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目からうろこのイラスト相続 第五部 遺言事項

ホーム目からうろこのイラスト相続 目次<第五部 遺言事項 3 遺贈

3 遺贈

   

1遺贈の意味
 「遺贈」とは、遺言によって、財産を特定の者に無償で与える行為をいいます。
遺贈を受ける者のことを「受遺者」といいますが、受遺者は、相続人であっても、相続人以外のものであってもかまいません。民法903条には「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け・・・た者があるときは」との文言があることから、相続人への遺贈も当然できる、とされています。
法人であっても有効です。


2 包括遺贈と特定遺贈
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があります(民964)。


⑴ 意味
包括遺贈とは、遺産の全部又は一定の割合で示された部分を与えるもの、
特定遺贈は、遺産のうちの特定の遺産のみを与えるものです。

⑵ 債務承継の違い
ある遺贈が、包括遺贈になるのか特定遺贈になるのかにつては、重大な効果の違いがあります。
それは、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」(990)と規定されているからです。
つまり、包括遺贈の場合は、財産の遺贈を受けたのと同じ割合で、負債も承継してしまうからなのです。
ですから、遺贈が包括遺贈か特定遺贈が争われる場合もあるのです。

包括遺贈か、特定遺贈かが争われたケースを2つ紹介します。

①遺言の文章は「私は、土地・建物、家財道具一切を挙げてXに遺贈する。」というものであったが、遺言書に書かれた内容は、当時、遺言者が有していた財産のすべてであるので、これは包括遺贈と解すべきである(高松高判昭32.12.11)。
 この結果、Xは債務も全額相続することになります。

②「遺産の全部を、X、Y、Zに贈与する。寺と地所、家はXが取る。」という遺言文章の後段部分「寺と地所、家はXが取る」の部分は不動産の特定遺贈である(東高判平10.9.10判決)。
 この結果,Xは 「遺産の全部を、X、Y、Zに贈与する。」との包括遺贈の効果だけを受け、債務の1/3を相続することになります。

⑶ 遺贈の放棄手続の違い


① 包括遺贈の放棄
 民法986条1項は「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。」と定めていますが、包括遺贈の場合の放棄は、民法990条が「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。」と定めていることを根拠に、相続人が相続放棄をする場合の民法938条「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」によるべきだとしています。

 東地判昭55.12.23は、遺言者が配偶者に対して全財産を遺贈する旨の自筆証書遺言を作成して死亡した後、受遺者が他の相続人に対して「遺言はあるが、これに拘泥せず、公平に分けると明言した」という事案ですが、裁判所は、「包括受遺者は相続人と同一の権利義務をもち、その放棄には相続人の放棄に関する規定が適用されるので、自己のために包括遺贈があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に放棄の申述しなければ単純承認したものとみなされる」ことになり、口頭の遺贈の放棄は無効である旨判示しました。

② 特定遺贈の放棄
 この場合は、放棄の方式が要求されていません。
 ですから、相続人の1人が、自分に遺贈された財産を、自分の財産だと主張しないで、他の共同相続人らとの遺産分割協議の対象に含めて、遺産分割協議を成立させた場合は、遺贈を放棄したものとみられます(東地判平6.11.10)。


3 遺言文例

⑴ 包括遺贈の場合
【遺言文例1―全財産の包括遺贈】
私は、甥の甲山乙助に全財産を遺贈する。
(注意:この場合は、甲山乙彦は、負債も全部承継する。)

【遺言文例2―財産の一定割合の包括遺贈】
私は、甥の甲山乙助に全財産の3分の1を遺贈する。
(注意:この場合は、甲山乙彦は、負債のうち3分の1を承継する。)

⑵ 特定遺贈の場合
【遺言文例2―財産を個別に特定したもの】
私は、甥の甲山乙助に、岡山市北区黄金町三丁目○○○番の宅地○○○㎡を遺贈する。
(注意:この場合は、甲山乙彦は、負債は1円も承継しない。)

【遺言文例3―不動産全部の包括遺贈】
私は、不動産全部を甲山乙助に遺贈する。
(注意:この場合も甲山乙彦は、負債は1円も承継しないし、
不動産全部という表現だけで、遺贈財産は特定が出来ている。)



