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目からうろこのイラスト相続 第六部 実践的遺言文例

ホーム目からうろこのイラスト相続 目次<第六部 実践的遺言文例 1 相続人以外の者への遺贈

1 相続人以外の者への遺贈

1 受遺者が死亡していたときの備え
 遺贈については、代襲相続のような代襲遺贈のないことはすでに解説しました。
 そこで、代襲的な遺贈をしたいと思えば、遺言にしておくことです。



3 担保付きの不動産を遺贈する場合
⑴ 遺贈財産に第三者の権利が付着している場合の原則
 特定の財産、例えばA宅地の遺贈を受けたとき、そのA宅地に第三者の権利がついている場合、受遺者は、その第三者の権利がついた状態で、A宅地をもらったものとされます。
 民法1000条本文は、「遺贈の目的である物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。」と定めているからです。


⑵ 第三者の権利が用益を目的とした不動産
 遺贈される不動産に付着した第三者の権利が借地権、通行地役権など、遺贈財産の使用・収益を目的とする権利である場合は、受遺者の権利は、第三者の借地権や通行地役権の負担付きの権利ということになり、遺言者の相続人に予想外の負担をかけることはありません。


⑶ 抵当権や根抵当権のついた不動産の遺贈には要注意
 遺贈財産に付着している第三者の権利が、抵当権や根抵当権の場合は問題です。
 この場合で、受遺者が遺贈を受けた第三者の抵当権のついたA宅地の被担保債権を弁済して抵当権を抹消してもらった場合に問題が起こるのです。
 この場合、受遺者は、この弁済額を、抵当権の被担保債権の債務者に対して、求償できると解されているからです(中川・加藤編・補新版注釈民法(28)270ページ)。
 その被担保債権の主債務者が遺言者であれば、受遺者は、遺言者の相続人に対し、求償ができることになります。
受遺者が、抵当権者に被担保債権の弁済をしたときに、その金額を、被担保債権の債務者に対して求償できる、という理屈は、受遺者は、第三者の抵当権の負担の付いた不動産はもらったが、抵当権の被担保債権の支払い義務まで負担したのではない、ということです。

 ですから、遺言者が、第三者の抵当権が付いているために価値がない不動産だと考えて、その価値のない不動産だから、“あいつ”に与えても良い、等と安易に考えて、“あいつ”にその不動産を遺贈すると、“あいつ”はその不動産の遺贈を受けた後、自らお金を出して第三者の権利を消滅させた上で、遺言者の相続人に対して、そのお金の請求(物上保証人がする主債務者に対する求償権行使)をすることができますので、そのような遺言は、遺言者の意思に反して、相続人に多大な負担をかけることになってしまいます。


⑷ リスクを避ける方法
次のような遺言文章を書くことです。
【遺言文例1―負担付き遺贈】
         「私はA宅地を、甲に、被担保債権の負担付きで遺贈する。」

【遺言文例2―条件付遺贈】
         「私はA宅地を、甲に、甲がA宅地に設定している抵当権の被担保債権を
         肩代わりしてくれることを条件に、遺贈する。」
         負担付き遺贈と条件付遺贈については後述します。

4遺贈対象の財産が建物である場合
 この場合で建物に火災保険がついているときは、遺言者が生きている間に火災にあって焼失する場合も考慮しておく必要があります。


⑴ 遺言者の生前火災にあった場合の原則
 遺贈建物が、遺言者が死亡する前に焼失したが、遺言者が火災保険金をもらわないまま死亡した場合は、受遺者が、遺言者の保険会社に対する火災保険金請求権を遺贈されたものと推定されます。
 「推定される」という意味は、「そうじゃないよ」ということを、相手方である、相続人や遺言執行者が証明できないときは、受遺者が保険金をもらえる、ということです。

 民法999条の「遺言者が、遺贈の目的物の滅失・・・によって第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。」という規定が、この意味になるのです。


⑵ 例外
遺言者が火災保険金を受領した後で死亡した場合
 その場合は、民法999条の要件の1つである「第三者に対して償金を請求する権利(具体的には、火災保険金請求権)を有するとき」に該当しませんので、受遺者は、何ももらえません(通説)。



