産管財人より破産債権に対する配当見込額(予想配当率)が具体的に示されている場合のその金額をU分類
  • B @の優良担保やAの一般担保による回収見込額と担保評価額(時価)との差額(担保掛け目      による減額部分)をV分類
  • C それ以外の債権(回収不能が見込まれる金額)
に分類することになっています。
(2) 次に、破産先に対する債権の償却・引当てをします。
 T分類債権やU分類債権は回収が見込まれますので問題はありません。
 V分類およびW分類債権は、当該決算期に全額を直接償却するか個別貸倒引当金に繰入れます。この場合、無税で損金処理できるものと、有税扱いで損金処理するものとができます。
(3) 無税扱いの償却・貸倒引当金への繰入ができるものこれには、形式基準と実質基準があります。
  • @ 形式基準
    W分類債権の50%相当額は、無税扱いの貸倒引当金に繰入れることができます。
    法人税法施行令96条1項3号に規定されていますが、ここでは、「当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く」とされています。なお、この形式基準では、一般の保証による回収見込額は考慮しなくても 良いことになっていますので、U分類債権の一部ー一般の保証による回収見込額ーも対象の債権に含まれることになります。
  • A 実質基準は、法人税法施行令96条1項2号に規定されています。
    破産管財人から配当率が示された場合や配当の見込みがないことの意思表示があった場合、あるいは破産配当により、残余については支払や配当の見込みがないことになってときのその金額の全額を貸倒引当金に繰入れることができます。

25 債務免除を受けると贈与になるの?
 原則として、贈与になります。
 相続税方8条は、「対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。」と定めており、債務免除イコール贈与が原則です。
 訴訟上で和解する場合、「被告は原告に対し一定額の和解金を支払う。原告はその余の請求を放棄する。」という内容の和解調書を作成することが多いのですが、「その余の請求の放棄」が、未確定かつ争いのある債権であって、和解によって債務額を確定したが、形式上和解金を超える請求をしているので、和解金以外には債権がないことを明らかにする目的でする、という場合は、課税上問題はありませんが、確定した債権を放棄するという意味になるときは、その債権放棄は相手方の債務の免除になり、贈与とみられる場合があります。

〜弁護士の無知による依頼人の被害〜
 所得税の公正処分に対する異義申立事件の事例ですが、遺産分割の審判(代償分割を命ずる審判)が確定し、代償金を支払わなければならなくなった兄が、弟にその代償金を支払わなかったため、訴訟になり、和解で、その代償金5000万円の一部2000万円については兄の資産で代物弁済するが、その余の債務3000万円は免除を受けるという和解が成立しました。和解調書では、確定した代償金債務の一部3000万円を免除していることは明白でしたので、税務当局は、兄は弟よりその金額の贈与があったと認め、課税処分をしました。この件は、訴訟になりましたが、一審、二審とも税務署長を勝訴させ、確定しました。
 この件は、和解をした弁護士の知識不足があって、依頼人に課税処分をさせた、として問題になりましたが、この弁護士から聴きますと、債務免除が贈与になることを全く認識していなかったということです。もし、この弁護士がこのような条文を知っていたら、あるいは、代償金債務5000万円の一部2000万円で、兄の財産の代物弁済をし、3000万円の免除を受けるという内容の和解調書にするのではなく、5000万円の代物弁済にするという内容の和解調書にしたのではないかと思われます。この場合、譲渡所得課税の問題は生じますが、贈与税よりは安くなると思われますが、いずれにせよ弁護士には税務の知識は不可欠です。

26 固定資産税は真実の所有者に課せられるのか、名義上の所有者に課せられるのか?
 答は、名義上の所有者に課せられる、です。

 横浜地方裁判所平成12年2月21日判決は、被相続人の債権者が、被相続人所有の不動産について、債権者代位により相続人への相続登記を経由したうえ、仮差押えの登記をしたケースで、相続人が賦課期日において登記簿上所有者とされていたことからなされた固定資産税及び都市計画税の賦課決定処分は、その後登記名義人が相続放棄をしても適法である、と判示しました。

 地方税法は、固定資産税は固定資産の所有者に課する(343@)と規定しておりますが、ここでいう所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう(343A)、と規定しています。
 つまり、固定資産税は名義上の所有者に課すと定めているのです。
 これを台帳課税主義と言いますが、台帳課税主義は、課税庁が固定資産の真の所有者を判定することは固定資産の数に比べ人員や期間が限られることから困難であるので、徴税の便宜を図る必要上認められた制度です。
 しかしながら、真の所有者ではないが名義上の所有者にとっては課税されっぱなしというわけにはいきませんので、賦課期日において登記簿上名義人であったため真実の所有者に代わって固定資産税及び都市計画税を納付した者は、真実の所有者に対し、不当利得として、右納税分の返還請求をすることができる、ことを前記判例は認めています。