4 遺言による「相続」と「遺贈」の類似性と違い
 遺言によって相続人に財産を承継させる方法には、「相続分の指定」と「遺産分割方法の指定」があり、前者は、割合を相続させる表現、後者は特定の財産を相続させる表現になりますが、これは遺贈で言えば「包括遺贈」と「特定遺贈」に類似したものになります。
 しかしながら、相続と遺贈では、大きな違いもあります。その1つが「登記なくして第三者に対抗できるか?」という点です。
 相続の場合は、「相続分の指定」でも「遺産分割方法の指定」でも、それによる権利取得については、登記なくして第三者に対抗できますが(前出ページ参照)、遺贈の場合は、登記していないと第三者に対抗できないのです。
① 東高判昭34.10.27は、不動産の遺贈を受けた者が、その不動産の名義を変えないでいたために、相続人が、その不動産について相続登記をし、続いて抵当権設定登記をしたケースで、遺贈を受けた受遺者の所有権は、この抵当権に対抗できない、と判示しております。

② 最判昭39.3.6も、不動産の遺贈を受けた者が、その不動産の名義を変えないでいたために、相続人の債権者が、債権者代位の方法(民法423条)で、その不動産について相続登記をして強制競売の申立をし、その旨の登記がなされたときは、受遺者は、所有権の取得を競売申立人に対抗できない、と判示しております。

③ ただし、遺言執行者がいる場合は違ってきます。
民法1013条は「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定していますので、相続人が、遺言執行者が選任されているのに遺贈の目的物を第三者に譲渡したり抵当権を設定し登記をしたとしても、それらの行為は無効であるから、受遺者に対抗できないのです(最判昭62.4.23)。



5 包括受遺者と相続人の異同

⑴ 相続と包括遺贈の相違点

① 包括遺贈に関しては、代襲相続は発生しない(特定遺贈の場合も同様)が、相続の場合は代襲相続がある遺言者が死亡したとき、相続が開始しますが、そのとき第1順位の子がすでに死亡していて、その子に子(孫)がいる場合、あるいは、第3順位の兄弟姉妹が死亡していてその兄弟姉妹に子(甥・姪)がいる場合、子や兄弟姉妹の相続分は、孫や甥・姪が代襲相続します。
 しかしながら、包括遺贈の場合は、民法994条1項で「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」との規定があり、包括受遺者に子がいても、その子が受遺者になることはありません。

② 包括遺贈(特定遺贈の場合も同様)によって、不動産の所有者になった場合、不動産にその旨の登記手続をしないでいると、相続人あるいは相続人の債権者が、その不動産を相続人の名義にし、その上に第三者が権利を取得すると、包括受遺者が権利を失う場合があります(これは前述しました)。

③ 保険金受取人に指定された「相続人」には、包括受遺者は含まれない
 最判昭40.2.2は、遺言者には相続人と包括受遺者がいて、遺言者が生前結んでいた養老保険契約での死亡保険金受取人を「相続人」と定めていたケースです。
 この場合、死亡保険金は相続人が取得するのか、包括受遺者が取得するのかという争いが生じたのですが、最高裁判所は、この場合の保険金受取人になる「相続人」とは、遺言者が死亡したときの「相続人たるべき者個人」であるとして、包括受遺者が「相続人」であることを否定しました。

⑵ 包括受遺者が相続人と同じ扱いを受ける点

① 包括受遺者が遺贈を放棄する場合は、相続人と同じ、家庭裁判所への申述が必要になります。

② 相続人不存在手続は不要
 相続人が誰もいない場合、相続財産を管理するために、民法951条で、相続財産を法人にして、その後、その管理手続に入ります。これを「相続人不存在手続」と言いますが、
 最判平9.9.12は、相続人不存在手続は、相続財産の帰属すべき者が明らかでない場合におけるその管理、清算等の方法を定めたものであるが、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有し(民法990条)、遺言者の死亡の時から原則として同人の財産に属した一切の権利義務を承継するものであるので、相続財産の帰属すべき者が明らかでない場合に該当せず、相続人不存在手続に入る必要はない旨判示しました。

③ 包括承継、遺産の共有、遺産分割の必要性
 遺産を包括承継する点、相続人又は他の包括承継者と遺産を共有し、遺産分割手続によってのみ、その共有関係を解消しうる点が、相続人の場合と、同じです。
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