⑶ 遺言文例
         「私は、甥の凸山太に
         岡山市北区黄金町五丁目111番2宅地㎡及び同所にある建物を遺贈する。
         ただし、この遺言の効力が生ずる前に同建物が焼失した場合は、
         火災保険金が支払われていない場合であっても、同建物を同人に遺贈しない。」

         あるいは、
         「私は、甥の凸山太に
         岡山市北区黄金町五丁目111番2宅地㎡及び同所にある建物を遺贈する。
         ただし、この遺言の効力が生ずる前に同建物が焼失した場合は、
         同建物についてはこの限りではない。」

5 負担付遺贈をする場合
⑴ 意味と遺言文例
 負担付遺贈とは、受遺者に一定の法律上の義務を負担させる遺贈のことです。



【遺言文例1―特定遺贈の場合①】
         「私は甥の甲にA宅地を遺贈するが、
         甲は、私の妻が死亡するまで毎月10万円ずつ支払うこと」

【遺言文例2―特定遺贈の場合②】
         「私は甥の甲に1000万円を遺贈する。
         その代わり甲は行方不明の乙を探し出して乙に300万円を支払うこと。」など

【遺言文例3―包括遺贈の場合】
         「私は甥の甲に全財産の半分を遺贈する。
         甲は、その月から私の妻が死亡するまでの間、
         毎月末日に、私の妻に10万円ずつ支払うこと」



⑵ 受益者
 上記の遺贈の例では、受遺者甲は、遺言文例1や3の場合、遺言者の妻に毎月10万円を支払う法律上の義務、遺言文例2の場合、乙を探し出し乙に300万円を支払う義務が生じます。
 この場合の遺言者の妻や乙は、受遺者甲から甲が負った負担を履行してもらえる立場に立ちますので、「受益者」と呼ばれます。


⑶ 受遺者が負担を履行しないときは、遺贈は無効になるか?
 受遺者が負担を履行しない場合でも、遺贈が無効になることはありません。これは次回に解説する「条件付遺贈」と違う点です。


⑷ 負担の履行請求権
 ただ、受遺者が負担を履行しないと、遺言者の相続人や遺言執行者から、受遺者に対し、負担の履行を求めることができます。近時の有力説は、受益者からも受遺者に対し、負担の履行を請求することができると解しています。


⑸ 負担付遺贈に係る遺言の取消し
 民法1027条は、「負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。
 この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」と定めています。
 上記の遺言文例1や3の場合で言えば、甲が遺言者の妻に毎月10万円を支払う法律上の義務を履行しないでいるとき、あるいは、遺言文例2の場合では、乙を探し出し乙に300万円を支払う義務を履行しないでいる場合、遺言者の相続人や遺言執行者から、家庭裁判所に対し、これらの負担付遺贈に係る遺言の取消しを請求することができるのです。


⑹ 遺贈分より負担部分が多くなったとき
 遺贈の文例「私は甥の甲に全財産の半分を遺贈する。
 甲は、その月から私の妻が死亡するまでの間、毎月末日に、私の妻に10万円ずつ支払うこと」という遺言により、遺贈を受けた甲が、遺言者の妻に、毎月10万円ずつ支払っていたところ、遺贈分より負担分の方が多くなりそうになった、とします。
 この場合、甲は、民法1002条1項「負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。」だけですので、遺贈分を超える負担まで履行する義務はありません。
 ですから、遺言者に支払った毎月の10万円の合計額が、遺贈の価格を超えるところから先は、月10万円の支払を停止することができるのです。


⑺ 受遺者が、負担の方が大きいと考え、負担付き遺贈を放棄すると、受益者の受益分はどうなるか?
 前記遺言文例1や3の場合で、甲が遺贈を放棄すると、遺言者の妻は、毎月10万円の受遺者の負担分をもらうことができなくなります。
 そのときは、民法1002条2項で、「受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができる。
 ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」との規定がありますので、遺言者の妻である受益者は、遺言に別段の定めがない限り甲に代わって受遺者になることができます。




【遺言文例―負担付き遺贈をする場合で放棄されることが想定される場合】
         「私は甥の甲にA宅地を遺贈するが、甲は、私の妻が死亡するまで
         毎月10万円ずつ支払うこと、甲が遺贈を放棄する場合は、
         姪の乙に同じ負担でA宅地を遺贈する。
         Bも遺贈を放棄する場合は、A宅地は妻に相続させる。】