 なお、最高裁判所昭和30.3.23判決は、地方税法が固定資産税の納税義務者を決定するのに形式的な標準を採用していることは憲法違反になるとの違憲論に対し、憲法30条「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」、憲法84条「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」を根拠に、「日本国憲法の下では、租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続はすべて法律に基いて定められなければならないと同時に法律に基いて定めるところに委せられていると解すべきである。それ故地方税法が地租を廃して土地の固定資産税を設け、そして所有権の変動が頻繁でない土地の性格を考慮し、主として徴税の便宜に着眼してその賦課期日を定めることとしても、その当否は立法の過程において審議決定されるところに一任されているものと解すべく1月1日現在において土地所有者として登録されている者を納税義務者と確定し、その年度における納期において所有権を有する者であると否とを問わないこととした地方税法の規定は、前記憲法の諸条規に適合して定められていること明らかである」と判示しています。

27 相続人が被相続人の財産を引き継ぐ場合、相続と遺贈では、税金が違うの?
不動産の登記の際にかかる登録免許税に違いが出ます。登録免許税法別表第1で、相続の場合、登録免許税額は、不動産の価額の1000分の4ですが、遺贈の場合は、1000分の20になりますので、遺贈の方が5倍も高くなります。不動産取得税は、相続の場合も、被相続人から相続人に対してなされた遺贈の場合も、かかりません(地方税法73条の7)が、被相続人から相続人に対してなされた遺贈の場合は、その他に、相続に比べ、不利になる場合があります。
  不動産の登記手続は、単独ではできません。他の相続人と共同でするか、遺言執行者によってしてもらいます。遺言執行者がする場合は、通常、報酬が必要になります。相続に比べ不利です。
  対象財産が、借地権や借家権の場合は、貸主の承諾が必要になります。貸主の承諾が得られないときは不利です。また、対象財産が農地の場合は、所有権であれ、小作権であれ、農業委員会または都道府県知事の許可が要りますので、許可が得られない場合は、権利の取得が出来ません。
  相続人への遺産の承継が、相続と遺贈では、ずいぶん違いがでますが、最高裁判所平成3年4月19日判決は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言文が書かれている遺言は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか、または遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる、遺産分割の方法が定められた遺言と解すべきであると、して、当該相続人は、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されるものであると、判示していますので、被相続人が、特定の資産を特定の相続人に「取得させる」「得させる」「与える」「譲る」等と書いた遺言は、相続させるという趣旨の遺言と解せられますが、「遺贈する」と明確に書いてしまえば、「遺贈」と解され、上記のような不利益な扱いを受けてしまうとされています。

28 競売で不動産を無くしたのに、譲渡所得課税がなされるって、本当なの?
 資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合は、非課税になります。
 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいいますが、資産の「譲渡」とは、有償無償を問わず、資産を移転させる一切の行為をいいますので、競売も譲渡になります。したがって、競売によって無くした不動産でも、その取得価格より高い値段で買受けられたときは、その差額が譲渡所得になって、課税されることになります。
 しかしながら、所得税法9条では、非課税所得についての定めがあり、その10号で、「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法第2条第11号(定義)に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得」は、非課税とされています。そして、国税通則法第2条第11号(定義)に規定する強制換価手続とは、「滞納処分(その例による処分を含む。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう。」とされていますので、競売代金が全額債権者への支払、あるいは配当に充てられ、かつ、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合、に該当するときは、譲渡所得があっても課税されません。

29 保証債務を履行するために、不動産を譲渡せざるを得なくなった場合でも、譲渡所得に課税されるの?
 主債務者が無資力の場合は、課税されません。
 所得税法64条2項は、「保証債務を履行するため資産の譲渡があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使することができないこととなつた金額」については、「なかつたもの」とみなされますので、譲渡代金から回収不能金額を控除した結果、譲渡所得がない場合は、非課税になります。
 ただし、主債務者に資力がないため求償権の行使が不可能であることを知りながら、あえて保証人になった場合は、いわば保証人から主債務者へ贈与したに等しく「求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたとき」に該当せず、この規定の適用を受けることはできません。
 ただ、主債務者の債務が借り換え債務で、保証人が借り換え前の債務の保証人でもある場合は、主債務者の資力については、借り換えした時点ではなく、借り換え前の借入時を基準に判断されます(さいたま地裁平成16.4.14判決)ので、借り換え前の借入れ当時、主債務者が無資力者でなければ、その後無資力者になった後の借り換え債務について保証した場合は、その履行のため、資産を売却したとき、上記規定が適用になり、求償権が行使できない金額は譲渡価格から控除され、課税されません。

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