⑻ 受遺者の遺贈分が、遺贈を受けた後の事情によって、少なくなったとき、負担部分はどうなるか?
 民法1003条は、「負担付遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じて、その負担した義務を免れる。
 ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」という規定がありますので、前記遺言文例1や3の例で、甲の受益分が半分になれば、甲が遺言者の妻に支払う月10万円は月5万円に減額になります。
 特定遺贈の②の例でも、甲が1000万円の遺贈を受けた後、それが相続の限定承認又は遺留分回復の訴えによって半分の500万円を返金することになったときは、乙を探し出して乙に300万円を支払う負担は、乙を探し出して乙に150万円を支払う内容に変わります。


⑼ 遺言文章の必要性
 以上で解説しましたが負担付き遺贈は結構難しい問題を含んでいます。必要に応じて遺言文章を考え、対処しておくべきです。


6 条件付遺贈をする場合
⑴ 条件付遺贈の意味と遺言文例
 条件付遺贈とは、無条件で遺贈するのではなく、遺贈の効果を一定の条件、例えば、
 受遺者が司法試験に合格すること、あるいは、長女と婚姻することにかからしめる遺言を言います。



【遺言文例1】
         「私は、甲が司法試験に合格したら、1000万円を遺贈する。」

【遺言文例2】
         「乙が私の長女と婚姻したときは、私の自宅の土地建物を遺贈する。」



⑵ 負担付き遺贈との違い
 負担付き遺贈は、受遺者が負担を履行する前に、効果が生じますが、条件付遺贈は、条件が成就した後でないと、遺贈の効果は生じません。

 ①の例で言えば、甲が司法試験に合格しないと、1000万円はもらえません。1000万円の遺贈を受けるのは、司法試験合格後になります。
 ②の例で言えば、乙は甲の長女と婚姻しないと、遺言者の土地建物をもらえないことになるのです。

⑶ 負担付き遺贈と、条件遺贈の境界は、明確なのか?
 必ずしも、明確とは言えません。
 「長男が、私の後を継いでくれるのなら、○○株式会社の全株式を遺贈する。」という遺言の場合で、長男は株式をもらわないと事業を継ぐことが出来ないとすれば、事業を継ぐ前に株式をもらう必要があります。
 そうすると、この遺言は、「事業を継いだら遺贈する、という条件付遺言ではなく、株式を遺贈するから、事業を継いでくれ。」という負担付き遺贈であると解釈できます。
 また、「私の老妻の生活費を毎月10万円ずつ支払ってくれるなら、甲にA宅地を遺贈する。」という遺言も、遺言者の妻へ月10万円づつ生活費を支払うことは将来の問題です。
 ですから、その条件を満たすには、「老妻」の生活費をその老妻が亡くなるまで支払続ける必要があります。
 これを「条件」だとすると、受遺者は、遺言者の老妻に10万円ずつ支払った後でないとA宅地はもらえないことになり、受遺者の立場が不安定になります。
 この場合も、「A宅地を甲に遺贈する。甲は、私の老妻に毎月10万円を支払うこと」という負担付きの遺贈と解釈されるでしょう。
 

7 愛人へ財産を遺贈する場合
⑴  公序良俗に反し無効になる場合に注意
大審院昭判18.3.19は、「妾契約の維持継続を条件」とする遺贈は公序良俗に反し無効になる、と判示しましたので、



【遺言文例】
         妻がいるのにかかわらず。
         「わいは、愛人凹川細子の関心を買い、
         その心をつなぎとめるために、次の財産を遺贈する。」
         などと、書くと無効になります。



⑵ 生活保全が目的なら無効にならない
最判昭61.11.20は、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら女性の生活を保全するためのものであり、遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなどの事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するとはいえない、と判示していますので、



【遺言文例】
         「わいは、愛人凹川細子が長年にわたり、
         妻に見向きもされなくなったわいを支え、助けてくれた。
         その感謝の気持ちと、わいの死後の細子の生活の保全のため、次の財産を遺贈する。」
         なら有効になるでしょう。


8 相続人への遺贈
これは避けるべきです。相続人には「相続させる」旨の遺言にすべきです。

⑴ 登記費用で不利
「遺贈」を原因に不動産につき所有権移転登記をしますと、不動産の価額の1000の25に相当する登録免許税がかかります。
しかし、相続分の指定を受け、共同相続人間で遺産分割協議をして特定の遺産を取得した場合、又は遺産分割方法の指定によって特定の不動産を取得した場合は、「相続」又は「遺産分割」を原因として所有権移転登記をすることになり、その場合の登録免許税は不動産の価額の1000分の6になります。
ですから、遺贈より相続分の指定又は遺産分割方法の指定の方が有利です。

⑵ ただし、「遺贈」を「相続」と解釈した裁判例
仙台地判平9.8.28は、遺言には「遺贈する」と書いてあっても、遺言の解釈にあたっては、文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものである。この件の遺言者は、全財産を長男甲に取得させるために、「包括して遺贈する」という言葉を使っただけであり、遺贈と相続の違いについて特別認識していたわけではない。遺贈登記と相続登記によって登録免許税の額に差異が生ずるとするならば、遺言書の文言如何にかかわりなく、相続人たる甲に有利な方法を選択したものと推認することができる。したがって、遺言者の真意は、「包括して遺贈する」というものではなく「相続させる」というものである。
したがって、法務局が、相続登記の申請を却下した行為は違法であるので、取り消す、と判示しました。



2 存在しない預金を遺贈の対象にする場合
⑴ 遺贈財産がなかったときの原則
 遺言者が死亡したとき、遺贈財産がない場合は、民法996条1項本文「遺贈は、その目的である権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかったときは、その効力を生じない。」との規定により、その遺贈は無効です。
 これにより、遺言者は、安心して、いたずら心を示し、甥や姪に、ピカソの絵10点を遺贈するなどと、書けるでしょう。

⑵ 例外
ただし、例外があります。
 預金債権などの金銭債権を遺贈する場合です。
 民法1001条2項は「金銭を目的とする債権を遺贈の目的とした場合においては、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときであっても、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。」との規定がありますので、
例えば、遺言者が、○○銀行△△支店にある100万円の定期預金を甲に遺贈する。」と遺言を書けば、そのような定期預金がない場合でも、100万円を遺贈したと推定されることになりますので、遺贈義務者(相続人又は遺言執行者)が受遺者に100万円を支払わねばならない場合が生じます。

 実務で経験するところでは、遺言者が、銀行名や支店名、預金の種類や預金口座を間違えている場合があります。 遺言では、○○銀行△△支店にある定期預金100万円と書いていても、その銀行には定期預金はなく、□□銀行の☆☆支店に120万円の定期預金があるなどの場合です。
 そのような遺言も、民法996条1項で、目的物がないので、遺贈は無効だ、という扱いを受けるのではなく、民法1002条2項で、受遺者は遺贈義務者(相続人又は遺言執行者)から100万円をもらうことができることになります。


⑶ 例外の例外
 ただ、この場合でも、その金銭債権が普通預金である場合はさらに違ってきます。
 つまり、普通預金の中味は、遺言者が生きている間にいつでも与えることができるものですので、遺贈の対象を「○○銀行の普通預金○○円」とした場合、遺贈の対象になるのは、遺言者が死亡したときにその普通預金口座に残っている金額に限られると考えられているのです。

⑷ 遺言文例
      存在しない預貯金は遺贈しない意思ならば、
      「○○銀行△△支店にある100万円の定期預金を甲に遺贈する。
      ただし、この遺言の効力が生じたときに、
      同銀行にそれに該当する預金がない場合は、遺贈しない。」
 
【遺言文例―受遺者死亡に備えた文例】
      「私の財産はすべて、私の甥○山□夫に遺贈する。
      もし、私が死ぬ前に○山□夫が死亡しているときは、
      私の財産はすべて、○山□夫の妻である○山△子に遺贈する。」



 こう書くと、遺言者(私)が死亡したとき、甥の○山□夫が生きていれば遺贈財産は○山□夫のものになり、○山□夫が死亡しておれば遺贈財産はその妻である○山△子のものになるのです。

注意:相続人に対する遺産分割方法の指定の遺言の場合も、代襲的な遺産分割方法の指定は認められていませんので(最判平23.2.22)、同じような遺言文例が必要になります。
 以下に遺言文例が多数でてきますが、すべて遺産分割方法の指定の遺言をする場合に活用できるものです。
 
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